盛り上がるメタバース
多くの企業がメタバース事業を始めている。先日、ソニーがゲーム事業を中心にメタバースへ注力すると発表した。
ゲーム業界以外にも金融や販売など多種多様な業界の企業がメタバースに前のめりになっている。
メタバースの説明で必ず出てくるのが、セカンドライフだ。仮想空間で過ごせるセカンドライフは、今のメタバースのように注目を浴び、多くの企業が参入したが、すぐにブームは去り、利用者は減った。今のメタバースの活況はどうしたってセカンドライフを思い出させてしまう。
セカンドライフとメタバースと大きく異なるのは、3Dゴーグルを使うところだ。ゴーグルによって仮想空間により深く没入できるが、ゴーグルを装着する手間が必要だ。ゴーグルをつける面倒臭さは、3Dメガネを思い出させる。立体的な映像が観られる3Dメガネは一時期ブームだったが、装着や充電が面倒なこともあり、廃れてしまった。
メタバースの現状はいつかきた道のように思えるし、セカンドライフと3Dメガネのようにいずれ廃れてしまう予感もするが、メタバースにはセカンドライフとは大きく違う点がある。
メタバースの本質について考えてみます。
メタバースの本質
メタバースとセカンドライフの違いは3Dゴーグルだ。ゴーグルによって仮想空間に深く入り込み、あたかもそこにいるような感覚を味わえる。自分がアバターを操るのはセカンドライフと一緒だが、ゴーグルによる立体映像のおかげで、本当に自分がアバターに変わった気がしてくる。
セカンドライフと大きく違うのは、ゴーグルによって描写される高い解像度の3D映像なのだ。
アバターは現実の属性とは関係なく、設定できる。現実の性別、年齢、ルックスとは一切関係なく別の自分を自由に創造することができる。
人は、生まれた時からさまざまな属性を纏う。生きている限り、自分が選んだわけではない、性別や見た目から逃れることは困難だ。
自分の性別に違和感を抱いている人、自分の外見と意識のギャップに苦しんでいる人も、メタバースの世界では、自分の見た目を自由に創造できる。
見た目だけではなく、学歴や職業、居住地などの属性からも解放される。人間は生まれた境遇で決まってしまう属性も多い。アバターはそういった属性とは無関係に創造できる。
メタバース世界では、現実の属性とは無関係に人に出会える。普段会うことのない人々とも知り合いになれる。大企業の社長だろうが学生だろうが一切関係がない。メタバース世界では過去と現実の自分と切り離して生きることができるのだ。
外見や過去と切り離された本当の自分になることができる。その体験を支えるのが精緻なグラフィックと没入できる周辺機器だ。
第二の人生を作れるか?
現実の自分から解放されたアバターが創造できても、メタバース世界で何もできなければ、人は集まらない。メタバース世界で生活するためには、自宅や街、そしてコミュニティが必要だ。
大事なことのひとつが「仕事」だ。現実の自分から解放されて暮らすためには、仕事がいる。レジャーのようにたまに訪問するだけなら仕事は不要だが、本当に第二の人生をメタバースデ歩むためには賃金がもらえる仕事が必須になる。
メタバース内で仕事ができて、長い時間を過ごす人が増えれば、第二の人生が送れるようになる。それは性別や外見から解放された、自らが選んだ人生だ。
ただ、現在のメタバースはまだそこまで至っていない。4K画像は実現できているが、現実と見紛うほどの映像にするためには16Kは必要だし、ゴーグルだけでは現実と同じ体験を得ることができない。触感が伝わるグローブや、将来的には全身でメタバース世界を感じることができるスーツが必要になる。
第二の人生を体感できるかどうかは、ハードウェアの進化が鍵になる。第二の人生を送るにはまだ未発達だが、メタバースが進化していけば、現実の自分ではなく自分で自由に選択した「真」の自分になれるチャンスがある。それは現実の世界で己の外見や性別に苦しんでいる人が解放されることを意味する。
今のところメタバースが一過性のブームに終わるかどうかわからない。今後もメタバースの進化に注目していきたい。