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楽天モバイルによるプラチナバンドの要求が妥当か考える

プラチナバンドが欲しい!

総務省のタスクフォースで楽天モバイルが、からいわゆるプラチナバンドを割譲するように他社へ主張した。プラチナバンドとは、800MHz・900MHz帯のいわゆる繋がりやすい周波数帯のことで、楽天モバイルが屋内などで接続性を改善するには、ぜひ必要な周波数帯だが、現在は、他の3社が使用している。

引用:総務省 携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第10回)

公平な競争のために、プラチナバンドが必要だという楽天モバイルの主張には、NTTドコモなど3社は反対の姿勢を崩していないが、総務省の意向もあり仕方がないと諦めているように見える。移行の争点は移行期間と費用だ。

楽天モバイルは、移行期間が1年、費用は移行元である3社が負担すべきとしている。NTTドコモは10年の移行期間と費用は移行先である楽天モバイルが負担すべきと主張しており、楽天モバイルの主張と真っ向からぶつかっている。

楽天モバイルの主張が妥当なのか考えてみます。

楽天モバイルの主張

楽天モバイルは公平な競争のためにプラチナバンドが必要だと主張している。楽天モバイルの周波数は他社の約6分の1なので、公平性の観点から再割り当てが必要だとしている。

他社3社が3Gなどに利用している周波数帯を割譲して欲しいというのが楽天モバイルの提案だ。

再割り当ての周波数帯を1年以内に利用開始したいとしている。

一年で移行できる根拠として、最も作業に手間がかかる全国のレピータ交換は半年で終えられるとしている。

レピータ交換と共に手間と作業時間がかかるフィルタの交換は不要としている。しかし、、他社と共有する場合、他3社はフィルタ挿入が必須としているので、本当にフィルタ交換が必要なのかは議論の余地があるとしている。

移行元である既存免許人に原状回復の必要があるとして、移行費用は移行元である3社が払うと楽天モバイルは主張している。ざっくり例えれば、土地を他社に譲渡するなら更地で返せと言っているようなものだ。

NTTドコモの主張

これに対して、3社の代表的存在であるNTTドコモは、周波数帯の有効利用の観点でプラチナバンドの割譲には応じるが、既存ユーザーに影響を与えない方法が望ましいとしている。

他社電波と干渉しないためにフィルタ挿入は必要だとしており、楽天モバイルの主張と真っ向から対立している。

5Gへの移行に作業員とリソースを投入する必要があるため、ユーザーに影響を与えないように移行するには10年の期間が必要だと主張している。

費用については、利用できる周波数帯が減る移行元が支払うのはおかしいとNTTドコモは表明している。

双方の主張の相違点は?

以上が、楽天モバイルとNTTドコモの主張だ。

周波数帯の割譲については、NTTドコモもある程度は納得しているようではある。他2社も色々と注文はつけているが、おおむね同意している。

フィルタ挿入については、楽天モバイルも必要性は認識しているが、現在の楽天モバイルの携帯電話通信網にフィルタを使っていない手前、まずは議論が必要だとしている。フィルタがないと他社通信網との干渉が起きて、そもそもの目的の一つである周波数帯の効率的な運用が妨げられる危険性がある。

楽天モバイルはフィルタ挿入が必要でも、影響がある基地局に限定し、必要な範囲を楽天モバイルが決定するとしている。またそれ以外の基地局の先行移行も想定している。

フィルタ挿入の有無は、移行期間に影響してくる。

楽天モバイルが主張する1年での移行はフィルタ挿入がないことを想定しており、他社の10年とは大きな乖離がある。他社は目下の重点課題である5Gの拡張にリソースを割いているので、プラチナバンドの移行は容易にできないとしている。楽天モバイルの拡大と、5Gのどちらが重要なのか暗に説いているように思える。

費用負担については、KDDIなどが過去の事例から移行先が負担すべきとしているのに対し、楽天モバイルは、「莫大な利益がある3社が支払うべき」としている。ドコモは真逆で「利益が減る移行元が負担するのはおかしい」と主張している。

両者の主張を見てみると、真っ向から対立しているようではあるが、現場レベルでは妥協点は見られそうだ。必要な基地局のみフィルタ挿入を行い、作業量を軽減し、できるだけ早く移行を終える。「1年でできる」とは楽天モバイルも本気では考えていないようで、実際は数年単位で完了すると思っている節がある。だが、10年の移行期間を待っている余裕は楽天モバイルのはないだろう。

次の争点の費用負担は、対立してそうだが、お金の話は、最終的に折半にするなどの交渉はできそうだし、両社ともその余地を残しているように見える。

そうなると、論争のポイントは、移行をいかに迅速にできるかに絞られる。

楽天モバイルの主張は妥当か?

公平な競争が必要という楽天モバイルの主張はある程度納得できる。ただ、国民が望むのは競争そのものではなく、各社が切磋琢磨することで、安くて良質なサービスが提供されることだ。

そのためには、楽天モバイルが安くて良質なサービスを提供できることを証明しないといけない。先日KDDIが大規模な回線障害を起こしたので、キャリアが安定したサービス提供が可能なことに注目が集まっている。安定したサービスとは回線の維持だけではなくサービス内容も含まれる。

1GB未満無料のサービスをわずか1年半で撤回した楽天モバイルに対しての批判は根強く、今後本当に安くて安定したサービスを提供できるのか疑問がある。

現在においても3GB未満の利用では、他社の方が楽天モバイルより安い事例もある。もちろん、アプリによる通話無料や定額で無制限に利用できるのは大きな特徴だが、ahamoなどの低額なプランが他社より提供されている現状、ユーザー数が多い3GB未満にも、安いプランを提供できなければ、楽天モバイルを積極的に活用しようとは思わないし、莫大な費用をかけて既存ユーザーに迷惑をかけてまで楽天モバイルの回線を増やすことに国民の理解は得られないと思う。

携帯電話事業者はすでに3社あり、ある程度の競争できる環境は保たれている。世界でも4社の携帯電話事業者がある国はそれほど多くなく、2社ないし3社が多い。

楽天モバイルにとって不幸なのは、携帯電話の価格は硬直化していたはずなのに、政府の圧力により値下げされたプランが実施されてしまったことだ。支払額を下げたいユーザーはahamoなどに移行してしまっている。また価格を下げただけでは、総合的なサービスを重視する多くのユーザーは移行しないことも明らかになった。

政府の圧力という自然ではない方法ではあるが、携帯電話の料金は下がってしまい、料金を下げるという楽天モバイルの主張が弱くなってしまった。SoftBankのLINEMOのミニプランなら楽天モバイルより価格が安い。

また、楽天モバイルは黒字化して、安定した経営ができることを証明する必要がある。国民の財産である周波数帯をもらっても赤字だから使わない、または他社に売却するのでは話が違う。

公平性の観点から、プラチナバンドの要求自体は妥当といえるが、移行のためには莫大な費用と手間がかる。そこまでして市場に参入させるメリットがあることを、楽天モバイルは料金プランと経営面で見せなければならないと思う。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
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