2020年度サイバーエージェント決算
2020年度サイバーエージェントの決算は、売上が前年比プラス5.5%、営業利益はプラス9.9%とコロナ禍でありながら、期初の見通しを達成した。
広告とゲームは好調で、売上と営業利益とも伸びている。
注目のABEMAはどうだったのか。見ていきます。
ABEMAはどうだった?
ABEMAが中心のメディア事業は前年比プラス22.6%と今年大きく伸びた。
特にQ4(7月から9月)は前年同期比プラス40%と大幅な伸びとなった。
視聴者数も順調に伸びていて、「何かあったらABEMA」という視聴習慣も定着してきた。コロナ禍による巣ごもり中にネット番組を観た人も多かっただろうし、その後も藤井聡太ブームもあり、視聴者数は落ちていない。
売上で伸びたのはPPVを中心とする周辺事業と月額課金だ。劇場でのライブが中止になり無観客ライブのPPV配信も一般化した。ABEMAの生中継を観ながらの公営ギャンブルも好調だし、有料会員への映画配信や独占映像も人気のようだ。
ABEMAは、元の名前がABEMA TVということからもわかる通り地上波テレビの代替を目指していたが、番組の合間に広告を流すモデルはせっかちな現代人には受け入れられず、名前もABEMAに変えて方針転換をした。
それが功を奏して、今回の売上の伸びに繋がった。
サイバーエージェントの決算が発表されると、ABEMAの巨額な赤字に注目が集まるのが恒例となっている。売上が大幅に伸びた今年度も営業損益はマイナス46億円と赤字体質は継続している。
ただ売上が570億円あることにも注目したい。コストの全てが製作費ではないだろうが、年間600億円の費用をABEMAの運営制作に費やしている。メディアはコンテンツ事業でもある。ABEMAは毎日大量のコンテンツを制作して放映している。これらのコンテンツが蓄積されて資産となり、将来はコンテンツ制作費を削減できる。
今でも黒字にしようと思えば、番組制作費を節約すればいいわけで、広告とゲーム事業が好調でABEMAの制作費をカバーできるうちは、番組制作に投資してコンテンツを蓄積する戦略なのだろう。
ABEMAの成長にコミットする藤田社長
あまりにも巨額な赤字が続くのでABEMAとABEMAを主導する藤田社長に株主から冷ややかな視線が注がれていたのは事実だ。サイバーエージェント全社が赤字になったら、社長の責任問題に発展するところだった。
売上が伸び続けていて、PPVという新たな柱も伸びてきているので、市場ももう少し様子を見ようという雰囲気になってきている。株価も秋以降高値で推移している。
藤田社長は来年度もABEMAへの投資をコミットしている。投資を継続してコンテンツを増やしていけば、ABEMEが視聴者に定着し、中長期的に大きな収入源になる可能性はある。
ABEMAの対抗馬はいないのだろうか。国内にテレビ番組風の動画配信サービスはABEMAしかない。ライバルは海外勢だろう。
Amazon Prime VideoやNetflixは豊富な資金を背景に良質なコンテンツを制作している。コロナの第二波が起きている欧米では映画館の上映を諦めてネットでの配信が増えている。映画館が正常に戻っても、いつ感染が再拡大して映画館が再び閉鎖になるかわからない。リスクを負えないと映画配給会社がネット配信に軸足を置き出す可能性もある。
日本向けのコンテンツに注力するABEMAが米国勢にどこまで対抗できるか注目だし、個人的には日本発のABEMAを応援したい。