サイバーエージェント決算
サイバーエージェントが、2020年Q1(2019年10月から12月)の決算を発表した。売上が前年同期比でプラス4.4%、利益がプラス45%と好調だった。
メイン事業の広告の売上がプラス8%、ゲームがプラス3%で利益は両事業とも大幅に伸びている。問題はインターネットテレビ「Abema TV」が主体のメディア事業だ。
売上はプラス7%だったが、赤字は50億円。年間の赤字は200億円に達する。
藤田会長はAbema TVを中長期的に育てると常々言っているが、上場企業であるのでいつまでも赤字を垂れ流すわけにはいかない。
いつ黒字化するか考えてみます。
売上は伸びているが、、、
Abema TVの売上は伸びているのは事実だ。ただし、損益も拡大している。単純に考えればコスト(制作費)が増大していることになる。
売上を伸ばしても赤字が増える状態から脱却できていない。
この状態が続けば、いつまで経っても黒字化できない。
Abema TVのビジネスモデルは地上波テレビと同様に番組の間に広告を入れて広告料で稼ぐモデルだった。「だった」というのは、広告収入は思ったほどには伸びず、またスマホで「ながら視聴」する人よりも自分が好きな番組だけを視聴したい人が多かった。
そこで、Abema TVのビジネスモデルは、広告モデルとオンデマンド有料会員モデルの2本立てになってきている。
広告モデルからの移行を以前から少しずつ言及していたが、今回の決算では広告とサブスクモデルの両方の収益モデルでいくと明確に宣言している。
そればかりか、オンデマンドの試聴時間が全体の38%に達し、今後は50%程度まで伸びると言及している。放送時間まで待って番組を視聴する、間に入るCMを観せられるというのが、現代のスピード社会に合わなくなってきていることを認めているわけだ。
現実に有料の「Abemaプレミアム」の会員数は伸びているが、前述の通り売上はそれほど伸びていない。「お試し会員」の数が含まれているのかもしれない。
50億円の赤字を補填するには、今の会員額だと、ざっくり250万人の会員を集める必要がある。国内のNetflixの会員数は約300万人と言われているので、それに近い規模の会員が必要な計算になる。
Netflixのスタンダードプランは1,200円なので、960円のAbemaプライムは値上げできる余地はあるが、それは競合できるコンテンツが揃っている場合だ。
Netflixは多額の製作費をかけて多くのコンテンツを提供している。その制作費は、Abema TVと桁が違うだろう。
動画配信のサブスクモデルにはAmazon Primeもある。NTTドコモと提携することで、1000万人単位で会員数を増やすとみられている。その中で、Abemaプレミアムの会費を払ってもらわないといけない。
もうひとつ難しいところが、Abema TVのメインである視聴者が若者ということだ。藤田会長も言っていたが、Abema TVで一番人気のコンテンツが恋愛バラエティだ。
若者はあまりお金を持っていないし、コンテンツが無料であることに慣れ親しんだ世代だ。
その世代を中心に250万人の会員を集めるのは容易ではない。
Abema TVには存続して欲しい
ネガティブなことを書いてしまったが、国産のサービスである「Abema TV」には期待している。日本の地上波テレビ文化を踏まえた馴染みやすい番組、将棋や麻雀、競輪などメジャーなメディアにはあまり取り上げられないコンテンツを提供してくれるのは有り難い。ありのままで全てを見せる長時間のノーカット中継も、貴重だ。
先日は、パーソナライズさせることで広告モデルを強化する提案をしたが、多額の赤字が減らせるためには、売上増と共にコスト削減を行う必要がある。
Abema TVのコンテンツは地上波テレビレベルものが多いが、これは当然でテレビ朝日のスタッフが番組制作しているからだ。
地上波同様に芸能人も使っているし、ドラマも地上波と遜色ない。良質なコンテンツを提供することも大事だが、地上波とは違うコスト構造にしないと、黒字化は難しいのではないか。
数ある動画配信サービスの中でも独自のポジションに位置するAbema TVにはぜひ存続して欲しいので、地上波と異なるコスト構造で黒字化を期待したい。