LINEとYahoo!が統合
Yahoo!の親会社であるZホールディングスとLINEが、3月1日に経営を統合した。
LINEは言うまでもなく日本で最も使われているコミュニケーションアプリでLINE Payなど様々なアプリを連携し、LINEワールドを形成していた。LINEは世界でも使われている日本発では貴重なアプリだったが、実質Yahoo!というかソフトバンクグループに取り込まれた。
どうしてこうなったか考えてみます。
日本では携帯電話事業社しか生き残れない
日本の巨大IT企業は携帯電話事業社(以下、携帯キャリア)しか存在しない。
時価総額ランキング(日本のIT企業)
- ソフトバンク
- NTTドコモ
- NTT
- ソニー
- KDDI
4位のソニーは金融とゲームが主な事業領域になっている。それ以外の4社は通信が主な事業領域で、携帯電話事業を行なっている(NTTはNTTドコモを2021年夏に完全子会社化する予定)。
アメリカでは、1位がApple、2位がAmazon、以下Microsoft、アルファベット(Googleの親会社)、Facebookが続き、いわゆるGAFAが時価総額上位を占めている。
日本では携帯キャリアがランキング上位を占めているのは、GAFAのような国際IT企業が成長しなかったからとも言えるが、GAFAが携帯電話のインフラ事業に進出できなかったからとも言える。
携帯電話事業を行うには全国に基地局を設置しなければならず、莫大なインフラコストが必要になる。また携帯電話で使う周波数の認可を監督官庁から取得する必要もある。政府との折衝と国別のインフラ投資は外資系企業が忌避する案件だ。
また各国政府は、国の根幹を左右しかねないインフラ事業へ外資系企業が進出することを避ける傾向にある。
以上の理由により、携帯キャリアは国内企業がほとんどだ。ソフトバンクはアメリカの携帯キャリア「スプリント」を買収したが、結果的に投資は失敗した。
スマートフォンはデジタルカメラなど数多くのハードウェアとサービスを吸収してきた。そのスマートフォンを支えているのが携帯キャリアである。
スマートフォンの隆盛に伴い、ドコモなど携帯キャリアの時価総額も伸びていった。スマートフォンのハードウェアはAppleとGoogleが独占し、サービスはその2社以外のMicrosoft、Facebook、Netflix、通信機器はエリクソン、ノキアとファーウェイ、ZTEが強力で、どの分野でも日本企業が弱い。
日本企業が独占できたのは、政府にがんじがらめにされている携帯キャリアだけなのは皮肉なことだ。総務大臣の介入で携帯電話料金が下がったことに批判が集まったが、許認可権を利用して日本政府が携帯キャリアへの影響力を保持しているとも言えるし、日本政府に守られていたから携帯キャリアが生き残れたこととも言える。
楽天が無謀とも言える携帯電話事業に進出したのは、日本企業が後発で進出できる巨大なIT事業が携帯電話キャリアしかなかったからだし、その規模が巨大だからだ。
何が間違っていたんだろう
IT事業における日本企業衰退の原因は、国内市場に固執しすぎてガラパゴス化した、法律の規制が強いなどと言われるが、逆に見ると政府が守った携帯キャリアだけが生き残ったと言える。
ドイツのIT企業の時価総額トップはSAPで2位がシーメンス、3位に携帯キャリアであるドイツテレコムが入る。シーメンスは電力・ガスなどの多くのインフラ事業を手がけていて、いわゆるITの事業領域で強いのはSAPだけだ。
どの国でも数多くのIT企業が成長しているわけではなく、インフラを支える携帯キャリアを超える規模なのは、ほんの数社だけだ。
日本からそこまでの企業が出てこなかったのは残念だが、これからでもまだ間に合う。技術革新は続き、トレンドは移り変わる。
Yahoo!とLINEの親会社になるソフトバンクは通信だけではなく、ファンド事業で稼いでいる。ソフトバンクの巨大資産とLINEという日本で成功したアプリが組み合わさることで、成長が加速する可能性はある。GAFAとまではいかなくても、Yahoo!・LINE連合には少なくても国内で成功したIT企業になってほしい。