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行方不明のサウジ記者はApple Watchで音声録音が可能だったのか?

Apple Watchでリモート録音は可能か?

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サウジアラビアのジャマル・カショギ記者がトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館内での行方不明になった。今日の報道では、どうも最悪の事態になってしまったようだ。

このニュースでIT関係者の耳目を集めたのは、「Apple Watchで録音した音声をiCloud経由で婚約者が入手した」という箇所。本当に可能なのだろうか?

Apple Watchに純正ボイスメモアプリはない

Apple Watch用のApple純正のボイスメモアプリは存在しない。新macOS「Mojave」にも用意されたのに、手軽に使えそうなApple Watch用ボイスメモがないのは、バッテリー消費をAppleが憂慮しているからだろう。

ただ、サードパーティ製アプリでは、Apple Watch用ボイスメモアプリが複数ある。カショギ記者が事前にアプリをインストールしていれば、Apple Watchで音声を録音することが可能だ。iCloudに対応したアプリも存在する。

Bluetooth経由でiPhoneへ転送した?

ニュースによると、カショギ記者は自分のiPhoneを婚約者へ持たせて、総領事館の外で待ってもらっていたそうだ。婚約者が携帯するiPhoneとBluetoothで繋げれば、録音した音声をiPhoneへ転送できる。

だが、Bluetoothでは5mから10m程度しか通信距離がなく、総領事館の配置がどうなっているかわからないが、建物内から屋外への通信はほぼ不可能だ。この線は無いと言っていいだろう。

セルラー機能を用いた?

カショギ記者が身につけていたApple WatchはApple Watch series 3のセルラー版のようだ。写真で確認すると、デジタルクロックの部分が赤くなっている。

ところが、トルコ国内ではApple WatchのLTE機能を利用できない。中東で利用できるのはアラブ首長国連邦だけで、カショギ記者の母国であるサウジアラビアでも利用できない。 

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Apple Watch - 通信事業者 - Apple(日本)

Apple WatchのLTE機能は、iPhoneと同じ電話番号で着信させる特殊な仕組みが必要なので、各国の通信事業者が対応しないと利用できない。

よって、トルコ国内にある総領事館からApple Watchのセルラー機能を用いてiCloudに保存するのは不可能だ。

セルラー経由のiCloudの音声録音をAppleが許可しているかどうかも不明だ。容量が少ないApple Watchのバッテリーの消費が著しく増大しないように、Apple Watchの使用にAppleは制限をかけているからだ。

総領事館内のWi-Fiを用いた?

Apple Watchは単体でWi-Fiに接続できる。watchOS 4まではiPhoneが接続したWi-Fiしか利用できなかったが、watchOS 5からはApple Watch単体でWi-Fiに接続できるようになった。

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だけど、拉致監禁された総領事館内のWi-Fiに接続できるとは思えない。まさかパスワードを教えてくれないだろうし。

Wi-Fiルーターを用いた?

Wi-FiルーターにApple Watchを接続させれば、iCloudに音声を保存できる。外国人旅行者がWi-Fiルーターを用いるのは一般的だ(日本ほど少額でローミングサービスが利用できるキャリアは外国には少ない。その分、日本の通信料金は高額なのだけど)。

ロンドンに拠点があったカショギ記者がWi-Fiルーターを常備していた可能性はありそうだ。ただ、サウジ当局はおそらく荷物検査を行っただろうし、Wi-Fiルーターを持っていれば発見されたはずだ。ルーターを発見できないようなら、たいして大きさが変わらないiPhoneを携帯してもわからなかっただろう。

もう一台iPhoneがあった?

複数のiPhoneからiCloudにアクセスできるので、記者がiPhoneを鞄などに忍ばせていれば、音声録音できそうだが、Apple Watchは1台のiPhoneとしかペアリングできない。

婚約者に預けたiPhoneはペアリングしていないiPhoneだったのだろうか? 記者は複数のSIMをもち、ネットワークに繋がるiPhoneを二台持っていないと意味がない。可能性は低い気がする。

婚約者はiCloudにアクセスできたか?

iPhoneからiCloud(正確にはiCloud Drive)にアクセスできる。婚約者がiPhoneを預けられていて、パスワードを教えてもらっていたら、保存した音声ファイルを聴くことはできる。

どうやら無理そう

録音再生する方法を色々な可能性を探ってみた。すべては憶測でしかないが、拉致された総領事館内でApple Watchを使った音声録音は難しそうだ。CNNの記事にもあるとおり、盗聴装置など別の手段で録音されたようだ。

最新のApple Watchは心拍数の異常や転倒を検出できるようになっていて、ユーザーの生命を守る方向に進んでいるが、他人の暴力を防ぐことはできない。

ジャマル・カショギ氏の安全を祈念して止まない。