Amazonにはビジネスモデルがない?
Amazonには確固たるビジネスモデルがないといったら反論する人が多いだろうか。強力なリコメンド機能を要する世界最大のインターネット通販がビジネスモデルだと言う人もいるだろうが、現在のAmazonは通販だけではない。
AWSやFire TV、Amazon Video、Alexa、実店舗である「Amazon Go」など、Amazonのビジネスは多岐にわたる。インターネットサービス、ハードウェア、実店舗とITを使うことであればなんでも行っているようにみえる。
Amazonの思想の中心にはあるのは、「顧客中心主義」である。顧客が望むものなら最上級のもの・コトを提供することを目指しているうちにビジネス領域が拡大していった。
「顧客中心主義」を支えているのはITではない。ITシステムを開発し、運営しているAmazonの従業員だ。Amazonのビジネスモデルは何か? と聞かれたら、筆者は「優秀な人材の活用」と答えるだろう。
Amazonに入社するためには
Amazonの人材戦略は徹底している。一定のクラス以上のポジションを採用するとき、候補者は面接を受けるだけではなく、小論文を提出しなければならない。Amazonでは6人の面接官が別々に6回面接を行い、全員が合意しないとその候補者を採用しない。
採用したあとも従業員は厳しいターゲットが設定され、常に結果が求められる。外資系企業は大体おなじような仕組みだが、他のIT企業から転職した人曰く「Amazonは別格に厳しい」そうだ。
Amazonは全世界的に人材を募集しているが、急成長しているだけではなく、おそらく退職率も高いのだろう。
入社すると「顧客中心主義」についての教育を受けて、社内全員が「お客様のためにもっと良いことはないのか?」を議論する土壌があり、お客様が喜ばない意見や施策を社員同士が阻止する文化がある。
「お客様第一」を掲げる社長は多いが、従業員全員が同じ認識をもたないと真のお客様満足度向上は実現できない。社長がすべての施策をチェックできるわけではないし、全員の社員を指導できるわけではない。社員同士が指摘し合える環境が大事なのだ。
「Amazon 対 他全企業」
優秀な社員が「お客様中心主義」を追求した結果、「お客様が求めること」を次々に実現していったのがAmazon拡大の歴史だ。
インターネット通販やパブリッククラウドで先行しただけではなく、そこからの進化のスピードもライバル企業とは比較にならない。だから、いつまでたってもAmazonとの距離は縮まらず、むしろ広がっていく。「大企業病」「過去の成功体験から抜け出せない」といった問題はAmazonにはまだ見受けられない。
様々な業界で「Amazon 対 他全企業」と構図ができつつあり、その流れは止まりそうにない。