ソフトバンクのahamo対抗プラン
ドコモのahamoに対抗するプランをソフトバンクが発表した。2021年3月から「20GBの月額2,980円」の新しいプランをLINEブランドでスタートする。
ソフトバンクの系列会社であるZホールディングスと経営統合することが決まっているLINE株式会社の格安SIM子会社「LINEモバイル」をソフトバンクが吸収し、新プランはLINEブランドの名称を使うそうだ。
ahamoとの比較と今後の展開を考えてみます。
その手があったか
ahamoに対抗するためにソフトバンクはサブブランドを活用すると思っていたが実店舗を多く抱えるワイモバイルブランドでオンライン専用プランを始めるのは難しいと以前書いたけど、ソフトバンクが考えたのはLINEブランドの活用だった。
- 大容量プレミアムプラン:ソフトバンク
- 小容量プラン:ワイモバイル
- オンライン専用格安プラン:LINEモバイル改め「SoftBank on LINE(仮称)」
というように、ブランドを分けたのがソフトバンクのahamo対抗策だった。
なるほど、この手があった。LINEモバイルをソフトバンクに吸収してしまえば、「ソフトバンク本体が値下げした」と言い切れる。確かに以前ソフトバンクは格安SIMのLINEモバイルを活用すると発表していた。
総務省の強権
今回のソフトバンクの対抗策を見て感じたのは、総務大臣の意向の強さだ。サブブランドの値下げでは満足しないという総務大臣の発言を受けて、ソフトバンクはLINEモバイルの吸収合併という強引な手法で「ソフトバンク本体での値下げ」という体裁を作らざるを得なかった。
電波行政を担う総務省がキャリアの生殺与奪の権を握り、私企業の方針に口出しするというのやりすぎだとは思うけど。
ahamoとの比較
ahamoとの比較だが、月額2,980円で20GB、5分以内の通話無料、オンラインのみの受付というプランの大枠は同じだ。細かいところでは、20GB超過した場合の速度も1Mbpsで同じ、超過料金も1GBにつき500円と同じ。記者会見でも言っていたが、ahamoに対抗するためにソフトバンクがこのプランを出してきたのがよくわかる。
ソフトバンクのアドバンテージはLINEがギガフリーであることだ。LINEで消費するデータは20GBの制限外で利用できる。
ワイモバイルの寿命は総務大臣次第?
今回ワイモバイルの新プランも発表になった。3GBで1,980円と従来より値下げされたが、無料通話が含まれていない。10GBだと2,980円になるのでahamoとLINEブランドの新プランよりも見劣りする。
もちろん、ワイモバイルには店舗でサポートが受けられるメリットはあるが、多くのユーザーにとってワイモバイルのプランは割高に映るのではないか。LINEブランドの新プランがユーザーを集めるとワイモバイルの存在意義が薄れる。
それでもソフトバンクとしてはワイモバイルを存続させる必要があるのは、ソフトバンクの系列や協力企業が展開した実店舗があるからだ。いわゆる格安SIMに対抗しシェアを得るためにソフトバンクは急速にワイモバイルの店舗網を広げてきた。それができたのはソフトバンクの強力な営業力の賜物なのだが、オンライン販売との比較になるとコスト面で不利だ。それでも他社に協力してもらってきた手前、容易に手を切れない。
ワイモバイルには更なる困難が待ち受けているかもしれない。
ワイモバイルは小容量プランが主体になると説明されているが、総務大臣が「小容量プランもキャリア本体でするべき」と発言したら、どうなるのか。すでにその兆候はあり、ドコモは小容量のエントリープランを計画していると発言している。その発言の背景には総務大臣の意向があると思われる。
そうなると、今までMVNOに対抗するために展開してきたサブブランドが一気にお荷物になる危険性も出てくる。
前述した通り、総務大臣の意向で私企業の命運が左右されるのは好ましくはないが、硬直していた携帯電話料金が一気に値下げに向けて動きだすのはユーザーとしては悪いことではない。
残るはauは1月に新プランを発表すると言っている。おそらくドコモ・ソフトバンクと同様に2,980円20GBのプランになるだろう。サブブランドであるUQ Mobileでの展開はなく、au本体の新ブランドを発表するのではないか。
ドコモ・au・ソフトバンクが2,980円20GBのプランを並べて出すと、多くのユーザーが新プランに流れると思われる。
総務省にはMVNOへの回線使用料金の値下げに動いて欲しい。これがないとMVNOが死に絶えることになりかねない。