垂直統合モデルの優等生Apple
垂直統合モデルの優等生企業といえばAppleだ。
垂直統合モデルというのは、一企業が上流から下流までの業務を一手に行うことで利益を得る手法だ。Appleは、Mac・iPhoneのハード、macOS・iOSのOS、iTunesなどのソフトを握ることで、莫大な利益を得ている。
利益だけではなくハードからソフトまで統一した美しいデザインを顧客に提供することで、世界一ともいえるブランド力を手に入れた。もちろん、それを推進した創業者スティーブ・ジョブズの影響が大きい。
シェアは取れないモデル
垂直統合モデルはシェアを獲得するに不向きだ。macOSがWindowsのシェアを超えることはないし、iOSがAndroidのシェアを逆転することはない。多くの企業が製品を提供できれば大きなシェアを取れるのは道理だ。
多くの企業が開発すれば玉石混交の製品が市場で流通し、ブランドイメージが悪化する。そのことに気づいたMicrosoftはWindowsの影響力が低下したと同時にSurfaceを開発し、Googleは何度もスマホを自社開発しようとしているが、Appleのような圧倒的なブランド力を手に入れるまでに至っていない。
より強大になるAppleの垂直統合ビルディング
Appleは、垂直統合モデルの高さと幅を広げている。顧客が製品を購入するストアも自社で開発し、iCloudで顧客情報を、Apple Musicでサービスまでも自社で開発し、統一した顧客体験を提供している。
唯一自社で管理していない液晶などのパーツも自社で開発する噂がでているのも、Appleの愚直なまでの垂直統合モデルへの執着があるからだ。
Apple Musicしか音楽配信サービスが使えず、販売低迷しているHomePodに対して、他のサービスにも対応するように提言しても無理である。垂直統合による統一した顧客体験の提供はAppleの社是であり、このモデルによってAppleは時価総額世界一の企業になったのだ。
日本で成功した垂直統合モデルの企業とは
日本にも垂直統合モデルで成功した企業がある。任天堂である。
家庭用ゲーム機は独特なモデルだ。設計開発した同じ仕様のゲーム機を5年近く販売して利益を稼ぐ。ハードに搭載するOSも自社開発だ(PS4もSwitchのOSもLinuxがベースではある)。
ハードとOSだけならソニーも同じだが、任天堂が異なるのはOSに載る肝心のゲームソフトも自社開発が圧倒的に強い点だ。任天堂のゲームで遊びたいから任天堂のハードを購入する人は多い。
より多様なゲームを提供したいハードメーカーとしては一社でゲーム開発を担いたいわけではないが、結果的にそうなっていて、任天堂は独創的なハードとゲームを提供しシェアを握っている。
新興IT企業はジョブズを目指す
大学の講義みたいに今更垂直統合モデルについて書いたのは、下の記事を読んだからだ。
スマホメーカーのHUAWEIが独自OSを開発中というニュースだ。過去にも多くのハードウェア企業が垂直統合モデルを目指した。HPが買収したPalmのWebOS、Intelが開発しサムソンがハード製品を提供したTizen、いずれも成功していない。
理由はシンプルで、オンリーワンではないからだ。AppleがiOSを発表した時、他に似たOSはこの世に存在していなかった。AndroidやWindowsはあとからAppleを追随したにすぎない。
それでも、色々な企業が垂直統合モデルを目指す。すべてを自分らで管理したい欲求を止められないし、みんなジョブズになりたがっている。