業績見通しを下方修正
AppleのクックCEOは10-12月期の売上を当初予測より5%から10%減少すると発表した。
Appleが決算事前に下方修正するのは珍しい。時価総額がトップレベルのAppleの決算は市場全体に大きな影響を及ぼすので、売上減少による株価下落のインパクトを抑えたかったのだろう。
ただ市場は敏感に反応しており、取引時間後にAppleの株価は急落している。
中華圏での売上が落ちたのが大きく、アメリカとの貿易摩擦の影響があったとクックは説明している。
以前から指摘されていたリスクが表面化
一番大きな問題は中国経済だと言っているが、他製品の不調にもクックは言及している。新型iPhoneへの買い替え需要が弱かったこと、Apple Watch series 4、iPad Pro、MacBook Airと大量の新製品の供給が十分ではなかったことも理由に上げている。
今回の下方修正は、Appleが抱える課題と戦略ミスがでた結果だ。Appleの中国への傾斜はクックCEOの代になってから強まった。直近ではAppleの売上の約2割を中国向けが占めている。不透明な中国政治と経済により掛かる懸念は、以前から言われていたことで、今回はトランプ大統領の外交政策により、その懸念が一気に表面化した形だ。
iPhoneの買い替え需要が弱いのと、買い換えるほどに製品に魅力がないのは新型iPhone発表直後から言われていた。
Appleもそのことを見越していたから、iPhone以外にもiPad Pro、MacBook Airなど少々過剰とも言える新製品投入を行ったが、今度はそれだけの新製品の供給を支えきれなかったようだ。
ただ、日本の販売状況を見る限り、大きな供給不足は起こっていないので、ちょっと言い訳にも聞こえる。実際には、新製品が新たな需要を喚起するほどの魅力はなかったのだろう。
本当の問題は別にある
Appleの本当の課題は、中国の経済減速でも、供給不足でもなく、新たなイノベーションを起こせないことだ。
現行のAppleのビジネスは、6つのカテゴリに分かれている。
そのうちの4つであるMac、iPad、iPhone、Watchのモデルチェンジを行ったが、どれも予想の範囲内だった。ソツがないアップデートだったが、需要を大きく刺激するまでには至らなかった。MacBook Air、iPad Proも悪くないモデルチェンジだったが、新たなイノベーションは感じられなかった。
電気自動車などの新しいカテゴリーに踏み込まなくても、既存のカテゴリーでも斬新な製品はまだ開発できる。ひとつの鍵はAIだろう。我々がPCやiPhoneで行っていることは、まだ旧態依然なことばかりだ。Excelに数字を埋め、予定表に手動でスケジュールを入力する。AIが進化すれば、人間が行うことは自動になり、人は少しの判断と思考に注力できる。
メール内容から予定の設定をSiriが提案し、写真撮影にAIが用いられるなどの片鱗は見えてきている。今年のモデルチェンジに向けて、どこまで斬新な変化を見せられるかが今年のAppleの課題となるだろう。