アフターコロナを模索する世界
世界中で猛威を振るうアフターコロナだが、世界各国はコロナ収束後の対処を模索し始めている。
アメリカでは州によっては経済活動を再開したところもあり、トランプ大統領は外出禁止を延長しないと明言している。最大の感染地域となったニューヨーク市でも段階的な外出制限の緩和が行われる見込みだ。
フランスは、5月11日から段階的に外出制限禁止が解除される見込みだ。学校も同時期に再開する。イタリアでも国内移動の制限を解除する動きが出ている。
だが、日本は5月9日までの緊急事態宣言の期限が過ぎても1ヶ月延長することが議論されていて、延長はほぼ確実な情勢だ。
では、日本の感染状況はアメリカとフランスと比べて深刻なのか。各国の昨日の感染者数は、こちら。
- アメリカ:28,420名
- フランス:509名
- イタリア:2,086名
- 日本:159名
アメリカは2万人以上、イタリアも今も毎日2000人以上の感染者を出している。日本は日によって異なるが、100名前後だ。この状態で日本だけ自粛を延長して、他の国が経済活動を復活させようとしているのだ。
「感染者数ではなく、収束に向かっているかどうかが重要だ」という意見もあるだろう。こちらは各国の感染者数の比較。3月に入って海外からの帰国者による感染が増えた日本だが、再び収束カーブに入っているのがわかる。アメリカやイタリアよりも顕著に減ってきている。
日本だけを見ればさらに顕著だ。
「感染者数は検査数によってコントロールできるから信用できない」という人もいるだろう。
こちらは、国別の死者数の推移。感染者数と同様のトレンドを見せている。
少なくても、日本だけ緊急事態を延長しなければならない状況にあるとは思えない。
日本を含めたアジアでのコロナによる死者数は欧米と比べて奇跡的に少ない。実質的な被害では先進国の中で日本が最小だ。
それなのに経済活動の再開が遅れれば、欧米と差がつき、ただでさえ脆弱な日本のIT業界が壊滅的に打ち負かされる可能性もある。
他の業界よりもIT業界はグローバル化が進んでいて、外資の力が強い分野だ。Google、Amazon、Microsoft、いわゆるGAFA、FANGといったアメリカIT企業が制圧している業界だ。スマートフォンはもちろん、パソコン業界も今やほとんどが外資。プラットフォームもAmazonやセールスフォースドットコムが強い。
わかりやすい例として、通販市場でしのぎを削るAmazonと楽天を比較してみよう。
「巣ごもり消費」で通販のAmazonのシェアが伸びている。下は、Amazonと楽天の株価だ。どちらも通販以外の事業も多々あるので、単純に比較できないが、Amazonはコロナショック前の株価を10%上回っているのに、楽天はコロナ前の株価に戻っていない。
- Amazonの株価
- 楽天の株価
海外の経済活動が先に回復すれば、ただでさえ資本が大きい外資企業が、今まで以上に日本の市場を席巻する可能性は高い。
日本が国内で唯一外資に優っているのがITサービスの開発系だ。企業毎にカスタマイズが必要なサービス系は共通化しにくく、グローバル企業も進出しにくい。
ただ、この分野も密接な営業と折衝によって企画が進み、設計されている。アフターコロナの世界ではその手間がとりづらく、セールスフォースなどの共通化したプラットフォームを活用する動きが加速すると思われる。日本企業が得意としてきた日本流の細かな営業はアフターコロナの世界では非常に弱い。
リーマンショックの再来?
この情景はどこかで見たことがある。リーマンショックの時だ。12年前に起きたリーマンショックは、アメリカの金融不安から全世界に不況が広がり、日本も深刻な不景気に突入してしまった。しかし、元の問題だったサブプライムローン関連債権に日本の金融機関は手を出しておらず、直接的な被害は軽微だった。それなのに日本の不景気は他国よりも長く続いた。
外需が落ちた影響はもちろんあるが、「大恐慌が来た!」と過度に反応することで、怯えた消費者が買い物を控え、内需が落ちたことが大きな要因でもある。
コロナでも過度に対応をすれば、経済が落ち込み、失業率が高まり自殺者が増える。失業率が1%上がると、自殺者が1000人増えるという試算もある。
世界と比較すれば、軽微な被害で済んでいる日本なのだから、現状を正しく分析して冷静かつ素早く対処すれば、世界に先駆けてアフターコロナの世界をリードすることができる。
人類が撲滅できた感染症は天然痘だけだ。天然痘は発症するまで他人を感染させない特徴があったので、感染を止めやすかった。新型コロナは発症する前に他人を感染させるし、無症状の感染者も多いので、感染が広がりやすい。
新型コロナウィルスは撲滅できずに、インフルエンザウィルスと同様に人類と共存していく可能性が高い。
緊急事態宣言を延長した場合、どうなったら解除するのか決めておくべきだ。感染者がゼロになるまで解除しないのだろうか。
緊急事態宣言を1ヶ月行うと23兆円の損失になる資産が出ている。ウィルスと共存する体制を構築し、段階的な復興プランを実行しないと、不況によりコロナよりも多くの人が亡くなることになる。