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Appleイベントレビュー。なぜMacBook AirとMac miniが復活したのか?

驚きのAppleイベント

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2年ぶりにAppleの10月イベントが開かれた。新型iPad Proの仕様は噂通りだったが、MacBook AirとMac miniの復活は驚きだった。廉価版MacBookの登場は予測できたが、「MacBook Air」の名前で現れるとは思わなかった。

噂通りに登場したMac miniだけど、個人的にはガセだと思っていた。

今回のイベントでわかったのは、Appleのフルラインナップ化が、iPhoneだけではなく、iPad・Macのクリエィティブ向けデバイスまで広がったことだ。

ひとつずつ見ていこう。

復活したMacBook Air、放置されたMacBook

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新型MacBook Airは、13インチRetina Display、小型軽量化、最新チップセットとAirの名にふさわしい内容だ。特に2,560 x 1,600ピクセルはMacBook Proと同等の解像度で、現代のノートPCとして、ようやく一般的な仕様になった。

一方で、MacBookも消されることなく残された。価格はMacBook Airよりも高く、ディスプレイサイズは11インチ、重さは0.92kgとMacBook Airよりも小型な高級デバイスの位置づけなのだろうが、性能と価格を比較した時、多くのユーザーがMacBook Airを選ぶのではないか。

それでも、MacBookをラインナップに残したのは、より多くの選択肢を用意して、少しでも多くのユーザーを呼び寄せる目的のためだと思われる。ちなみに旧MacBook Airも廉価版として継続販売となっている(価格は99,800円から)。

これにより、13インチ以下のMacBookは、MacBook、旧MacBook Air、新MacBook Air、13インチMacBook  Pro(Touch Barなし)、13インチMacBook Pro(Touch Barあり)と5種類となった。あまりに過剰なラインナップから「ユーザーを獲得するために、多少被ってもたくさんのモデルを用意しとけ」というAppleの思惑が透けて見える。

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4年ぶりのMac mini復活

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新型Mac miniは「最大5倍スピードアップした」とありえない進化をイベントで発表したが、4年前のマシンと比較すれば当然の数値だ。4年間ずっとモデルチェンジされていない間に、セパレート型デスクトップPCはレガシーと言われるほどにシェアを失い、一体型PCとノートPC、SurfaceのようなタブレットとのハイブリッドPCがPCマーケットを席巻している。

そのような現代のマーケットで、Mac miniをモデルチェンジした理由はなんだろう。元々、Mac miniはデスクトップMacのエントリーモデルとの位置づけだったが、新型Mac miniは、第8世代の6コアおよびクアッドコアの最新プロセッサ、最大64GBのメモリ、4つのUSB-Cと最新スペックを搭載している。

だけど、価格は89,800円からと安価な値付けにとどめている(もちろん、この価格はキーボード、モニター、マウスが別売りの本体のみ)。

Mac miniの復活でデスクトップPCも、iMac、iMac Pro、Mac Pro、Mac miniと4つのモデルが揃い、フルラインナップ化が行われた(Mac Proのスペックは放置されたままだが)。これもノートPCと同様に、とにかく多くのモデルを用意してユーザーを獲得する戦略に基づいている。

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予想通りのiPad Pro

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新しいiPad Proは、

  • フルスクリーン
  • Face ID
  • 最新チップA12X Bionic
  • USB-C
  • 次世代Apple Pencilに対応

と、噂通りの仕様となった。以前の10.5インチiPad Proは継続販売となり、新型の噂もあったiPad mini 4も残り、無印iPadも合わせてiPadシリーズは5モデルになった。

この豊富なモデル数は、Macと同様に少しでも多くのユーザーを獲得するために、「シンプル」よりも「混沌」を目指しているように思える。

MacシリーズとiPadシリーズの売上を増やして、iPhone偏重の売上構造からの打破をAppleは目指しているのだろう。

MacとiPad Proの棲み分け

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今回のイベントのスローガンは「クリエィティブ」。Mac、iPad Pro両モデルともクリエィティブ向けのデバイスだ。将来的には統合も言われていたが、今回のイベントでAppleは両モデルの性格を明確にした。

iPad Proは、2代目Apple Pencilに対応し、紹介ビデオでもApple Pencilを使った映像がメインだった。先日発表になったAdobeのiPad版Photoshopのプレビューもイベント内で行われた。新しいSmart Keyboardの発表もあったが、iPad Proを用いた文書作成、ビジネス、プログラミングなどを行う描写はほとんどなかった。

これはiPad Proがデザイン系のクリエィティブデバイスだとAppleが明確にしたということだろう。

一方で、Macはスペックの説明に終始し、用途の説明はなかった。これはMacが従来どおりオールラウンダーで使えるPCとしての役割を維持するというAppleの宣言に思える。

遠い将来はわからないが、MacとiPadは統合されることなく、別モデルとして当面継続していくことになるに違いない。

フルラインナップ化のリスク

iPhone、iPad、Macの発表が終わり、モデル数は飛躍的に増えた。Appleの成長エンジンだったスマートフォン市場の飽和化が進む中、売上を伸ばすためにあらゆるニーズを吸収するためにモデル数を急増させたのは理屈に合うが、販売する製品が増えれば管理コスト、開発コストも増大する。投資ほど売れなければ、経営上のリスクとなる。

もうひとつ気になるのは、Appleの方針転換だ。少ない厳選されたモデルを販売し高いマージンを確保するのがAppleのビジネスモデルだったが、その方針は大きく変わった。

方針転換といえば、Apple Pencilの改善はAppleらしくないと感じた。初代Apple Pencilの不満点だった「キャップがなくなる」「転がって落ちやすい」「充電している状態がダサい」「iPadと携帯しづらい」が、新しいApple Pencilでは綺麗に解消されている。製品が改善されるのは良いことだが、ユーザーが不満に思っても、自分たちの信念を貫くのが今までのAppleだった。改善するのが企業として当たり前の行動だが、Appleは当たり前から離れた場所にいたから、斬新な製品を開発できたのも事実だ。

世界最大の時価総額企業であるAppleが企業規模に見合う「普通の企業」に今後なっていくのか、そのときAppleは現在の「クリエィティブな企業」の地位を維持できるのか今後注目である。