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楽天三木谷社長が主張する「送料込み」をあえて擁護してみる

楽天の「送料込み」

報道されているとおり、楽天は3月18日から購入額が3980円以上の場合は「送料込み」の価格を表示するように全テナントへ要請している。2月13日以前は「送料無料」にすると主張していたが、送料は無料ではなく「表示価格」に含まれるのだから、「送料込み」という表現に変えた。表現は変わっても送料を強制的に店舗側が負担する構図に変わりはない。

一部の楽天加盟店が不満を言っている点は「送料無料」という表記ではなく、「送料+価格」の表示価格にされることだし、その独善的な決定が独占禁止法違反に当たる疑いあると2月10日に公正取引委員会が楽天社内に立入検査を行っている。

「力の弱い個人商店いじめだ」「送料込みにしたいなら、楽天が一部送料を負担すべき」だという声がネットでは大きいようだ。

今回の決定は加盟店との協議もなく、楽天が独断で決めたようで、その手法は批判されてしかるべきだ。

だけど、あえて今回の「送料込み」を肯定的に考えてみたい。

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わかりづらい楽天の表示価格

楽天が今回の措置を決めた背景にはAmazonの脅威がある。外資のAmazonは日本国内でも楽天に勝る成長率で伸びている。このままでは、Amazonに日本の通販市場を独占されかねない。Amazonに次ぐシェアをもつ楽天の危機感は相当なものに違いない。

楽天が着眼した自社ビジネスの課題は「商品価格」に送料が含まれていないので、店舗ごとの比較が難しい点だ。

試しに楽天サイトでAirPodsを検索してみると、同じ製品なのに商品価格がバラバラに表示される。一見、左の店舗が一番安く見えるが、左の店舗は送料が1,280円で、右の店舗は送料0円、送料とポイントをあわせた「実質価格」で比較すると右の店舗が一番安い。

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送料を高くすることで「商品価格」を低く見せることがでてしまうのは不公正だし、消費者にとっても不利益だ。

楽天が「送料込み」にしたい一番の理由は、ここにある。送料のルールを統一すれば、店舗ごとの公正な競争ができ、消費者も商品を選びやすい。

楽天が送料を払うべき?

楽天への批判に「統一したいなら楽天が送料を支払うべき」という意見がある。実際は、楽天が送料負担するのは、なかなか難しい。

Amazonはプライム会員なら実質送料無料にできているのに、楽天にできないのは、Amazonと楽天のビジネスモデルが根本的に異なるからだ。

Amazonは、多くの商品を自社倉庫で管理し配送している。近年はAmazon以外の店舗からの出店も増えているが、Amazonに自社商品の管理を任せれば、Amazonプライム対象商品になり、送料は無料になる(管理費はとられる)。

楽天は、Amazonとは異なり、自社で販売するモデルではなく、別会社の店舗が楽天市場に出店する形を取る。楽天は各店舗から出店料をとり、代わりに決済などのシステムを提供している。

楽天はショッピングモールのオーナーみたいなもので、販売する商品や価格は各テナントが自由に設定する。

だから、楽天が送料を負担できる仕組みに、そもそもなっていない。楽天もAmazonに対抗して、自社物流を整備しようとしているが、現段階では楽天が管理している商品は一部でしかない。

この環境では、楽天がすべての店舗の送料を一律負担するのは難しいし、自社で管理している商品のみ送料負担するのも、価格を統一できず、元々の目的である公正な表示価格を実現できなくなる。

Amazon独占になれば個人商店は潰れる?

Amazonの寡占化が進めば、Amazonが強い力をもち、小型商店は商売しづらくなる。Amazon自体が多くの商品を販売しているので、小型商店がAmazonより安い価格で販売するのは難しい。

ショッピングモールスタイルの楽天の方が、小型店舗も商売しやすい。「送料込み」ルールに変更しても、楽天の売上が直接増えるわけではない(店舗の売上の一部は楽天の売上にはなる)。批判があっても楽天が送料ルールを強制したいのは、Amazonに対抗し、個人商店が生きる余地を確保するためでもある。

本当の問題は別にある

色々と楽天を擁護してきた。楽天の危機感は理解できるし、Amazon一択ではなく、日本発の楽天にも頑張ってほしい。

ただ、価格表記が統一されていないのは確かに選びづらいが、選びづらい根本的な要因は同じ商品が複数並ぶことだ。Amazonに慣れてしまうと、検索して同じ商品が複数表示されるだけで、選ぶ意欲を失ってしまう。検索の精度も楽天の方が甘いので、余計にストレスがたまる。

複数店舗が出店するビジネスモデルだから仕方がないとも言えるが、同一商品をひとつの表示にまとめることぐらいはできる。店舗から広告を取りづらいデメリットはあるが、その売上を減らしても、選びやすく、買いやすいサイトを作るべきだ。

それがAmazonに対抗するために、楽天が最初に行うべきことだと思う。

 

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