オフィスの空室率が高止まり
東京都心のオフィス空室率が6.47%(2022年12月)と上昇した。コロナ以前は2%前後だった空席率がコロナ禍以降では6%で高止まりを見せている。
コロナ禍による不景気が原因というより、テレワークが一般化してオフィス需要が変化したのが原因と思われる。
コロナ禍で増えたテレワークは、コロナが落ち着いてきた昨年以降、企業の対応が分かれている。テレワークをやめてしまった企業もあれば、完全にテレワークへ移行してオフィスを廃止した企業もある。
テレワーク時代にオフィスは不要かどうか考える。
テレワークのメリット
テレワークのメリットはオフィス賃料の節約の他に、従業員としては通勤時間の短縮、家事や育児との両立などが多い。特に都会では通勤時間が長く、体力も消耗する。テレワークによって無駄な時間を減らせるのは大きい。
テレワーク勤務だと、月曜日の朝、「明日からまた仕事か」という心理的障壁が低くなる気がする。
荷物の受け取りとか、ちょっとした所用で有給を取らなくても済むようになるメリットもある。
テレワークのデメリット
デメリットのひとつは生産性だ。テレワークをしたことがある人なら、勤務中に自宅でサボった経験がある人も多いと思う。ちょっと家事をしたり、ネットを観たりしているはずだ(しているよね?)。
時給制ではないから、多少サボっても成果を出せば良いという考えもあるが、仕事があればこなすが、テレワーク下で自ら新しい企画を作ろうとする意欲が減退している人もいる。一人で働いていると、知らず知らずのうちに受け身になりがちだ。イーロン・マスクは生産性の低下を理由にTwitter社員のテレワーク禁止を命じた。
もう一つのデメリットが、社員間のコミュニケーションの欠如だ。テレワークだと、いわゆる「無駄話」が減り、仕事に直接関係する人としか交流しなくなる傾向がある。オフィスで偶然すれ違うこともなく、食事を共にすることもない。無駄話から新しいアイディアが生まれることも減る。
他社員とのコミュニケーションが単調になりがちになり、円滑な人間関係を構築できずに、つまらないことで諍いが起きる。
コミュニケーションの欠如は、現代のITをもってしても埋まらないようだ。現に、最新IT企業のAppleもAmazonもテレワークの日数に制限を設けている。
新しい技術やサービスを生み出すには、密接なコミュニケーションが必要だとAppleのクックCEOは主張している。
ゼロイチではない選択肢
テレワークにはメリットとデメリットがある。業種によっても異なるし、従業員の性格によっても変わる。大事なことは選択できることだ。完全テレワークかオフィス勤務かハイブリット型か、従業員が自分の意思で選べることが大切だ。テレワークでもコミュニケーションを取れるような仕組みをつくれれば、デメリットを減らせる。
例えば、フリースペースだけをオフィスに残して、人が集まるようなイベントを行うなど、仕掛けを作ることは可能だ。
テレワークというワークスタイルが完全に消滅することはもはやないだろう。そうなると、オフィス需要が確実に減る。新しいオフィスビルも計画されているけど、大丈夫なのだろうか。
平均賃料も下がっている。渋谷などに新しいオフィスが次々と竣工しているが、テナントが埋まらないケースが目立つ。企業が新しいオフィスに移転したら、古いオフィスに空きができる。空室率が下がらないと、オフィスビル建築だけではなく都市のあり方も変わってく可能性がある。