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藤井聡太七段の「待った」騒動に見る管理社会の危惧

「待った」だったのか?

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先日の竜王戦決勝トーナメントでの藤井七段の着手が話題になっている。一度打った手を直後に戻して、別の駒を打ったことが「待ったでは?」という疑惑がネットにあがった)(「待った」は反則負け)。反則ではなく、マナー違反という見解を将棋連盟が発表する事態になった。

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ネットの中継で観戦していたが、確かに「おや?」と思ったが、指を離さず瞬時に手を変えていたので反則とは言えないと思った。相手の増田六段も抗議をしていない。将棋は審判がいないので、対戦者が咎めることで反則が成立する。

好ましいとは言えないが、これで反則負けはあまりに厳しいので、マナー違反という見解は妥当だと思う。

どうして騒ぎに?

ネットで騒ぎになったのは、藤井七段があまりに強いのでアンチ藤井聡太が増えてきているという背景がある。将棋ブームの立役者である藤井七段を擁護する強い空気に対して「正義感溢れる人たち」が過剰に反発していると思われる。

高校生ながらトッププロレベルに達している藤井七段の棋力の凄まじさを物語る反応だが、藤井七段の対局がすべてネットで生中継されているのも騒ぎが大きくなった理由のひとつだ。

一日中姿を晒される

現在藤井七段の対戦は全局ネットで生中継されている。Abema TV、ニコニコ生放送のいずれかまたは両サイトで、一日中藤井七段の姿を映している。

なかなか黒字化できないAbema TVにとって、もっとも視聴者数が多い藤井七段の対局は目玉の番組だから、対局の中継は逃せない。

名人挑戦に繋がる順位戦の持ち時間は各6時間で、朝10時に対局開始し、夜中まで戦うことも珍しくない。

1日12時間以上、藤井七段の姿を常にネットで何万人という視聴者が観ているのだ。藤井七段の場合、ほぼ毎週対局がある。一週間に一度、自分の姿をネットに晒されることを想像してほしい。しかも藤井七段は高校生だ。どんな売れっ子アイドルでも、こんな長時間中継される機会はないだろう。

他の棋士が、どれだけ今回の「マナー違反」をしているかわからないが、ネット中継があったから、これだけの騒ぎになったのは間違いない。

監視カメラはいたるところに

視点を広げてみると、これは藤井七段だけの話ではない。街には監視カメラが無数に設置されている。記録媒体やレンズの製造原価の低下とネットの発達により、監視カメラの設置コストが大幅に下がって普及を後押しした。

我々が意識していないところで、自分の姿を記録されているのだ。カメラを設置しているのは公共機関だけではない。店舗やオフィス、車載カメラなど、ありとあらゆる場所にカメラがある。

別に「ビッグブラザー」が現代に存在しているなんて誇大妄想を言いたいわけではない。今回の「待った」騒動のように、マナー違反の範疇にある比較的些細な問題を観た人間が、正義感から映像をネットに拡散し、マナー違反者を糾弾する可能性がある。

映像は説得力が大きい。マナー違反した部分だけを切り出されたら、正義感から多くの人が賛同するだろう。

もちろんマナー違反は良くない。一方で、24時間品行方正な人もいない。

今は、まだ動画を記録し人が確認しないといけないが、動画から個人を特定できる技術も進歩しており、動画解析技術によりAIがマナー違反を指摘し、個人情報を結びつけることも容易になる。

犯罪を防止するための監視は結構だが、全てのマナー違反を取り締まられると窮屈になり、人の行動を萎縮させる。

犯罪防止の監視体制を整える一方で、記録された個人情報をどのように管理するか議論が必要に思う。

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