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ダイナブックがシャープの完全子会社に。日本のPC産業が壊滅した理由

東芝がダイナブック株をシャープに完全売却

東芝が保有していたダイナブック株をシャープに完全売却したと発表した。東芝のPC事業はダイナブック社として独立後、シャープが株を取得し、シャープが東芝PC事業を事実上買収した形になっていたが、今回の東芝による株式売却で日本の主要な企業によるPC事業はパナソニックを除いてほぼなくなってしまった。

NECと富士通はPC事業をレノボに実質売却してしまったし、ソニーのPC事業はVAIOという別会社になった。

かつては日本だけではなく海外でも一定のシェアを握っていた日本のPC事業だが、この20年は衰退を繰り返してきた。

どうしてこうなってしまったのか考えてみます。

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大量販売

昔のPCは高価で、各社が様々な新技術を競ってきた。しかし、PC/AT互換機の普及に伴い、PCの仕様は共通化し差別化が難しくなった。CPUはIntel(時代によってはAMD)、OSはWindowsと各社のPCが似たようなスペックになってしまい、他社との差別化はデザインと価格ぐらいになってしまった。

PCの価格を決めるのは、主に部品購入コストと製造コストだ。自社でパーツを開発製造しないのであれば他社から調達するしかない。大量な部品を一度に購入した方が安いので、シェアを握っている方が調達コストは安く有利だ。

日本企業は国内ではシェアを握っていたが、国外でのシェアは小さく、レノボ、Dell、HPのシェアには遠く及ばない。

また、海外企業は人件費が安い土地に工場を持っていた。アジアであれば中国、ヨーロッパであれば東欧で製造していた。そのうち自社で工場を持つこともやめて中国や台湾企業に製造を委託するようになった。

国内で工場を所有し製造する日本企業とコスト構造の差は歴然だった。

PCのコモディティ化

差別化が難しくなったPCは、どんどんコモディティ化していった。簡単に言えば、パソコンが電卓やボールペンと同じものになった。

企業では大量に素早く、そして安く納品してくれる企業のPCを採用したい。グローバル企業と比べて製造能力が貧弱な日本企業はそういったニーズに対応できなくなっていった。

活かせなかったガラパゴス化

日本産業が衰退するとよく言われるのが「ガラパゴス化」だ。日本語という産業障壁に守られた、そこそこの規模の国内市場があるため、日本に特化した製品だけを開発してもビジネスを存続できた。その結果、特異な日本市場のニーズだけに特化することで、海外のニーズに合わせることができず、安価な中国や韓国製品に負けてしまうのが、よく言われる「ガラパゴス化」の現象だ。

ただ、PC事業は違う点も多い。PCの世界シェアを握っている有力企業のうちアジア企業はレノボだけで、HP、Dell、Appleといったアメリカ企業が並ぶ。

それらのアメリカ企業も中国などアジアで製造はしているが、本社機能は米国にある。

ガラパゴス化は悪いことばかりではなく、特化したニーズを元に開発した尖った製品を世界に広めれば、他社製品と差別化できる。

例えば以前の日本のメーカーはノートPCの軽量化を争った。外国では自動車通勤が一般的なので軽量化には興味がないと言われていたが、社内や家庭内ではPCを持ち歩く機会も多く、軽量化はメリットも多い。

問題は、軽量化によるメリットを他の市場へ訴求できなかったことにある。この製品が手元にあれば、「こういったことができる」「生活やビジネスが変わる」といった製品を取り巻く世界観を提示できれば、ユーザーの認識を変えることができる。

OSが異なるので独自の世界観を描きやすいのもあるが、Appleはこういったところがやはりうまい。Macの性能や価格はWindows PCよりも劣っている面も多いのに、優れたデザインやiPhoneなどの他のデバイスとの連携より独自の世界観を構築することに成功している。

同じ失敗を繰り返す日本企業

PCでの失敗を日本企業は携帯電話でも繰り返す。ガラケーの世界観を世界に広めることができずに、AppleやSamsungに敗退した。

そして、スマートフォンに続く次のムーブメントになりそうなウェアラブルデバイスやスマートスピーカーには参入すらほぼできていない。グローバル企業と戦う体力を日本企業はすでに失ってしまった。

今後、日本のITベンダーが復活する余地はあるのか。かなり難しいように思う。

新たな世界観を構築できるだけの開発資金も体力もすでにない。新たな戦場となっているウェアラブルデバイスやスマートスピーカーでも日本企業の姿はなく、次の戦場となりそうなARやスマートグラスの世界にも日本の影すら見えない。

それらの製品を構築するカメラやセンサーなどの部品を開発製造するのが日本企業の役割となっている。最終的にユーザーが触れる製品だけではなく、製品のスペックを向上させる部品もそれを支える素材も商品の重要なパートではあるが、日本製の最終製品が見られないのはやはり寂しい。

ITに近いところで日本企業ががんばっている分野がゲームだ。プレイステーションのソニーとSwitchに任天堂は今でも業界のトップランナーだ。この2つの製品に共通するのは、独自の世界観をもっていることだ。ゲームマシンは稼働するゲームとともに世界観を醸成しやすく、マリオなどのキャラクターもわかりやすくキャッチーだ。

PCやスマートフォンでも独自の世界を構築できればよかったとは思うが、終わったことは仕方がない。

最初は大きくはなくても、独自の世界観を感じられる製品を日本企業が開発製造することを期待したい。

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