収まらない新型コロナウイルス
日本では新型コロナウイルスの感染者数が再び増えているが、日本(というよりアジア)の感染者は元々少なく、現在も毎日100名程度だが、海外では今でも毎日15万人以上が新規で感染し、合計感染者数は1000万人を超えた。
世界人口の3分の1である5億人が感染したスペイン風邪とは比較にならないが、毎年流行するインフルエンザ以外では近年の感染症にしては空前の感染者数だ。
今回の新型コロナウイルスの感染の大きな特徴は、全世界に感染拡大したことだ。発生源の中国だけではなく、北アメリカ、ヨーロッパ、最近ではアフリカ、南アメリカで感染が拡大している。
感染症というと2002年に感染が拡大したSARSが思い出させるが、SARSの感染は中国、香港、台湾と限定されていた。
どうして新型コロナウイルスだけ感染が拡大したのか、考えてみます。
引用:NHK
無症状者が多い新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの大きな特徴は、無症状の感染者が多いことだ。感染者の8割は無症状だと言われていて、きづかないうちに感染している人が多い。もう一つの特徴は感染してから発症まで時間がかかることだ。感染から発症まで平均5.1日かかると言われる。
このふたつの特徴から考えられるのは、無症状の感染者が知らない間に他者を感染させている構図だ。同居している家族への感染率は17%で、SARSの2倍という研究結果もでている。
SARSと比べると新型コロナウイルスの感染率は約100倍とも言われている。
グローバル化がウイルスを広げる
新型コロナウイルスが全世界に感染が拡大した理由は、ウイルスの感染率の高さにあるのは間違いない。
もうひとつの要因はグローバル化にあると思われる。
SARSの頃と比べて、世界は小さくなった。世界の工場である中国と関係する世界企業は多く、裕福になった中国の一般の人が海外へ旅行するケースも増えた。
日本で最初に感染が拡大したのは春節で来日した中国からの旅行者が一因だと言われている。SARSが流行した2002年当時は中国からの旅行者はは少なかった。2003年の中国からの観光客は約45万人、2019年は約959万人と20倍以上に膨れ上がっている。
観光だけではなく、ビジネスでも中国と先進国間を渡航する人が増えた。
中国に工場を置いたり、製造を委託する企業も多く、また海外へ進出した中国企業も増大している。
中国と先進国との結びつきが強くなり、欧米と中国との間を行き交う人が増えた。
中国だけではなく、先進国と他の地域を行き交う人も増えた。世界の都市を結ぶ航空路線は整備され、LCCの隆盛により航空運賃も安くなり海外渡航の敷居が低くなった。
新型コロナウイルスが全世界に感染拡大した背景のひとつに、世界が小さくなったことがある。
グローバル化がウイルスを殺す
グローバル化が世界に伝播するのは人だけではない。ネット環境の充実により同じ情報が全世界に伝わるスピードも速くなった。中国ではGoogleサービスが使えないなど国家の制約もあるにはあるが、その制約よりもSNSと充実したネット環境により情報の均質化が進んだ。
感染症対策も国家やマスコミだけではなく、ネットを経由して独自で情報を入手できる。文化・慣習が異なるのに、マスクやソーシャルディスタンスなどの対策が浸透したのはネットの影響もあったと思う。個人的にはアメリカ人がマスクをすることになったのには驚いた(それまで医療従事者以外でマスクをしている人を見たことがなかった)。口を隠すのはギャングというイメージが強かったアメリカでマスクを装着する人が増えたのは、政府からの指示だけではなくアジアでの感染症対策が伝わったのも大きかったと思う。
もちろん、正しい情報だけではなく、デマも同時に広まるので、情報の精査と多方面から情報を得る必要もあるのだが。
主にアメリカで設計され中国で製造されるスマートフォンはグローバル化の産物だ。値段も安くなり先進国だけではなく、全世界で使用されている。
グローバル化の象徴であるスマートフォンが感染拡大に貢献している。GoogleとAppleが協同して濃厚接触の可能性を検出する技術を提供している。スマートフォンにアプリをインストールすることで、濃厚接触した人の中に感染者がいたらアラートを出してくれる。
多くの人がスマートフォンを保有していなければ、このような施策は実現できなかった。
今後も発生する?
新型コロナウイルスにより一時的に各国の往来は制限されているが、感染が沈静化すれば各国間を移動する人の数も回復するだろう。
グローバル化の流れが止まることはなく、今後はアフリカ・南アメリカも含めて地球全体がグローバリゼーションの傘のもとに入ることが予想される。
そうなると、今回の感染が沈静化しても新型コロナウイルスが再び拡大することもあれば、また別のウイルスが広まることもありえる。
今回の新型コロナウイルスは野生動物が保有していたウイルスが変異したといわれている。グローバル化が進めば、未知のウイルスに人類が接する機会も増える。人類が免疫をもたないウイルスが発生すれば、感染が広まる危険性が増す。
それを防ぐ手立てのひとつがリモート化だろう。新型コロナウイルスの感染により、Stay Homeが推奨され、おそらく人類史上かつてないほど人が自宅にこもる事態となった。
リモートワークを導入した企業も増えた。人と接しすることがなければ感染が拡大することはないので、今後のリスクも考えるとリモート化は一次的な措置ではなく、多くの企業が恒久的にすすめていくことになると思われる。
それによって働き方だけではなく、産業構造にも変革が起きる可能性も高い。