Yahoo!・LINEが経営統合?
Yahoo!の親会社であるZホールディングスの下に、Yahoo!とLINEが経営統合する報道が流れた。
両者の株価が上昇し、この経営統合を市場は好感しているようだ。
ソフトバンクグループを率いる孫さんは、どうしてLINEを経営統合しようとしているのか考えます。
<2019/11/18追記>
本日、Yahoo!とLINEは経営統合に合意したと発表しました。
統合のメリット
孫さんが目指しているのは、国内プラットフォームの制圧であることは間違いない。ZOZOやYahoo!ショッピングなどのEC市場、携帯キャリア事業、電子マネーのPayPayと数多くのサービスを手中に収めているソフトバンクグループに欠けているサービスのひとつが、メッセージアプリだ。
言うまでもなく、LINEはメッセージアプリで国内トップシェアをもつ。会話する相手が必要なメッセージアプリの特徴として、市場が寡占化しやすく、国内のスマートフォンの多くにはLINEアプリがインストールされている。
LINE社は、メッセージアプリを足掛かりに電子マネーの「LINE Pay」、LINEニュース、LINEモバイルなどの多くのサービスを広げて、「LINE」アプリをプラットフォーム化している。
多くのユーザーを抱えるLINEを手に入れれば、LINEから自社のECサイトへ誘導できる。EC市場でAmazonと楽天に差をつけられている現状から脱するには、彼らに匹敵するユーザーを誇るLINEはとても魅力的だ。
LINE PayやPayPayなど両者の間では多くのサービスが競合しているので、この経営統合が失敗するという人もいるが、競合したサービスを合わせればより多くのシェアを握ることができる。
たとえば電子マネー市場では、LINEはLINE Payを、Yahoo!はPayPayを所有している。
LINE Payは、LINEユーザーの多くをユーザーとしているが、PayPayはソフトバンクの営業力を使って多くの加盟店舗を有する。
この2つのサービスが統合されれば、乱立する電子マネーで絶対的なシェアを握ることになるだろう。
若者に強いLINE
両者のユーザー層の違いも経営統合に大きく寄与する。Yahoo!は中高年層に強い。インターネット黎明期から職場を中心にYahoo!は利用されている。
一方、LINEはメッセージアプリとして、通話料金不要のコミュニケーションツールとして若年層に広まった。
年配の人間はYahoo!でニュースを読むが、若者はLINEでニュースを知る。この2つを融合できれば、多くのユーザーを集めることが出来る。
様々なビジネスエリアで、経営統合のメリットがあると予想できる。
システム統合は可能か?
懸念点もある。ひとつはシステムの統合だ。競合しているサービスを統合できれば市場で優位に立てるが、トラブルを起こさずシステム統合するのは難易度が高い。みずほ銀行のシステム統合は数十年の歳月と多額の資金が必要だった。
複雑怪奇な銀行系のシステムとその他のシステムの違いはあるが、複数ある競合サービスを統合するには、かなりの時間が必要だ。時間がかかれば、統合メリットが薄まる。
異なる社風
もうひとつの課題は、経営権だ。報道されている内容では、ソフトバンクグループがLINEを買収するわけではなく、Yahoo!とLINEを傘下にしたZホールディングスの株をソフトバンクとLINEの親会社NAVER社で分け合うそうだ。
ソフトバンクの強みは、孫正義の強大な権力により、素早い指示できることだ(弱みでもあるが)。PayPayが多くのシェアを獲得できたのは、孫さんの指示の下ソフトバンクグループが一丸となって取り組めたからだ。
一枚岩のソフトバンクグループに、多くの力があるLINEが加わることで経営に混乱が生じる可能性がある。
インターネット企業の中では老舗であるYahoo!社と新興のLINE社では社風も随分違う。
縮小する国内市場
最大の懸念は、両社とも大きなシェアを握っているのは、日本国内がメインだということだ。LINEは日本では圧倒的なシェアを握っているが、海外ではほとんど使われていない。
Yahoo!社も同様で、ポータルサイトとして強いのは日本だけだ。両社が統合されれば、日本国内では強い力をもつが、少子化の日本市場は今後どんどん縮小していく。
Yahoo!とLINEの統合で、AmazonやFacebookなどのグローバル企業に対抗できるというが、対抗できるのは国内だけで、世界市場へ討って出られるとは限らない。
LINEよりは世界各国で使われているメッセージアプリ「Viber」を買収した楽天だが、楽天ECサイトを全世界で伸ばす足がかかりになっていない。
今回の経営統合が成功すれば、国内市場は獲得できるだろう。その勢いで海外へ進出できるかが、経営統合が成功するかどうかの長期的な鍵となる。