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Netflixの低価格広告プランはネガティブサイクルを断ち切れるか?

広告付き低価格プラン

会員数減少に直面しているNetflixは、新たな会員を獲得するために広告付き低価格プランを予定していることを発表している。

動画の冒頭などに広告を流すことで、ユーザーの会費を安くするプランだ。

Netflixは最適な動画配信環境を提供することがブランドイメージだったが、広告付きはそれに逆行している。

それでも、広告付き低価格プランを用意しないといけない状況を考えてみたいと思います。

Netflixにおけるネガティブスパイラル

毎月一定額を支払えば、無制限でサービスが受けられるサブスクリプション・モデルは爆発的に流行した。動画や音楽にとどまらず、配送や飲食などサブスクは多岐にわたっている。

サブスクは、サービスごとに料金を支払う手間がなく、支払い処理を行う心理的障壁がない。企業側からしたら、毎月一定額の支払いがあるので、経営が安定する。個別販売・レンタルだと、ヒット作がないと売り上げがすぐに落ちてしまい、売上は不安定だ。

ユーザー・企業双方にメリットが大きいサブスクだが、ここに来て限界が見えてきている。毎月支払ってもらうためには、毎月サービスを利用しないともらわないといけない。サービスを利用しないユーザーはいずれ解約してしまう。

音楽であれば、何度も同じ曲を流すことはあるが、動画だと同じタイトルのものを何度も観ることは少ない。動画配信サービスの場合、新しい作品を常に提供し続けないとユーザーは飽きてしまい、解約してしまう。

Netflixは多くのユーザーから集めた会費を元手に映画並みの作品を大量に制作し、その作品を目玉にして、さらなる会員を集めるビジネスモデルだった。「全裸監督」や「イカゲーム」がわかりやすい例だ。

ところが、会員数の伸びが鈍化してきた。必要なユーザーの多くが会員になってしまったからだ。それでも、売上を増やすために会費の値上げを行うが、アメリカではスタンダードプランが約14ドル(日本円で約1800円)とかなり高額になってきてしまった。

値上げが続き、コストパフォーマンスが悪いと判断すると、ユーザーは退会してしまう。会員数が減少してくると、製作費が不足して新作を提供できなくなり、その結果コスパが悪化したと感じた会員が退会する。

Netflixのビジネスモデルが逆方向に回るネガティブ・スパイラルが起きてしまった。

そのスパイラルを打破するために、制作費を回収し、会員を増やす低価格広告プランが必要になったのだ。

Netflixだけの問題?

低価格広告プランはNetflixだけではなく、Disney+も用意している。それ以外の動画配信サービスも追従する姿勢を見せている。

動画配信サービスは他社と差別化するにはオリジナル作品を用意しないといけない。そのために会費を集め続けないといけないので、低価格広告プランが必要になる。

日本やアメリカでは、物流特典を含めたAmazon Primeが人気で、Netflixは「付け足し」モデルとして人気を博してきた。だが、ここでみてきたように会員数減少という逆回転が始まると、そのモデルは一気に崩壊へ向かっていってしまう。

Disney+という強力なライバルが出てきたのも大きい。Disney+は、ディズニー、ピクサーなど数多くの独自コンテンツ資産がある。またテーマパークや映画など別の売上が大きいのでオリジナルコンテンツの製作費も潤沢にある。

基本的に動画配信サービスしか売上がないNetflixにとって、Disney+は強力なライバルだ。Disney+も対抗して低価格広告プランを用意しているらしいが、より必要としているのはNetflixだろう。

低価格広告プランは、スタンダードプランの半額ぐらいだと予想されているが、広告出現の頻度はまだ明確になっていない。金額と広告頻度がユーザーにとって絶妙なバランスを維持できていれば、Netflixは再び会員数が増えて、会費を製作費に使えるポジティブサイクルが復活する。

ただ、値下げが限定的で、広告がウザいほど多いとユーザーの満足度は低下し、ネガティブスパイラルを止められなくなる。

決算が悪化して以来、Netflixはコスト削減に躍起で、制作費も制限されていると聞いている。今まで潤沢だった「Netflixマネー」が突然消滅して、驚いている日本人関係者も多いらしい。映画並みかそれ以上のコンテンツを妥協なく制作するNetflixのコンテンツ制作に対する姿勢は、日本だけではなく世界のエンターテイメント業界に好影響を与えてきたと思う。以前のような制作ができるように、低価格広告モデルには是非成功してほしいところだ。そのためには、ユーザー志向に立った緻密なバランス感覚が求められる。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
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