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現時点の5Gサービスがしょぼい理由

5Gサービスがスタート

NTTドコモが3月25日、KDDIが26日、ソフトバンクが27日に5Gサービスを開始した。米韓に遅れること約1年、日本の5Gがようやくはじまった。

待望の5Gサービスだったが、内容はかなり期待はずれなものだった。対応エリアは狭く、料金も高い。

どうしてこうなったのか考えてみます。

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エリア

ドコモは対象エリアではなく、観光名所やドコモショップなど5Gが使える地点を公開している。東京スカイツリーやUSJの一部エリアなどで、使える場所は、まさに点と点という状態でサービスを開始した。

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KDDIは、5G対応エリアを公表している。赤い点の部分が4月末で使えるエリア、見づらいけど黄色い点が夏までに使えるエリア。オレンジは4G LTEエリア。夏の段階でも都内の多くの地域で5Gは使えない。

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こちらはソフトバンク。ピンクが4月末のエリア、黄色が夏以降のエリア。KDDIとたいして変わらない。

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3キャリアのエリアを見てきたが、現状の対象エリアはかなり狭く、4Gの代替となるまでは相当時間がかかりそうだ。感覚的には4G(LTE)開始時よりもエリアが狭いように思う。

料金

ドコモの料金プランは、既存のサービスである「ギガホ」「ギガライト」を拡張した「5Gギガホ」「5Gギガライト」。最大6ヶ月は4,480円だが、それを過ぎると月額7,650円となり、かなり割高になる。

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キャンペーン中、使えるデータ量は無制限だが、キャンペーンが終われば100GBになってしまう。高速な5G回線はデータ使用量が無制限になると思われたが、急激にデータ使用量が増えた場合を恐れて予防線を張ったのか、無制限はキャンペーンとなっている。

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KDDIは6ヶ月まで3,460円だが、これは家族割やauスマートバリュー割引を含めた金額で、割引がないと2年契約で8,480円と、ドコモ以上に割高だ。ただドコモと違い、データ使用量は無制限だ(テザリングは制限あり)。

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ソフトバンクは既存プランにプラス1,000円で5Gを利用でき、8月中に申し込めば2年間は無料になる。当面は5Gだけでお金が取れるサービスにならないと言っているように見える。

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5Gサービスがしょぼい理由

エリアを見て分かるように当面の5Gサービスは日常で使える状況になく、たまに入ったらラッキーぐらいのサービスだ。

いくら割引があっても、実質無料のソフトバンクを除き、この状況で5Gプランに加入する人は少ないだろう。

米韓より1年の余裕があったのに、どうしてこのような状況になったのか。5Gの電波特性の課題もあるが、キャリアとしてはまだ投資を加速させる段階にないと判断していると考えられる。

延期になってしまったが、本来は東京オリンピックで5GサービスをPRして加速させる戦略だった。

ところが、ひとつのネックがiPhoneだった。ご存知のように日本のスマホのシェアの6割はiPhoneだが、現行のiPhoneは5Gに対応していない。ハイエンドのAndroidには5Gに対応しているモデルもあるが、日本ではiPhoneに対応しないと普及が進まない事情がある。

もうひとつの大きな要素は需要だ。

高速化低遅延が売りの5Gだが、現行の4Gのスピードが遅くて困っている人は少ないだろう。むしろ多少遅くても安い方が良いとMVNOを利用している人も多い。

速度に不満がなくても5Gでしかできないサービスがあれば使ってみたいと思うが、現状はそのようなサービスは見当たらない。「鶏が先か卵が先か」みたいな議論になるが、5Gの回線と端末が普及するのが先なのか、5Gに特化したサービスが生まれるのが先なのか、難しいところだ。

自動運転やIoTなどに使うアイディアは出ているが、個人用というよりは産業で使われるイメージのが強い。

3Gのときは、スマホ時代になりパケット消費量が一気に増えたことが4G普及の後押しとなった。インフラの進化を後押しするのは、いつでも人の不満だ。DVDの画質に不満があったからBlu-rayが普及した。現行の4G回線に不満が少なければ、5Gの普及はなかなか進まないかもしれない。

ターニングポイントは次期iPhone発売と光回線の代替

5Gの普及が加速するのはいつだろう。ひとつのターニングポイントは次期iPhoneの発売だろう。次期iPhoneは5Gに対応すると予想されている。コロナウィルスの影響で販売が遅延する観測も出てきているが、どうなるだろう。

もうひとつのターニングポイントは家庭用光回線の代替需要だ。現在は外出先では4G、自宅では光回線+Wi-Fiを利用するのが一般的だと思う。これが高速な5Gで両方とも代替できるなら、ランニングコストを節約できる。月額料金の削減はユーザーにとってわかりやすいメリットだ。光回線の代替になることが知れ渡れば、5Gの普及に弾みがつく。

ただ、これもネックがある。三大キャリアは光回線も販売している。モバイル通信とセット販売をして売り上げを増やしてきたので、統一されてしまうと単純に売り上げが減ってしまう。もちろん光回線の設備費を将来的には削減できるが、当初はコスト削減よりも売り上げ減の方が大きいだろう。

すべての家庭用光回線が5Gに入れ替わるかどうかも不透明だ。家庭用回線の代替をプッシュするとしたら、ソフトバンクだろう。ソフトバンクの光回線はNTTの回線を使用しているので、NTTに回線使用料を払っている。4Gでもソフトバンクは家庭用モバイルWi-Fiルーターの普及に熱心だったので、エリアが広がってくれば5Gでもしかけてくるかもしれない。

とは言え、ソフトバンクの5Gが家庭内で満足して利用できるようになるには、まだ数年かかると思われる。その間に、次期iPhoneが5Gに対応し、来年東京オリンピックが開かれ、5Gを取り巻く環境が変わり、5Gに特化した魅力的なサービスが登場する可能性もある。

 

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