ファーウェイ問題が世界を揺るがす
ファーウェイのCFOがカナダで逮捕され、日米の経済摩擦がさらに激化すると観測されている。
貿易不均衡を是正するために中国製品に関税を掛けようとしているトランプ大統領の方針と一緒くたにされがちだけど、ファーウェイ問題は経済摩擦とは別で、メーカーによる情報漏えい疑惑という深刻な問題だ。
誤解も多いと思うので、少し説明したいと思います。
ファーウェイは国営企業?
ファーウェイの創業者は人民解放軍の将校で、会長は習近平主席の知り合いと言われるが、国営企業ではなく民間企業である。ただ、売上10兆円に迫る規模にもかかわらず株式非公開企業であり、内情はよくわかっていない。
社名の由来である「中華有為」という言葉は「中国にとって意義のあることをしよう」という意味なので、創業当初から国策企業の色合いがかなり強い。
また、内蔵している半導体も生産設備もすべて内製で、ファーウェイ製品に何がどのように組み込れているか、外部からはさっぱりわからない。
アメリカだけが規制している?
アメリカばかりが目立っているが、アメリカ以外にもファーウェイからの購入を規制している、また懸念を示している国は多い。
政府による製品購入を禁止:アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国
懸念を表明:イギリス、日本、EU
何が問題?
詳細には明かされていないが、ファーウェイ製品のハードウェアから不要なチップが発見されたという。このチップをつかって、ユーザーの情報を漏洩させることができると言われる。
最近報じられた、同じく中国メーカーであるレノボのサーバーにスパイチップが組み込まれていた疑惑に似ている。
中国のメーカーにはスパイチップの組み込みが義務付けられているという噂を裏付けるニュースだ。
チップが発見されたのなら全容が明らかになりそうだけど、アメリカもあえて詳細を公表しない。どれがスパイチップか公開してしまうと、スパイチップを排除して、もっと巧妙な製品が開発されてしまう可能性があるからだ。
どうして今?
ファーウェイは通信インフラに強く、世界一のシェアを握っている。欧米メーカーでは勝負にならないほど安価で、通信インフラ企業では世界一の研究開発費を投入している。中国国内よりも海外に強く世界170カ国でビジネスを展開し、スマートフォンのシェアもサムスンに続いて世界2位。
このまま5G時代に突入すると、ファーウェイが通信インフラの中で圧倒的な世界シェアを握る可能性が高い。
もしファーウェイ製品を経由しての情報漏えいが事実なら、世界中の情報を中国政府が握ることになる。西側諸国(今言わないですね)にとって、安全保障上、絶対に許されない。
だから、5Gが導入する直前の今、大きな問題となっているのである。
今後の展開は?
事態は不透明だ。中国は「公正な自由貿易」を標榜して猛反発するだろうし、中国国内の外国要人を逮捕する報復にでる可能性もある。
スパイチップ疑惑の影響で、ファーウェイのシェアが少しずつ減っていく状況も予想される。
と言っても、通信インフラではファーウェイの力も大きく、今の5Gのロードマップはファーウェイ製品ありきになりつつある。ファーウェイを排除すると今よりも通信コストが上がる可能性もある。