ながら視聴をターゲットにしていたAbemaTV
サイバーエージェントが運営するWebテレビ「AbemaTV」は、週間アクティブユーザー数が当初目標の1000万人に到達し視聴者数は確実に伸び、緊急記者会見などがあったらAbemaを視るという視聴習慣が根付きつつある。
ただ、赤字は年間200億円で、収益化にはまだほど遠い。
恋愛バラエティを企画したり、有料コンテンツを充実させたりと試行錯誤を繰り返しているが、今のAbemaTVに足りないもののひとつが「パーソナライズ」だと思う。
強力なライバルYouTube
AbemaTVは、地上波テレビに飽きてテレビを持たない若者をメインターゲットに開始した。「とりあえずテレビ」をつける人たちをネットのAbemaTVに移行させるのが当初の目的だった。
ところが、実際には「ながら視聴」する視聴者はあまり多くなかった。年がら年中スマホを使う若者が、ずっと動画を再生し続けることはなく、ピンポイントで好きな番組を視聴する人の方が多かった。
もうひとつ誤算だったのが、CMだった。地上波テレビの代替を目指していたAbemaTVは、テレビと同様に番組の間にCMを流して広告料で収益を得ようとしていた。ところが、広告は思うように集まらず、Amazon Videoなどで自分が好きな動画しか観ないことに慣れた視聴者は、勝手に流れるCMを忌避するようになった。
さらに、ながら視聴ならAbemaTVよりも優れたコンテンツがあった。それがYouTubeである。YouTubeは自分でコンテンツを選んで視聴するスタイルももちろんできるが、放っておいてもその人が好むコンテンツを続けて流してくれる。CMも入るが、AbemaTVのCMよりも短く、スキップできるものも多い。
YouTubeは有料会員になれば、CMを停止することもできる。AbemaTVは有料会員になってもライブの放送ではCMを止めることはできない。
AbemaTVは、チャンネルを選べば同じジャンルのコンテンツを見ることができるが、「アニメ」チャンネルといっても多種多様だし、バラエティを主に流す「Abema Special」チャンネルもバラエティだけではなくドラマ番組もあるので、同じ種類のコンテンツを適当に観るという感じではない。
自分が好きなコンテンツを自動でパーソナライズして流してくれるYouTubeの方が「ながら視聴」に向いている。
アカウント作成
この状況を打開するにはAbemaTVもパーソナライズできるようにすることが必要だ。そのためにはAbemaTVのアカウントをユーザーに作成してもらってログインしてもらう必要がある。
AbemaTVは地上波テレビのようにスイッチをつければ気軽に視聴できるようにログインなどの面倒な作業を不要にしている。アカウント作成とログインという作業は、新しいサービスを試す障壁になるので、そのような仕組みにしたのだろうが、その結果、個々の視聴状況に合わせたパーソナライズができなくなった。
YouTubeは、インターネットに接続するすべての人が持っているだろうGoogleアカウントを使用しているので、その障壁を気にする必要がない。
AbemaTVもログインしてもらえれば、過去に視聴したコンテンツを参考にCMを流したり、その人が好みそうなビデオを紹介したりできるようになる。
有料会員なら、CMをのぞいて、ビデオとライブの番組を組み合わせて、その人だけのチャンネルを作ることも可能だ。
AbemaTVの視聴者数は増えてきたので、アカウント作成を強いてもAbemaから離れる人は少ないだろう。今こそ、アカウントとログインによるパーソナライズをすすめるべきだ。