Netflixの広告つきプラン
Netflixが広告つきのプランを発表した。動画再生前、再生中に広告が流れる代わりに、ベーシックプランより200円安い月額料金790円の料金で提供される。11月4日午前1時より開始だ。
15秒か30秒の広告が1時間につき平均4分から5分流れる。映画やドラマの再生中にCMが流れるのは地上波テレビみたいだ。
動画配信サービスは地上波テレビの番組ではできないサービスを目指して発展してきた。
CMが流れず、好きな動画を好きな時に鑑賞できるのが動画配信サービスのメリットだった。
地上波テレビはCMが頻繁に流れ、視聴できる番組は固定されている。
CMが流れるということは動画配信サービスが地上波テレビに回帰しているようにも見える。
地上波テレビモデルへの回帰
テレビCMは週間の放送時間の18％以内という基準を設けている。1時間当たりだと約10分のCMが流れることになる。今回のNetflixのプランは1時間当たり4分から5分なので、テレビCMの半分ほどだ。
だが、映画鑑賞の途中にCMが流れると、地上波テレビで映画番組を鑑賞しているときと似た感覚がするはずだ。
好きなときに好きな動画が観られるという動画配信サービスの特徴も制限される。
今までなら、少しだけ鑑賞して好みにあわなかったら別の動画を視聴することができたが、再生の度にCMが流れるようでは、気軽にザッピングができない。
地上波テレビの不自由さを脱するように流行った有料の動画配信サービスが、地上波の広告モデルに回帰したみたいだ。
全世界共通サービス
Netflixは会員数が減少しはじめているのが話題になった。本家のアメリカではかなりのユーザーがすでにNetflixと契約していて、飽和状態になっている。Netflixより安価なDisney+が強力なライバルとして存在感を強めている。
そのような状況で価格競争力を高め新たなユーザーを獲得するために、200円安い広告プランをNetflixは始めたわけだ。
果たして、このプランが人気になるだろうか。少なくても日本では非常に難しいように思う。動画配信サービスのメリットは気軽に動画を鑑賞できることにある。
月額500円以下なら、他のサービスのちょい足しとして加入する人もいそうだが、月額780円になると、Disney+の月額980円と近い料金と認識してしまう。Disney+とすでに契約しているユーザーがNetflixも併用したくなる金額ではないように思える。
CMがない通常プランも同様に月額980円だ。200円のためにCMを許容して安いプランを求める人が日本にはどれだけいるか。
アメリカでは状況が多少異なる。契約者数が飽和状態に達しているので、少し安くすることで、今までは高価でNetflixに手が出せなかったが値下げなら契約しようと考える顧客層をターゲットにしている。
国によって獲得しているシェアが異なり、状況も異なるが、今回の新プランは全世界で開始される。
Netflixはグローバルで同じサービスを提供してきている。動画も全世界向けに吹き替えを準備し、同時に配信することも多い。
グローバルで同じサービス・同じプランを提供する外資系企業は多いが、シェアを握り、さらに多くのユーザーを獲得するために各国の事情に合わせたサービス・プランを用意していく。
Amazonはシステム的にグローバル共通だが、日米のサービスや価格はかなり異なる。日本のAmazon Price会費はアメリカよりかなり安い。Netflixも国情に合わせたサービスを提供する時期だと思う。
今後の決算に注目
今回の広告プラン開始に伴いベーシックプランはSD画像から720P画像に画質は向上したが、2022年の視聴環境だとHD以上の画質が欲しいところだ。HD画質の広告プランはないので、広告つきだと低画質のプランを選ぶしかない。
安価とはいえ、このプランでNetflixの人気が回復するかは日本から見ると微妙だと思うが、契約ユーザーが飽和状態で新たなユーザー層にリーチする必要がある米国では違う反応なのだろう。
11月以降の決算に注目したい。
