巨大IT企業がスマートホームで提携
Google、Amazon、Appleが、スマートホーム接続の標準規格を目指すワーキンググループConnected Home over IPに参加することを決めた。
GoogleはGoogle Homeを、AmazonはAlexaを中心にして家電をコントロールする技術を有しているが、両社の規格に互換性はなく、家電メーカーはふたつの規格に合わせないといけないのが現状だ。
Appleにも独自規格のHomeKitがあり、やはり他社規格と互換性がない。Appleがこの手の統一規格に参加するのは初めてではないが、今回の参加はかなり異例に感じる。それはジョブズ時代からの大きな方針転換になるからだ。
楽園に招き入れるAppleビジネス
Appleのビジネスモデルといえば、垂直統合による顧客の囲い込みだ。自社で開発したハードとOSでデザインが統一された美しい製品を提供し、ブランド価値を高めるのがAppleの基本戦略だ。OSは他社には供給されず、AppleのOSを使いたかったから、Appleのハードを買わないといけない。その代わりユーザーはAppleが作り上げた楽園の中で、難しいことを考えず気楽に過ごすことができる。最近はAirPodsなどの周辺機器も、Apple製品ならスムーズに接続できるようにOSにも仕掛けがしてある。
たとえシェアは取れなくても、「楽園」を維持して大きな利益を得ることがAppleの生命線だった。
このスタイルが確立したのはジョブズ時代だ。それ以前は、Mac互換機も販売していたが、ジョブズがCEOに復帰して直ちに廃止された。
ジョブズ時代からの方針転換
HomeKitもAppleの勝利の方程式通り、Apple製品でしか使えない規格だった。そのせいで、Apple版スマートスピーカーであるHomePodの販売不振もあり、HomeKit対応製品はあまり増えていない。Appleの厳しいセキュリティ基準も他社が参入する足枷になっている。
今回の統一規格の参加で、Apple製品で使えるスマートホームが増えるのは嬉しいが、Appleの垂直統合が崩れることになる。
Apple MusicなどのサービスはAndroidなど他社製品にも開放されているが、Appleの独自規格が開放されるのはレアなことだ。今回の参加はAppleにとって大きな方針転換である。
ジョブズ時代は、iPhoneをコピーされたとGoogleを批判し、サムスン電子とは長い特許裁判を戦った。
クック時代になり、以前より他社の批判や裁判は減ってきた。これはクックCEOの性格も影響しているのだろう。
今回のスマートホーム統一規格への参加も、新しいAppleのイメージを印象づけてくれる。
今後、Appleの独自規格が開放されることが出てくるのだろうか。OSが他社へ供給されることはないだろうが、サービス・規格の開放は継続すると思う。規格の乱立はユーザーもベンダーにとっても不利益だ。むだな部分で競合せずに他社と連携し、OS・ハードの品質と性能で争うようになっていくのでは。