小説とIT

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の 「夏のピルグリム」 が7月18日に発売になります。初の単行本形式の小説です。
興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

MENU

LINEの個人情報管理報道。LINEの何が問題なのか

LINEに問題が発覚

LINEの個人情報管理が問題になっている。国会でも議論されて官公庁がLINEの使用を中断する事態になっている。

一体何が問題なのか考えてみます。

f:id:tkan1111:20210320103213p:plain

 何が問題?

報道されている問題点は2つ。

  • LINE利用者の個人情報が韓国に保存されていることを伝えていなかった
  • 中国の技術者が日本のサーバーにアクセスできる権限を持っていた

LINE上の画像と動画が韓国のNAVERデータセンターに保存されていた。そのセンターのアクセス権は韓国の現地関連企業が持っていた。

データを国外を持ち出してはいけない、ということではない。LINEは日本国内だけで使われているわけではない。外国のユーザー毎に各国にサーバーを設けて個人情報を管理するのは現実的ではない。

今回問題になっているのは、データ保存先の国名をユーザーに開示していなかったことだ。保存先の国名を明示し、ユーザーに了解を得ることを内閣府の外局である個人情報保護委員会が求めている。

中国の技術者にアクセス権があったことは、別に中国人差別ではなく、中国という国家に問題がある。中国の法律では中国政府の要請に応じて情報を提出しないといけない。本当にやるかどうか別にして、中国政府が日本人の個人情報を握ることができる危険性があることが問題だ。

どうしてこうなったのか?

LINEは韓国企業NHNの日本子会社が開発したアプリだ。韓国本社と協同で運営していた時代は韓国サーバに一部情報を置くことは自然なことだったのだろう。その慣習のままきたと思われる。

どうして発覚したのか?

ヤフーとの経営統合協議の過程で発覚した。統合前の2021年2月に中国技術者のアクセス権限を削除したということは、ヤフー側から問題だと指摘があったのだろう。

今後は?

中国人技術者のアクセス権は削除され、個人情報のアクセス権限の制限と監視を強化するとLINEは発表している。

しかし現状はデータの国内完全移転については言及していない。需要な個人情報にあたるデータは国内に置くが画像などは当たらない認識のようだ。

LINEの利用者は国内に8600万人いる。データは膨大で、そう簡単に移管できないだろうし、海外にデータがあること自体が問題なわけではない。

ただ、世論や政府の追求が強まってきたら、国内へデータ完全移管をせざるを得ない事態に陥る可能性はある。

ガバナンスの問題

情報管理の不備はもちろん問題だが、これがLINE社内で議論されていなかったことが一番の問題だ。報道によると、LINE社内でも中国企業や韓国内にあるデータなど全体を把握している社員はほとんどいなかったと言われている。

元々は韓国企業の子会社だったLINEが急成長する過程で、膨大なデータの管理は荷が重かったのだろうか。

LINEと、統合したヤフーは日本企業では数少ないGAFAに対抗できるサービスを持った企業だ(国内限定の話だが)。ヤフーのポータルサイトは強力だし、LINEはコミュニケーションアプリのデファクトスタンダードの座を占めている。

GAFAとは比較にならない企業規模ではあるが、LINEのユーザーは膨大だし、GAFAのサービスがLINEのアドバンテージをひっくり返すのは相当難しいと思われる。

ただ、こういったガバナンスの問題を起こしているようでは、現状のアドバンテージを失いかねない。政府やマスコミは新興のIT企業には冷淡だ。こういった問題が起きると、政府とマスコミのバッシングが続く危険性もある。

こういった問題が起きないようにヤフーと協同でガバナンスの強化を行なってほしい。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は小説家です。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
Kindle Unlimited会員ならすべて無料、非会員の人にも99円からご用意していますので、お読みいただけると幸いです。感想もいただけたら感涙でございます。