明らかになるiPhone販売縛り
公正取引委員会は、Appleが携帯3社と規約を結び、iPhoneの販売活動を制限している疑いを審査した旨を発表した。
以前より、AppleがiPhoneの目標販売台数を携帯各社に課していた噂はあったが、ここまで詳細だとは思わなかった。
細かい規約の内容
- MNO3社がApple Japanに注文するiPhoneの数量
- MNO3社がiPhoneの利用者に提供する電気通信役務の料金プラン
- MNO3社がiPhoneの利用者から下取りしたiPhone
- MNO3社等がiPhoneを購入する利用者に提供する端末購入補助
注文台数だけではなく、料金プラン、下取りした機器の使途、販売補助金と、iPhone販売について多岐にわたる規約内容だ。様々な形でAppleが携帯各社にiPhone販売を優遇するように迫る内容になっている。
ちなみに公正取引委員会の審査は終了しており、独占禁止法違反には当たらないと結論が出ている。発表された内容を読み込むと、この結論に至るまでにAppleと公正取引委員会の間で相当激しい議論が交わされたのが想像できる。
たとえば、iPhoneの注文数を規定していた問題について、規約にはあるが罰則はない、実際には数年間以外は注文数を規定していないとAppleは証言しているが、規約にあることが携帯各社にとってプレッシャーになっていたことは容易に想像できる。
最も問題になったのはiPhone販売に対して携帯各社が補助金を提供するという規約だ。ドコモのサービスで言うと「月々サポート」、auなら「毎月割」のことを指す。iPhone購入時の負担を減らすための本体価格への補助金がAppleとの規約で決定したというのは驚きだ。
公正取引委員会も、補助金により本体価格が下がり利用者の利益になっている点は否定していないが、実質「2年縛り」が発生し、ほかキャリアへの移行、通信料金の引き下げを阻害したと批判している。
相当な議論の結果、独占禁止法違反ではないが、Appleも多様なプランを認めるように規約を変更することで双方合意した様子だ。
様々なメディアがこの規約変更によって、「月々サポート」のような補助金がない多様な料金プランが今後生まれるとしているが、auは「ピタットプラン」などでAppleの規約から外れたサービスをすでに提供している。
この「ピタットプラン」導入についてはAppleとauの間で議論があったようで、iPhoneだけは遅れて「ピタットプラン」が導入された経緯がある(iPhone以外の機種は2017年7月、iPhoneだけは2018年9月)。新型iPhone登場に合わせた処置だと当時は思われていたが、新型iPhone発売と一緒に規約を改定したので実現したと思われる。
もうひとつ、この報告で興味深いのは、携帯3社の対応がバラバラなことだ。注文台数の制限では、3社のうち1社は限られた年を除き具体的な注文数量が定められていなかったとある。また1社の注文数量は目標であり、未達成でも契約違反にならないとある。もう1社は常に目標に未達だったが、ペナルティなどはなかったとされている。
公正取引委員会の報告では、どれがどの携帯販売会社か特定していないが、当初からiPhoneを販売しているソフトバンクと後発のau、ドコモでは規約の内容が異なると想像できる。
今後の販売プラン
各メディアが報じるように、今後iPhoneの販売プランは変更になるのだろうか。前述したように、auはAppleと交渉して、すでに「ピタットプラン」という本体価格への補助金がないプランを提供している。今回の規約改定で、ドコモ、ソフトバンクも追随する可能性は高い。
問題は、それがユーザーにとってメリットがあるかどうかだ。選択肢が増えることは悪いことではないだろう。本体購入価格を下げたければ従来の「毎月割」などのプランを選択し、そのかわり2年縛りとなる。それが嫌なら本体価格は高いが毎月料金が安いプランを選択すれば良い。
日本の携帯電話の通信料金が高いことについては総務省でも度々議論されている。MVNO各社が成長してきた現在は、MNOの携帯電話料金の値下げよりも、MVNOと携帯サブブランド(Y!mobileとUQ mobile)とMVNOの公平性の担保、「縛り」をなくし自由にキャリアを選択できる方向に議論が進んでいる。
今回の公正取引委員会の決定は、「縛り」がないプランを自由を選べる方向には進むと思う。ただ、それはMNOにとっては死活問題なので、本当に「縛り」がないプランがお得になるかは不透明だ。