オリンピックとIT
開催の可否に揺れた東京オリンピックは結局無観客で開催されて、8月8日に閉会式を迎えた。コロナによる感染症対策、ガラガラの観客席、選手の熱闘が注目を集めたが、オリンピックは進化したITのお披露目の場でもある。
オフィシャルスポンサーでもあるIT企業が最新の技術を用いて、オリンピックの運営を支えてきた。
今回の東京オリンピックで、どのようなITが使われたのか見てみたいと思います。
ドローン
オリンピックで一番目立ったITはドローンだろう。開会式では1824台のインテル製ドローンが地球の形や五輪のエンブレムを夜空に映し出した。インテルはワールドワイドオリンピックパートナーを務めている。
使用されたドローンはインテルの「Intel Shooting Star」で、様々なナイトショーで使われている。オリンピックでは、平昌オリンピックに続いて二回目。2タイプあるが、開会式で使われたのは「PREMIUM DRONE」だ。
ドローンは、開会式だけではなく、サーフィンや自転車など屋外での競技の撮影にも使われていた。おそらく、東京オリンピックはドローンが最も使われたオリンピックになっただろう。
ロボット
オリンピック中継を観ていると、走り回る小型ロボットが目につくことがある。これはトヨタ自動車のFSR(Field Support Robot)だ。ラグビーのボールを運んだり、円盤投げなどを回収したりしている。
カメラやレーザーセンサーで対象物を捕捉し、その地点まで自立走行が可能だ。
引用:オリンピック公式サイト
ロボット実況
ネット観戦していると、ロボット実況・字幕が流れることがある。NHKによると、事前に準備されていたテンプレートをもとに実況テキストを自動的に作成し、ロボット字幕と合成音声実況に変換し、画面に合わせて配信していた。
抑揚は少ないし、ただ情報を流しているだけではあるが、口調は流暢だ。現在の競技の状況をリアルタイムで伝えてくれるが、画面の状況をAIが把握しているわけではなく、人間が情報をインプットして文章を生成しているように思える。
5G
当初、東京オリンピックは5G普及の場の予定だった。ところがオリンピックが1年延期され、無観客になると、5Gの活躍の場が表立ってはなくなってしまった。
観客がいなければ5Gを使う人もいない。中継に5Gが使われているということだが、「5Gだからできた」という実感に乏しい。5Gはキラーコンテンツがないまま、粛々と普及していくのだろう。
無観客で消えたITの活躍の場
本来オリンピックではもっとITを活用されるはずだった。観客の誘導をするロボットなどが用意されていたようだし、5Gも競技場で利用できるようになっていた。
だが、その状況をコロナが変えてしまった。観客がいなければ、5Gを使う人もいない。
ITのお披露目という点では、いささか残念なオリンピックになった。だが、今後感染症が完全には収束せずに、ワクチン接種をしても変異種に怯える時期が続くようであれば、人との接触を減らすためにロボットが活躍する可能性はあると思う。
競技場を走り回るロボットやドローンはその可能性を見せてくれたと思う。