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「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

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新iPhone XSとiPhone Xの違いは微妙。なぜAppleはフルモデルチェンジを行わなかったのか

前モデルと変化が少ないiPhone XS

新型iPhone XSは、前モデルであるiPhone Xと外観もスペックも非常に似ている。違いを見つけることのほうが難しいぐらいだ。

あまりの変わらなさに毎年iPhoneを買い替えてきたのに今年は躊躇する人も多いと聞く。

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iPhone 7との外観の違いは上下のアンテナのみ

iPhone XとiPhone XSの相違点

  • A12 Bionicチップ
  • 防水機能(iPhone XSは水深2メートルで30分耐えられる)
  • 512GBモデルの存在
  • 3g増
  • 進化したボケ効果と深度コントロール
  • スマートHDR
  • ビデオの拡張ダイナミックレンジ
  • ステレオ録音
  • よりワイドに広がるステレオ再生
  • iPhone Xより30分長いバッテリー駆動時間
  • デュアルSIM
  • 予備電力機能付きエクスプレスカード
  • ギガビット級LTE

こうやって並べると、結構違いがありますようにみえるが、日本で使ってすぐに実感できる違いは、ボケ効果ぐらいだろう。

どうしてAppleがiPhone XそっくりのiPhone XSをAppleが発表したのか考えてみました。

一年での買い替え需要を軽視

熱心なiPhoneマニアは毎年買い換えるが、一般ユーザーのスマートフォンの買い替え期間は伸びる一方だ。価格が上昇し、スマートフォンの機能も劇的に進化しなくなった現状で、毎年10万円以上のお金を多くのユーザーに支払わせるのは困難だ。

多くの人は、今使っているスマートフォンに満足している。LTEのような劇的進化がなければ、一般のユーザーの食指は動かない。

日本だけの現象だが、いわゆる0円販売モデルで売りづらくなり、スマートフォンの見た目の価格が高くなったので、買い替えを躊躇する人は従来より多い。

Appleも、高価になったiPhoneのフラグシップモデルを毎年買い替える需要を期待できなくなったので、昨年のiPhone Xから買い換えるユーザーを軽視した。

iPhone XRの存在

今回の発表で驚いたことのひとつは、普及機であるiPhone XRのスペックの高さだ。液晶とOLED、シングルカメラとデュアルカメラといったハード的な違いあるのに、「できること」はそれほど多くない。

iPhone XSとiPhone XRの相違点

  • OLED
  • ディスプレイサイズ(iPhone XRの方が大きい)
  • 防水機能(iPhone XSは水深2メートルで30分耐えられる)
  • 512GBモデルの存在
  • 3D Touch
  • デュアルカメラ
  • HDRディスプレイ
  • iPhone 8 Plusより最大1.5時間長いバッテリー駆動時間
  • ギガビット級LTE

デュアルカメラではないが、片方のカメラとフロントカメラの性能はiPhone XSと変わらない。多くの機能の相違はディスプレイの違いからきている。ディスプレイサイズやバッテリー駆動時間など、iPhone XRの方が優れている部分も多い。

これでiPhone XRはiPhone XSより3万円安い。

iPhone Xからの買い替えは期待できないので、他の旧モデルからの早期の買い替えを促すために、iPhone XSより安価で似たスペックのiPhone XRをAppleは用意した。

iPhone XSがiPhone Xより売れなくても、iPhone 8より単価が高いiPhone XRが売れれば全体の製品単価は上がる。

Appleとしては、iPhone Xからの買い替えよりも他のモデルから iPhone XRへの買い替えに注力した結果、iPhone XSがiPhone Xと似たスペックになったのだ。

iPhone XS Maxの存在

iPhone XSはiPhone Xと似たスペックだが、iPhone XSにはiPhone XS Maxがある。iPhone 8と同等サイズにiPhone史上最大の6.5インチディスプレイを埋め込んだインパクトは大きい。

昨年はiPhone XのPlusモデルがなかったので、やむなくiPhone 8 Plusを購入した大画面を好むユーザーも見た目が新しいiPhone XS Maxに買い換えたくなるに違いない。

iPhone XS Maxは従来のPlusモデルと異なり、標準モデルよりディスプレイサイズが大きいだけが相違点なのも、従来モデルのユーザーをターゲットにしているからだ(だから、PlusではなくMaxなのだ)。

Sモデルだから

今までのiPhoneは隔年ディスプレイサイズが拡大するフルモデルチェンジを繰り返してきた(例外はiPhone 6sからiPhone 7)。その間の年は、新たなインターフェイス機能を付与したSモデルを発表してきた。

過去のiPhone”S”モデル3機種の新機能

  • iPhone 4S Siri
  • iPhone 5s Touch ID
  • iPhone 6s 3D Touch

今回のSモデルでは、インターフェイスの変更がない。一時期、新型iPhoneがApple Pencil対応が噂されたが、結局実現しなかった。火のないところに煙は立たないと考えると、Apple Pencil対応を新たなインターフェイスとしてiPhone XSに導入しようと計画していたが、何らかの理由により断念した。

その結果、iPhone XSは新たなインターフェイスがない初めてのSモデルとなった。

旧端末性能低下問題の影響

AppleがiPhoneの旧モデルの性能を意図的に低下させた問題が昨年発覚した。バッテリーへの影響を考慮したというのがAppleの説明だが、黙って行っていたのは誠実とは言えない。

その批判を受けて、Appleは、旧モデルでもより良いパフォーマンスが発揮できるように最新のiOS 12を改良した。

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旧モデルでも快適に使えるように強調せざるを得ないため、直近モデルからの買い替え需要をアピールできなくなった。

まとめ

iPhone XSを前モデルとあまり代わり映えしない製品になった理由は、iPhone XSだけではなく、iPhone全体の戦略に基づいた決定だ。iPhone XSだけを見ていても、Appleの戦略はわからない。

前モデルからの買い替え需要が予想されるiPhone XS MaxとiPhone XRを用意することで、iPhone全体の製品単価を上げ、総売上も伸ばすのがAppleの戦略だ。

スマートフォン市場が飽和状態に達しつつあり、販売台数を大幅に伸ばすことが難しい。

また、5Gが登場するまで、目立った新機能も見えてこない現状では、単純な買い替えを待っているだけではk製品単価を上げるのも難しい。

そんな中でも、Apple全体の売上の7割を占めるiPhoneの売上を伸ばすために、Appleはこの戦略を採用した。この試みが成功するかわかるのは、次のAppleの決算だ。