好調な任天堂
任天堂の第2四半期は、売上が前年同期比プラス14%、営業利益がプラス53%の伸びとなった。Nintendo Switchの販売台数が伸びているのが主な理由だ。
Liteの貢献
2019年8月に発売したばかりのNintendo Switch Lite(以下、Lite)が第2四半期で販売した時期は短いが、Nintendo Switch(以下、Switch)全体の20%がLiteだそうだ。
任天堂のレポートでは、Liteを購入したうちの57%が新規購入で、43%が2台目の購入だそうだ。新規購入者は以前より女性の比率が多いということだ。
1万円安いLiteを発売した理由は、2台目需要の喚起が主だ。一家に一台から、ひとり一台売るために、安価なLiteを投入した。
半分の顧客が新規購入ということは、この値段なら買ってもいいと思う新規需要を喚起したとも言えるし、一万円高いSwitchの需要を食ったとも言える。
Switch全体の販売台数は伸びているので、いまのところLiteの投入は成功と言える。
興味深いのは、Liteの販売比率が国内と海外で2:8な点だ。大画面で遊ぶのを好む海外ユーザーはモバイル機よりも据え置き機が売れるのが定説だったが、欧米で子供向けにLiteが売れているのだろうか。
ソフト日照り問題を解消
任天堂のソフトの売上も前年同期比プラス53%と、ソフト分野も好調だ。「スーパーマリオメーカー 2」「ファイアーエムブレム 風花雪月」「ゼルダの伝説 夢をみる島」と継続的に新作を投入したことが売上に繋がっている。
Wiiで起こったようなソフト日照り問題は現段階では起こっていない。爆発的にヒットしたWiiだが、めぼしい新作ソフトの供給が続かず、ブームは急速に失速することとなった。
Wiiの反省から、Switchでは計画的に自社のソフトを任天堂は開発し、供給してきた。
今後も、11月にポケモン、3月にどうぶつの森の新作を発売する予定だ。
オンライン販売も伸長
ダウンロード販売とNintendo Switch Onlineのおかげで、デジタル売上高は前年同期比プラス83%だった。毎月課金されるNintendo Switch Onlineは、ソニーの先例をみてもわかるとおり、今後も売上へ継続的に貢献するだろう。
現段階では、Appleが開始した定額ストリーミングゲームサービスが影響を与える兆候は見当たらない。
死角がないように見える任天堂の課題
ハードとソフトが両輪となって売上が伸び、オンラインサービスも成長してきている。一見、任天堂のビジネスは好調そうに見える。
Liteは3DSの買い替え需要をとらえ、ポケモンとどうぶつの森と成功がほぼ確約されているタイトルが控えている。
巨大市場である中国への参入も計画されている。国内では任天堂初の直営ショップ、来年にはUSJの施設がオープンと、話題に事欠かない。
順調に見える任天堂の課題はなんだろう。
ひとつは娯楽時間の取り合いだ。サブスクリプションはゲームだけではなく、映画と音楽の世界で伸びて、標準化してきている。NetflixとAmazon Prime、Fuluに続いてAppleとDisneyが参入した。Netflixは多額の資金を投入し新作を次々と発表している。Appleは満を持してApple TV+を開始して、Netflixに負けないように今後も新作を発表し続けるだろう。
映画鑑賞もゲームで遊ぶのにも時間が必要だ。娯楽に費やせる時間には限度がある。映像コンテンツを消費する時間が伸びれば、ゲームで遊ぶ時間が短くなる。
もうひとつは、新作ゲームの開発だ。ゲームの売上は伸びているが、多くはリメイクやシリーズ物だ。期待されているポケモンやどうぶつの森も過去の作品のシリーズ物だ。また、リメイクの開発も活発に行われている。
これらが示すのは、新しい体験の減少だ。過去のヒット作もいつか飽きられる。ゲームに人々が求めるのはワクワクした新しい体験だ。ゲームがマンネリ化してきたら、ユーザーはゲームから離れる。
任天堂もその懸念は理解していて、ニンテンドーラボやリングフィットアドベンチャーという新たな体験が得られる新作を発表しているが、大ヒットには至っていない。新たな周辺機器を用いる手法はWii Fit以来の任天堂の伝統でもある。
人はいつか飽きる。飽きる前に、新たな体験が得られる革新的なソフトを開発できるかどうかが、任天堂の2つ目の課題だ。