新macOSは「Catalina」
WWDCのキーノートで新しいmacOS「Catalina」が発表された。Appleの4大OSの中でmacOSだけが唯一愛称を与えられ、最近はカルフォルニアの名前から使われている(以前はネコ科の動物だったが、ネタが尽きた)。今年のCatalinaは、カルフォルニア州南部の小島から名を取られた。
今まではダジャレがあったり、フェイク画像があったり、名称の発表に時間をかけていたが、今回はあっさり発表された。
それでもmacOS伝統の愛称はなくならない。特別だけど、時間はかけられない。このことがAppleの中のMacの立ち位置を象徴していると思う。
WWDCで発表されたこと、そこから予想できる今後のmacOSについて記します。
iTunesの分割と新たな名称問題
Catalinaの説明の冒頭で、iTunesの歴史について語られた。iTunes拡大の歴史はAppleの歴史でもある。ミュージック、映画、iPod・iPhoneのシンク、Podcastと次々に追加されて行ったiTunesは「なんだかよくわからないアプリ」になってしまった。
プレゼンをしたクレイグはメールや予定をiTunesでみたい? とボケて、iTunesの解体を宣言した。
Appleの回答は、3つのアプリへの分割。iTunesの機能は、ミュージックを管理する「Apple Music」、ポッドキャストを管理する「Apple Podcasts」、映画・TV番組を管理する「Apple TV」が受け継ぐ。
iPhoneの同期機能は、iPhone単体でアップデートができるようなり、バックアップデータや音楽ファイルも全てクラウドに保存できるようになった現在では優先順位が低くなった。
巨大化したiTunesの分割自体は結構なことだが、ややこしいのは名称だ。ミュージックアプリの名称「Apple Music」はAppleのストリーミング音楽サービス「Apple Music」と同じだ。Apple TVは、ハードウェアのApple TVと同じ名称で、この秋に開始する定額ビデオ配信サービス「Apple TV+」とも名称が似ている。
アプリもハードウェアもサービスも用途が同じなら、同一名称をつけるのが、Appleの新しい命名法則なのだろう。
ただ、さらにややこしいのは、定額ミュージック配信サービスの名称はプラスがつかない「Apple Music」なのに、定額ビデオの配信サービスにはプラスがつく。ちょっと矛盾している。
いずれ、この辺りの名称も整理されるのだろうか。
iPadをサブディスプレイにできる「Sidecar」
サードパーティ製のアプリは以前にもあったが、これからはOSがサポート。今やiPad最大のウリになったApple Pencilにも対応しているので、iPadにApple Pencilで書き込んだ文字がMacの画面に即座に反映される。漫画家さんやイラストレーターの方には朗報だろう。
Macの将来
今回のWWDCは「独立」がテーマだとする論調が目につく。iOSからiPadOSの独立、単体で動作できるようになったApple WatchはiPhoneから独立したように見えて、確かに「独立」が一つのキーワードになりそうだ。
ただ、もともと全てのOSと基となるMacは独立ではなく、他のデバイスとの連携を進めている。
自分たちの原点であるMacはなくさない、とAppleは何度も公言する。macOSはAppleにとってそれだけ重要なOSだ、特別に愛称をつけるぐらいに。
一方で、macOSの進化の幅は小さい。今回のWWDCでもmacOSの発表する時間は短かった。
今回、デベロッパーツールが提供され、iPadアプリをMacに移植できるようになった。今のMacの課題の一つはmacOS向けのアプリが少なくなってきていることだから、iPadのアプリが簡単に移植できるのはmacOSの延命に繋がる。
その一方でiOSから独立したiPadOSは、次世代パーソナルコンピュータ向けOSを目指す。
おそらくAppleはMacをやめるつもりはなく、iPadOSとmacOSの新旧二つのパーソナルコンピュータ向けOSを並行して販売していくのだと思う。
iPadへの過度な傾斜は行わず、単価が高いMacも延命していくはずだ。開発管理コストは二重にかかるが、MacとiPadの両方が売れるのはAppleにとって悪い状況ではない。
いずれはクラムシェル型のiPadが登場し、Macでできることの多くがiPadでできるようになり、Macのユーザーの多くがiPadに移行する時が来るかもしれない。あるいは、クリエイターの多くがMacに止まるかもしれない。ユーザーがどちらを選択してもいいように、Appleは対処している気がする。
Macの運命はユーザに委ねている。