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10万円の給付金を誰にどのように支給すれば公平なのか考えてみる

10万円の給付金

18歳以下へ10万円の給付金を支給することで与党は合意したが、「不公平だ」などの批判が生じている。

お金をもらえるのに文句を言う人はいないけど、もらえない人はもちろん不満だ。

では、どうしたら公平なのか考えてみます。

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困窮世帯に配布したら?

結論から言ってしまえば、最も不満が出ない公平な方法は「支給しないこと」だ。身も蓋もない話だが、誰に配っても必ず不満が出る。国民全員に配ったとしても、「困窮した人にあげるべき」「金持ちに渡すのはおかしい」という批判が絶対に出る。

実際に国民全員へ配れば、お金に全く困っていない人にお金を渡すことになる。そういう人にお金をあげても消費が増えるわけがないので、景気にも寄与しない。

そもそも、この給付金の目的がよくわからない。公明党の公約を実現するためという政府内の目的はあるが、「コロナによる困窮世帯のため」なのか「子育て世代を応援して少子化を止めたい」のか「コロナ禍で悪化した景気対策」なのかはっきりしない。

困窮世帯のためならコロナ禍で年収が減った人や住民税非課税世帯を対象にすればいい。その場合、対象者は限られる。コロナ禍で年収が減った人は調査にもよるが25%ほどらしい。ただ、減収した人の多くはボーナスの減少などで給与が大幅に減少して生活に困窮した人は少ない。持続化給付金などによりコロナ禍で倒産した企業件数は過去最低だった。

飲食店などでパートやバイトができなかった人もいるが、緊急事態宣言が解除されて以降、求人は急増している。年末に向けて、飲食店などでは人の取り合いが起きている。

そういった人に今から配ってもあまり意味がない。とは言っても、深刻な状態にある人がいるのは事実だろうから、その人を対象にするのは妥当だ。

だが、昨年の給付金の時に、今では首相になった岸田さんが同じように支給対象を決めたら、「全員に配れ」と猛反発が起きて、結果的に全国民へ支給することになった。

その結果、どうなったかというと給付金の約70%が貯蓄に回ったと言われ、株式や債券市場に影響が出るほどだった。確かに年収が減った人もいるが、飲み会や旅行の自粛などで支出が減った人は多く、コロナによって生活が困窮した人は思ったより少ない。

政党としても、生活困窮者では対象数が少なすぎて、政党のPRにならない。

困っている人に支給するのが目的なら、困窮世帯への支給は最も妥当だと思うが、今回も実現しそうにない。

年収制限をかけたら?

今回は年収960万円以下に限定することになりそうだ。所得制限をかけるのは「金持ちに配るな」批判を解消するのには一定の効果がある。ただ、今回の対象は世帯主の年収なので、共働きの場合世帯所得が960万円超えても支給される。

これを「不公平」と言う人もいるが、世帯主での所得制限は児童手当でも行われているので、対象を特定しやすい。ちなみに、どうして「世帯主の所得制限」になっているかというと夫婦が別居している場合を考慮しているからと、世帯の収入を補足することが現行のシステムでは難しいからだ。

本来はマイナンバーで戸籍と収入を結びつけるべきだが、マイナンバーの取得は普及していないためそれもできない。話は逸れるけど、マイナンバーみたいなシステムが任意なのはそもそもおかしい。アメリカでは50年以上前から社会保障番号が身分保証になっている(アメリカでも社会保障番号の取得は任意だが、就業するにはほぼ必ず必要になる)。

ちなみに今回の所得制限により支給されないのは子供全体の約10%だそうだ。これなら多くの子供に支給されるので、不公平感は減る。もちろん、それでも「子供を差別するな」という批判する人はいるだろうけど、年収ベースで1000万円を超えている世帯が10万円をもらっても何かが大きく変わるわけがない。支出が増えることはなく、昨年の国民全員支給と同様に貯蓄に回ることが想定される。

子供にあげるのが正しいのか?

今回の支給の目的が曖昧なのでなんとも言えないが、子供を対象にするのが正しいかどうかの議論もある。子供がいなくても困窮している世帯はいる。そういった人のために、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり10万円の現金を支給を別途検討しているそうだ。

少子化が問題なことには多くの国民が納得していると思うので、子供を支給対象にするのは批判が少ない措置ではある。

クーポンはどうなの?

今回の支給の半分はクーポンで支給する。子育てに必要なものに活用できる5万円分のクーポンだそうだ。「使いづらい」という批判はあるのに、クーポンにした理由は昨年の支給の70%が貯蓄にまわり景気浮揚に貢献しなかった反省があるからだ。

ただ、そもそも貯蓄に回せるような困っていない世帯に支給することに問題がある。困窮世帯に絞ればそのような配慮をする必要はない。

困窮世帯への支給が公平だが

以上見てきたように、「公平」という「不満が少ない」支給方法は「困窮世帯の子供に現金給付」ということになるが、それだと対照範囲が狭く政党のPRにならず、政治的には難しい。

対象者をある程度増やすために、所得制限やクーポン支給などを実施する必要が出てきて、結果的に誰も喜ばないよくわからない政策になってしまう。言うまでもないけど、この政策には税金が遣われているのだから、問題が多いなら、いっそのこと支給をやめてしまえばいいのだけど。

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