昔から変わらないキーボード
パーソナルコンピューターが登場してからずっと本体で最も大きな割合を占めている部分がキーボードだ。今から43年前に発売された「NEC PC-8001」の表面の大部分はキーボードに覆われている。
物理キーボードはタイプライター由来のものだ。それから40年が経過しても人類は物理キーボードを捨てることができていない。
キーボードは制約が多い。キートップの表示を変化させることができないし、部品点数も増えるから、故障も起きる。多くのキーが必要だからデバイスの重量も重くなるし、小型化できない。
それなのにどうして人類はキーボードを捨てられないのだろう。
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Touch Barは消滅間近
AppleはMacbook Proに物理キーボードだけではなく、ディスプレイをタップできるTouch Barを搭載した。Touch Barは物理キーボードを省略するための装置だ。Touch Barはカスタマイズできて、キーやスライダを配置できるし、部品点数も減らせる。
ところが、新型MacBook ProではTouch Barは廃止された。13インチモデルでは存続しているが、いずれなくなるに違いない。
画期的だったTouch Barが廃止された理由は、評判が良くなかったからだ。触れた感触がなく、ブラインドタッチができないのが悪評の原因だ。Touch Barは押した感触がないので、間違えて視認しないと入力しづらい。
ただ、アルファベットならいざ知らず、ファンクションキーをブラインドタッチできる人がどれだけいるのだろうか。
カスタマイズできるメリットがあるのにTouch Barがなくなる本当の理由は、人類が物理キーボードから離れられないからだと思う。
iPadは仮想キーボードをディスプレイに表示して操作するのが基本だったが、入力に時間がかかる人が多いため、Bluetoothキーボードと接続できるようになり、今ではMagic KeyboardというiPadと一体化できる物理キーボードをAppleは販売している。
ジョブズは、物理キーボードを無くした世界を想定したのだと思うが、人々は物理キーボードから離れられなかった。
必要なのは反発力?
どうして人は仮想キーボードが必要なのだろう? よく言われるのはどこにキーがあるかわからないのでブラインドタッチができないという理由だ。でも、これって本当なのだろうか。自分が英字キーを打つときに、キーを見ていない。キーの境界を触れることはないから、キー間の物理的な境界を必要としていない。現在使っているバタフライキーボードのキーストロークは0.5mmしかない。だが、その0.5mmが必要なのだ。0.5mmがない仮想キーボードだと、なぜかブラインドタッチができなくなる。
おそらく、必要なのはキーの境界ではなく、「反発力」だと思う。物理キーは凹むので、入力したかどうか触感でわかる。その反応を感じることで、次のキーへ指が動く。
仮想キーボードだと挿下した反応がない。平面のディスプレイを叩いても反応がなく、次のキーへ動くまで指が迷ってしまう。それが、仮想キーボードで上手に入力できない原因だと思う。
感圧キーボードが実現できれば
パーソナルコンピューターにとって、キーボードと並ぶ重要な入力デバイスは、マウスだった。マウスは今でもあるけど、トラックパッドで代用できる人も多い。そのトラックパッドは感圧式になっていて、物理ボタンは消滅できている。
感圧トラックパッドは本当にクリックした感触があるので、「反発力」を感じることができるから、物理ボタンを省くことができた。
ということは、キーボードのキーひとつひとつに感圧式機構を組み込むことができれば、トラックパッドのようにキーボードが平板になっても、問題ないはずだ。
Appleも同じことを考えていて、2015年に感圧キーボードの特許を申請したが、いまだに実現できていない。個別のキーに機構を組み込むのが難しいかコスト高になるのだろう。
スマホネイティブ世代は?
こんなことを言っているのは古い人間かもしれない。子供の頃からスマホを使っているスマホネイティブ世代は、フリック入力も素早く、キーボードよりも高速で入力できる子供もいる。
その世代が多数派になれば、物理キーボードがいらなくなるのかもしれない。
その時は、今のコンピューターではなく、タブレットに近いデバイスが主流になっているのだろう。