小説とIT

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の 「夏のピルグリム」 が7月18日に発売になります。初の単行本形式の小説です。
興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

MENU

Appleの楽園にあいた「スマートスピーカー」という穴は小さくない

スマートスピーカーの欠落

Appleは垂直統合モデルでやってきた企業だ。自社のハードウェアに自社のOSを載せアプリやサービスも自社で揃える。Lightning端子など独自規格の仕様も多く、Apple製品で揃えればハードウェアの連携も簡単で快適な楽園で暮らすような体験が得られる。

ところが、Apple製品では補えない穴が開いている。それはスマートスピーカーだ。

 

f:id:tkan1111:20200725162404p:plain

HomePodはスマートスピーカーではない

Apple製のスマートスピーカーといえば「HomePod」を思い浮かべる人が多いと思う。HomePodは音声で操作できるし、天気予報や時刻などを教えてくれるが、Appleの説明を見ればわかるが、HomePodは「音楽を快適に聴くためのワイヤレススピーカー」であって「スマートスピーカー」的要素はおまけにすぎない。スマートスピーカー機能がメインなら、他のスマートスピーカーよりもはるかにバカでかい筐体にする必要はない。

AmazonとGoogleのスマートスピーカーでは実現できているのに、HomePodでできないことがいくつもある。

スキル

AmazonのAlexaデバイスには、ユーザーが好きな機能を付与できる「スキル」という設定がある。スキルを手動で追加するのは面倒だが(たまにAlexaがお勧めはしてくれる)、自分が好きなようにカスタマイズする愉しみがある。HomePodのSiriは、この分野のパイオニアのはずだが、機能や音声認識能力はAlexaに劣る。

Siriのサービスが開始直後に使ってみて「Siri、つかえねー」とうんざりしたユーザーがろくに試していないのもあるが、現在どのようなサービスがSiriでつかえるのかよくわからない人もお多いと思う。

家電コントロール

AlexaやGoogleのスマートスピーカーを使って音声で家電を操作している人は多いと思う。AppleにもHomeアプリがあり、家電の操作はできるが、Appleの独自規格であるHomeKitに対応した家電が非常に少ない。Appleのライセンスを取得していなければならないのと、ライセンス取得のハードルが高いのが要因だ。最近はそういった障害も減ったらしいが、AlexaとGoogleに対応しているのにHomeKitに対応していない製品は依然と多い。

2020年後半に家電コントロールの規格が統一されることになっているが、現状ではHomePodでコントロールできる家電が少ない事実は変わらない。

他社サービス

HomePodはApple Musicにしか対応していない。AWAやSpotifyはAirPlayを使えばiPhoneからストリーミング再生することはできるが、HomePod単体ではそれらのサービスを使用することはできない。

垂直統合モデルはAppleの存在価値でもあるので、他社サービスをそう簡単には導入できないのは理解できるが、Amazon AlexaはAmazon Music以外にもApple Music、Sopitify、AWA、dヒッツ、うたパスに対応している。

ディスプレイ

AmazonやGoogleはディスプレイ付きのスマートスピーカーを数多く開発している。音声で反応してくれるだけではなく、映像や画像で結果を表示してくれるのは便利で、スマートスピーカーの枠からはみ出し「スマートコンピューター」という位置まで昇華してきている。

HomePodにはディスプレイ付きモデルはない。

Appleとしたら、iPhoneもiPadもSiriに対応しているので、わざわざディスプレイ付きのスマートスピーカーを開発する必要はないと思っているのかもしれないが、何にでも使えるデバイスよりも機能に特化した「すきまデバイス」に需要がある時代だ。なんでも使えるのが良いなら、スマートフォンで事足りる。スマートスピーカーで行えることのほとんどがスマホで代用できる。

テレビ

Alexaの音声認識はSONYのAndroid TVなどに対応していて、Alexaデバイスがなくても音声で操作できる。AirPlay対応の家電はあってもSiri対応の家電はない。AppleがSiriのような自社のコアの技術を他社の製品へライセンスを付与することはないと思う。

決して小さくない穴

Alexaはスマートスピーカーのデファクトスタンダードになりつつある。前述の通り、ディスプレイ付きのスマートディスプレイも一般化してきて、キッチンやベッドサイドなど特定の場所で特定の用途のために気軽に使えるコンピューターとして普及し始めている。

自宅の各部屋にAlexaデバイスが増えてくると、将来的にAppleのデバイスを置き場所がなくなる可能性がある。Echo Showシリーズのようなディスプレイ付きデバイスで動画鑑賞することが普通になれば、iPadの需要も減る可能性もある。デバイスとサービスはリンクはしていないが、Amazonのデバイスを使う機会が増えれば、そのデバイスに最も適しているAmazonのサービスを使いたくなる。

そうなれば、Appleが経営の第3の柱としているサービスの成長が鈍化する危険性も出てくる。

問題はスマートスピーカーだけではなく、「家庭の各部屋の設置するコンピューターは何か?」が課題となる。部屋に何個もデバイスをおきたい酔狂は少ない。

WWDCではHomeKitの説明はあったが各部屋に設置するスマートコンピューターの話題はなかった。Appleはこの課題に対してどのようにアプローチするつもりなのか気になるところだ。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は小説家です。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
Kindle Unlimited会員ならすべて無料、非会員の人にも99円からご用意していますので、お読みいただけると幸いです。感想もいただけたら感涙でございます。