Appleが動画配信サービスを立ち上げる?
Appleのサービスが伸びている。
Apple Pay、Apple Musicなどのサービス部門の売り上げが前年同期比31%増、95億4800万ドル(約1兆1000億円)を稼いだ。
Appleが動画配信サービスを立ち上げる噂も絶えない。他社との差別化のために、独自コンテンツを開発しているとも言う。言うまでもなく、Netflixへの対抗だ。
激化する動画配信サービス市場
最近FANG(Facebook, Amazon, Netflix, Google)と呼ばれ、成長企業の一角に挙げられるNetflixは、独自コンテンツへ多額の投資をして、アメリカをはじめ全世界で多くの会員を集めている。特にアメリカではケーブルテレビ会社から多数の顧客を奪った。
ただ、ここにきて会員数の伸びが鈍化していて、株価は急落した。急騰する株価を背景に多額の投資を継続してきたNetflixビジネスが踊り場に差し掛かろうとしている。
一方で、AWSという別の利益の源泉をもつAmazonはプライム会員を順調に増やしてきている。Amazonプライムは送料無料など多くの特典があるのも大きい。Amazonプライム・ビデオだけを目当てにプライム会員になる人は少ないだろう。
Amazonとしては、Amazonビデオで儲けるよりも、自社へロイヤリティを抱く顧客を増やし、Amazonのサイトで買い物をしてもらうのが一番の目的だ。
Apple Music成功の要因
そのような激しい競争が行われている中で、Appleの動画配信サービスはうまくいくのだろうか? 後発だったApple MusicはSpotifyの会員数を超えて成功している。iPodの時代からAppleと音楽は密接な長い関係がある。iTunes Storeで音楽のダウンロード販売を一般化したのもAppleだ。Apple Music成功の背景に、Appleの長きにわたる音楽への貢献がある。
Appleサービスの強みは豊富なデバイスとブランド
Appleの動画販売は、音楽販売の延長ではじまった。iTunes Storeで、音楽に並べて映画を販売している。Appleの強みは、iPhoneをはじめとする多くのデバイスとブランドにある。数多くのデバイスにインストールされたiTunes経由で、顧客はいつでも映画を買い、レンタルできる。
ブランドとは雑に言えば「差別化」だが、サービス・ビジネスには逆効果な部分もある。Appleは垂直統合モデルを採用し、ハード・OS・ソフトそしてサービスを自社で囲い込むことで、デザインとインターフェイスを統一・コントロールして、ブランド力を高めている。
iOSのアプリでは、映画や音楽の購入など、Appleのビジネスと抵触する行為は禁止されている。
楽園の外の住民
Appleの囲いの中の住民は幸せに暮らせるが、囲いの外の人は、Appleのサービスを使いたがるだろうか。Androidユーザー、Amazon Fireを使っている人がAppleの動画配信サービスに加入するのか。
適当なデータは見つからなかったが、感覚的にはかなり低いと思われる。そうなると、やはり楽園内の住民に対して、Appleはサービスを提供することに注力するのか、それとも囲いの外の人にも訴求する方法を考えているのか。
本日、Appleは米国企業としてはじめて時価総額一兆ドルを超えた。稼ぎ頭のスマートフォン市場が飽和しつつある中、Appleがさらに成長するためには、楽園外の住民へ自社のサービスを普及することを考える必要があると思う。