アフターコロナの世界
日本全国に緊急事態宣言が発令されて、国内の危機感も一段上がっている。ゴールデンウィーク明けの5月6日までとなっているが、日本だけではなく世界中に蔓延したウィルスが短期間に根絶できるとは思えない。
例え一度は沈静化したとしても、新たなウィルスに備えて人の行動は変わらざるを得ないだろう。社会への変化は当然ITの分野も変えることになる。
モバイルからリモートへ
ここ数年のITのトレンドのひとつが、「モバイル」だった。スマートフォンの成長に伴い、いつでもどこでも同じことができるように5Gに代表される高速モバイル回線、クラウドサービスの発展といった進化が起きてきた。
だけど、アフターコロナの世界ではモバイルがリスクになる。今のように実質外出制限が掛かれば、どこへもいけない。
今注目を集めているのは「リモート」だ。コロナ騒動で、自宅から様々なサービスや仕事環境にアクセスできるリモート環境を構築した人も多いだろう。
リモート環境は固定の場所からアクセスできればいいので、モバイルよりもアクセス側の準備は容易だ。パソコンとネットがあれば良い。
ただ、サービスがリモートに対応していないとリモート社会を実現しない。
リモート観客の進化
今回のコロナ禍で、リモートでも存続できるジャンルとできないジャンルが明確になった。
競馬は無観客で毎週レースをしている。競馬場と場外馬券販売所は閉鎖しているが、リモートで馬券を購入できるから経営が成り立っているのだ。JRAの売上の98%が馬券収入で、馬券購入の7割がネット投票による。
別にこのような状況を予測したわけではないだろうが、結果的にこの状況でも70%の売上をJRAは確保できているわけだ。
一方でリモートに対応しているが不十分なために活動に制限がかかっているジャンルもある。将棋観戦は、近年モバイル環境の充実に取り組んできた。
ABEMAやニコ生でのネット中継、モバイルアプリで棋譜中継に対応していて、どこでも観戦できる環境は整ってきているが、一部の対局が延期になっている。
関東と関西に対局場が分かれていて、緊急事態制限の下で地方在住の棋士が移動が困難になっているからだ。
素人将棋ではネット対局が一般化しているが、プロ棋士の全ての対局は今でもリアルな将棋盤で行われている。もしも、ネット対局ができる環境が揃っていれば、地方在住棋士も含めた全対局を実施できていた。伝統や不正防止など様々なしがらみはあるが、平時にリモートで可能な環境を用意しておいていたかどうかで、運営への影響が変わってくる。
プロサッカーとプロ野球は開催が延期になっている。試合自体はできるが、観客がいないと盛り上がらないのと観客収入がないのが問題だ。Jリーグにおける観客収入げは、一番多い浦和レッズで40%、少ないチームだと10%前後だ。
テレビやDAZNによる配信での収入もあるので、収入面だけを考えれば開催しても良いと思うが、観客とサッカーの試合は不可分なのだろう。
コロナ禍が一度収束した後でも、観客が密着した状態で観戦できないケースがあるかもしれない。そのような状況を考えて、スタジアムに人が集まらなくても、同じように観戦できる仕組みが必要だ。VRゴーグルを用いたバーチャル観客はすでに実現している。リモートで観客が楽しめるようにするだけではなく、観客が入っていなくても歓声が聞こえて盛り上がるいスタジアムで、選手が同じようにプレイできる環境の構築も必要だ。
同じスポーツでも相撲は無観客で実施している。力士の息遣いが聞こえてリアルだと好評のようだ。そのスポーツの雰囲気に合わせて、リモートでも楽しめる環境を構築する必要があるだろう。
インターネット通販の更なる拡大
買い物はインターネット通販が充実しているので、リモートで多くの買い物を楽しめる環境が整っている。洋服や靴も自宅に取り寄せて試着できるサービスがあるので、自宅で選びやすいが、まだ種類は少ない。
今まで通販で買いづらかった生鮮食品もAmazonフレッシュなどのサービスが始まっているが、まだ対象エリアは限られている。
アフターコロナの世界では、あらゆる物が通販で購入できるようになり、種類も充実してきて、実店舗からバーチャル店舗への移行がさらに加速すると思われる。
デリバリー代行サービスの拡充
「Uber Eats」のようなデリバリー代行サービスも日本ではまだ対象エリアが狭く一般化していないが、アフターコロナの世界では有望な分野だ。そもそも日本では中華料理店や蕎麦屋など出前が一般的だったし、ピザ屋のデリバリーを使ったことがない人は少ないだろう。
密集空間になりがちな個人店舗にとってもデリバリー代行が気軽に使えることは朗報だ。今後はUber Eatsだけではなく、地域に密着した代行サービスが増えていく可能性は高い。
アフターコロナの世界で勃興する新たな産業
外出自粛により、街の店舗は深刻なダメージを受けている。コロナ禍が一旦収束した後でも、元と同じ商売を再開できるとは限らない。人とひとの距離が空き、外出の頻度は減るに違いない。
そういった困難な状況でも、リモートを主体とすることで新たなサービスを広めることはできる。環境に応じて顧客のニーズに合わせて、形態を変えるのは商売の鉄則だ。
自宅でも楽しめるスポーツ観戦、自宅で試着ができる買い物、デリバリー代行サービスは、アフターコロナの世界では注目の産業となると思う。