直営店を閉鎖
オーディオ機器のBOSEが日米や欧州の直営店を閉鎖するニュースが流れた。
どうして大規模な閉鎖することになったのか考察してみます。
オンライン販売比率の上昇
オンラインでの売上が伸びているので販売店は不要になったとBOSEは説明している。BOSEに限らず、多くの小売業がオンラインの販売比率を伸ばしている。
実店舗は賃料、人件費のコストが掛かるので、利益を追求するためにオンラインへシフトするのは自然の流れではる。特にアメリカは日本よりも国土が広いので、実店舗に集客するより、オンラインで販売するほうが効率が良い。
オーディオのデジタル化
BOSEと言えば、高価で憧れのスピーカーだった。オーディオに凝るなら、まずBOSEのスピーカーの導入を検討したものだった。
ところが、オーディオがデジタル化されて、古参のオーディオ機器メーカーの優位性は失われていった。
昔のように大きなスピーカーを買う層も減ってしまった。
ハイブランドの衰退
世の中がフラット化する中、多くの高級ブランドは以前の威光を失いつつある。「高級ブランド」のアイコンがつければ物が高く売れる時代は過ぎ去った。BOSEも「高級オーディオブランド」というだけでは高い値段で販売することができなくなってきている。
Appleは今でも高い利益を誇るブランドだが、Mac、iPhone、Apple Watch、AirPods、Apple Musicと新たな製品・サービスを次々と開発することで、ブランドイメージを刷新し続けている。
Boseもスピーカーだけではなく、ヘッドホンとイヤホンと新しいデバイスを開発しているが、ブランドイメージはオーディオ機器メーカーから、あまり変わっていない。
ヘッドホンとイヤホンへの移行
オーディオのデジタル化に伴い、巨大なスピーカーの需要も以前よりは減ってきていて、小型のBluetoothスピーカーやヘッドホンで音楽を楽しむ人が増えた。
Boseが直営店を展開した理由は、ホームシアターや高級スピーカーを体験するためだった。ヘッドホンとイヤホンは直営店ではなく、量販店でも十分に体験できる。
強力なライバル「Apple」
AirPodsシリーズの売上は年間1.3兆円に上ると予測されている。ワイヤレスイヤホン市場の7割を占めていると言われる。
昨年発売したAirPods Proは、Apple初のノイズキャンセリングイヤホンにもかかわらず、ライバルにも負けない性能で、人気を得ている。初物なのにこれだけの製品を開発できた背景には、iPhoneなどで稼いだAppleの豊富な開発費があることは間違いない。
対するBOSEは、ノイズキャンセリングヘッドホンでは優位に立っていたが、ノイズキャンセリングイヤホンではSONYやAppleに大きく遅れを取っている。
元々BOSEが全世界で直営店を展開したのは、Appleストアの成功があったのは間違いない。製品だけではなく、店舗での試用や購入まで最高の顧客体験を提供するためにAppleはストアまで開発した。その成功を見て、BOSEも直営店を展開したが、Appleストアのようはなれなかった。
ホームシアターやスピーカーなどを実際に体験して販売に繋げるのは理にかなった戦略だったが、AirPodsでAppleにその市場を奪われてしまったのは皮肉なことだ。
苦しい実店舗
特に国土が広いアメリカではオンライン販売が急伸していて、多くの実店舗が閉鎖されている。Appleストアの成功後、多くのメーカーが直営店を展開したが、ほとんどが失敗に終わった。
強力なブランド力を維持し続けているAppleだけが特殊だったと言える。
オンライン販売は確かに便利だ。他製品と比較検討しやすいし、口コミも参考になる。なにより、家の中にいてショッピングできるのは忙しい現代人には最適だ。
だけど、実際に製品を体験できる機会が減っていくのは少しさびしい。