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Apple MusicのAlexa対応が意味すること。サービスをハードで囲い込む時代の終焉

Apple MusicがAlexaに対応

Apple MusicがAlexaに対応すると、Amazonが発表した。今までApple Musicは、スマートスピーカーの中で自社のHomePod以外にはスピーカーメーカーが販売しているSonosにしか対応していなかったので、画期的な発表だ。

すでにUSのAmazon Echoの広告にはApple Musicのロゴがある。

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垂直統合だったAppleの変調

Appleといえば、ハード(Mac、iPhone)、OS(iOS、macOS)、ソフト(iTunes、iWork)、サービス(Apple Music、iCloud)と、すべてを自社で揃えることで、高いブランドと品質を維持してきた。

iOSを使うためにはAppleの製品を買わないといけない。そうやってAppleは顧客を囲い込んできた。

その中でApple MusicだけはAndroidでもアプリを提供していて、独特の存在だ。サービスはより多くのユーザーを確保したほうが1サービス当たりのコストを下げられるので、Appleとしても自社ハードだけに提供するよりもメリットが大きいと判断したのだろう。

Androidに提供しているぐらいだから、Alexaに提供してもおかしくはないが、スマートフォンとスマートスピーカーでは事情が異なる。

すでに飽和状態になっているスマートフォン市場では、AppleとAndroidのシェアは今後も大きく変わりにくいので、高い利益をAppleは維持しやすい。Apple MusicをAndroidに提供したからといって、Apple MusicでiPhoneに囲い込んだ顧客が、Androidに行ってしまう数は少ないと判断したに違いない。

ところが、スマートスピーカーはAmazonが大きなシェアを握っていて、Appleは追う立場にある。

Apple Musicは世界で最もユーザーが多い音楽配信サービスであり、Alexaは世界で最も売れたスマートスピーカーだ。

 音声認識機能が主体のAmazonのAlexa、GoogleのGoogle homeとは異なり、高品質なワイヤレススピーカーとしてHomePodをAppleは販売している。Apple Musicが、ほぼ唯一使えるスマートスピーカーなのが、HomePodの売りのひとつだ。

Apple MusicがAlexaに対応してしまえば、HomePodの売りがなくなり、Alexaを逆転する要素が無くなる。

AmazonとAppleの接近

それでは、なぜAppleはApple MusicをAlexaに対応させたのだろう。スマートスピーカーだけではなく、AppleとAmazonの新しい関係を見ないとわからない。

両社のニュースをちょっと列記してみる。

  • Amazonプライムビデオが、Apple TVに対応
  • Amazonで、Apple製品を販売すると合意

AmazonビデオとiTunes Moivie、Amazon MusicとApple Musicなど、AppleとAmazonは色々な分野で競合関係にある。今まで自分の城に籠もっていたAppleが城門を開けて、あちこち他の街へ出ていっている印象だ。

これはクック CEOの考えが大きいと思われる。ジョブズは最高の体験をするためには、自分たちで全てをコントロールすべきだと考えたが、クックは良いものであれば多くの人に使ってもらった方が良いと考えている気がする。IBMやAdobeとの連携などもジョブズ時代には難しかっただろう。

Amazonは顧客を囲い込むのではなく、良いものを提供すれば顧客は選んでくれるという信念を持っている。圧倒的なサービス内容を提供しているAmazonプライムに囲い込まれているイメージを顧客は持っていない。一番便利なサービスだから加入しているだけだ。

圧倒的なシェアを誇っているAlexaを利用して、他社のサービスを排除し、Amazon Musicの会員を増やすこともできるが、AmazonはSpotifyに続き、Apple Musicにも対応した。他社のサービスに対応することでAmazon Music Unlimitedの会員が減ることよりも、顧客が自分の好きなサービスを自社の製品で体験するほうが重要だと考えている。

GoogleもAppleとほどではないが顧客を囲い込む傾向にあるが、今後変わっていく可能性が高い。

各社が、自社のサービスを自社のハードで囲い込む時代は終わりを告げるのは案外早いかもしれない。