AirPods Proのファームウェアアップデート
AirPodsは自動的にファームウェアがアップデートされるので、アップデートに気がつかないユーザーもいると思う。
一方、新しいファームウェアが公開されると、AirPodsの時は音質、AirPods Proではノイズキャンセリング性能についてヘビーユーザの間で密かに議論が起きている。
AirPods Proでは新しいファームウェアが公開される度に、ノイズキャンセリング性能が落ちた、回復したなどの意見が飛び交う。
本当なのだろうか。AirPods Proのノイズキャンセリングとファームウェアについて考えてみます。
迷走したファームウェア
発売当時のAirPods Proのノイズキャンセリングは素晴らしいという評価が多かった。最初のファームウェアのバージョンが2B584。
そんなに良い耳をしていないのでよく分からないけど、確かに購入当初は完璧に近いほどノイズを遮断していた気がする。ランニングで外を走っていると周りの音が聞こえず怖いぐらいだった。
聞きすぎるノイズキャンセリングで事故が多発したかどうか分からないが、11月14日にAppleは2B588の新バージョンを公開した。この2B588にアップデートするとノイズキャンセリングが低下したという意見がネットに溢れた。
そこで改善版として12月16日に2C54がリリースされた。このバージョンでも当初のノイズキャンセリング性能が戻っていないという意見が多かった。
評判が悪かったからか他に不具合が出たのか翌年1月に2C54の公開は中止されてしまった。新たに購入した人は2C54ではなく旧バージョンの2B588を使用し続けるしかなかった。
どちらにせよ、発売当初のバージョンと比べると、ノイズキャンセリングが弱いという意見がなくなることはなかった。
AirPodsは自動アップデートなので、ユーザーがアップデートを拒否もできないし、ファームウェアを選ぶこともできない。
そんな中、公開が中止になった前バージョンから4ヶ月が経過した5月6日に最新バージョン
「2D15」が公開された。
これにより、公開中止になった2C54を使っていたユーザーも、更新できなかった2B588のユーザーもみんな2D15のバージョンに統一された。
発売から半年以上が経過している。ノイズキャンセリング機能付きイヤホンがAppleにとって初物だという点を加味しても、ファームウェアに関する騒動は迷走と言わざるを得ない。
AirPods Proのノイズキャンセリングの方向性
最新バージョンである2D15がアップされて、「当初の2B584と比べてノイキャン性能は低い」「2B588より大きく改善した」など様々な意見が出ている。
ノイズキャンセリング機能は周辺の音に大きく影響されるし、イヤホンから発する音をデータとして比較するのも容易ではない。だから、どうしてもユーザーの主観による意見になってしまう。
ただ、Appleが目指している方向性を理解しないと議論も噛み合わない。
Appleは全ての外部音を遮断するとは一言もいっていない。発表イベントで、AirPods Proは1秒間に200回ノイズキャンセリングのレベルを修正して、耳に届ける音を調整しているとAppleは説明していた。
音の種類によってノイズとしてカットするかどうか判断しているようだ。
筆者の耳でもよくわかるのが、救急車のサイレン。外でAirPods Proを使用していると車の走行音はかなり遮断してくれるが、救急車が近づくとすぐにわかるほどサイレンの音が伝わってくる。AirPods Proが救急車のサイレンだと判断して、音をカットすることなくイヤホン内蔵のスピーカーで再現していると思われる。
テレビと人の話し声の処理も異なる。テレビからの音はある程度遮断してくれる(車の走行音や空調の音に比べて完璧ではない)が、近くで話している人の会話音はそれほどではない。外部マイクによってユーザーに話しかけた声なのか、そうではないのか判断している気がする(そのような記事や調査結果は出ていないので、気にせいかもしれないが)。
Appleが詳細を発表していないので分からないが、外部音全てをシャットダウンするのではなく、マイクで拾った音の性質から、遮断する音とそうではない音を判断していると思われる。
だから、AirPods Proは人の声が聞こえるからノイズキャンセリング性能が弱いという意見は間違っていて、むしろ積極的に人の声を届けているのだ。それが分からないと正しい評価ができない。
秘密主義
と言っても、Appleはどのような音を遮断しているのか何も発表していないので、全ては憶測にすぎない。ファームウェアの内容も公開しておらず、何が改善されたのか改善されていないのか不明なので、真偽不明の噂が飛び交うことになっている。
AirPods ProはAppleらしく細かい調整はできない代わりにユーザーへ余計な負担をかけることなく、Appleが最適と思えるノイズキャンセリングレベルで聴けるようになっている(ソニーやBoseはノイキャンのレベルを調整可能)。
その方針に理解はできる。ただ、救急車のサイレンが聞こえるかどうかは人命にも関わる。だからこそ、ユーザーが納得できるもう少し詳細な情報を出して欲しいところだ。