小説とIT

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

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「マトリックス レザレクションズ」でみる21年のIT社会の進化

21年後の「マトリックス」

初代「マトリックス」から21年後の2021年に続編である「マトリックス レザレクションズ」が上映された。マトリックスをリブートした本作だが、21年の間にITと社会は大きく進化した。

映画でわかるIT社会の進化を見ていきます。

<「マトリックス レザレクションズ」の内容に関する文が含まれます。ネタバレを気にされる方は、この先読まないようにお願いします>

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バーチャルゲーム

「マトリックス レザレクションズ」の冒頭、主人公のネオはゲーム会社で働いている。その会社のヒット作がなんとマトリックス。前3部作の内容はバーチャルゲームだったという話になっている。

マトリックスは仮想空間だったが、それを実現していたのは機械軍団であり、人類ではない。だが、現在の技術なら仮想空間を構築することは可能だ。

この下のリンクはPS5やXBOXを持っていれば実際に遊べるゲームのデモだ。この映像はユーザーの動きに合わせて風景や車を動的に計算し描写している。

もちろん全世界を描写するマトリックス世界の構築は現時点では不可能だが、将来的には似たようなことができる可能性をこのデモは示唆している。

機械との関係

前作までは機械は敵だった。進化した機械は人類を敵視し、人類を電池代わりにしていたのが前作だ。仮想空間から抜け出た人類は機械の襲撃で虐殺されそうになっていた。

ところが、本作では一部の機械は人類の仲間になっている。これは、21年の間に人間と機械との関係が変わったことを表現していると思われる。21年前にはなかったスマートフォンが必需品となり、ギークだけではなく全ての人がITを身近なものとして活用している。ルンバをはじめとする家事をしてくれるロボットも珍しいものではなくなっている。

機械は人間の敵ではなく、共生するものというのが現代の感覚だ。

電話ボックス

前作では、電話ボックスにある有線電話を使って仮想空間と現実世界の交信をおこなっていた。ところが、21年後の現代では電話ボックスはほぼ消滅してしまった。

その代わりに本作では鏡が用いられる。電話ボックスの代わりなら携帯電話で良いように思うけど、そうしないのは、ワイヤレスでは交信できないのか、携帯電話で良いなら前作でも可能じゃね? と思われるらか。手元で簡単に交信できてしまうと、ストーリーが成り立たないからかもしれないが。

ボット

マトリックス世界に暮らしているのは人間だけではなく、ボットもいる。前作で機械と人類は和解して多くの人間が人工子宮から脱出してしまい、マトリックス世界が人手不足になったからだろう。このボットという概念も21年前には存在しなかった。現実のネット上では多くのボットが活動しデータを収集したり、ユーザーの質問に答えたりしている。人間の姿をしていないだけでマトリックス世界のボットの原始版といって良いかもしれない。

救世主

前作の救世主はネオだ。ネオは世界と愛する女性トリニティを救うために奔走する。本作でもネオは救世主ではあるのだけど、真の救世主はトリニティだ。クライマックスでバイクを使って疾走するのはトリニティだし、ラストで空を飛翔できたのもトリニティだ。

21世紀において、男性だから英雄かつ救世主になれるという物語は作られないのだ。

新しい映画が見せる現代の社会

「マトリックス レザレクションズ」は紛れもなく現代の映画だし、内容も非常に面白い。昔の映画のリブート版でもあるので、過去の世界との違い、我々人類が歩んできた歴史を垣間見る楽しみ方もある。

まだ観ていない方は、できれば三部作を観てから本作を観るとより楽しめると思います。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は小説家です。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
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