iTunesって変なアプリ
iTunesは何のソフトか? と問われれば音楽を管理するソフトウェアだという人が多いだろう。実際はiTunesには多くの機能がある。現状のiTunesの機能は、音楽だけではなくムービー、TV番組、Podcast、オーディオブックの管理再生、iOSデバイスのバックアップなど多岐にわたる。
そのiTunesがまもなく解体され、名前も消滅するかもしれない。
iTunesの歴史
2001年、iTunesのミュージックプレイヤー「iPod」の音楽転送ソフトとして登場した。当初はMac版だけリリースされて、Windows版はなかった。Windows版がなかった理由の一つは、iTunesの優れたインターフェイスを武器にWindowsからMacへ乗り換えるユーザーを増やすのが目的だったからだ。
ただ、音楽管理するためにiPodに同梱されたWindows版のソフトウェアの出来が良くなかったので、Windows版iTunesが開発されることになった。
その後のiTunesの歴史はAppleの事業領域の拡大の歴史だ。
iPodに写真アルバムや動画再生の機能が追加されると、iTunesにもその管理機能が付与された。
iPhoneが2007年に登場すると、iPhoneのバックアップ・リストア機能もiTunesに追加された。
どうして別々のソフトウェアにしなかったのだろう。
今でこそiOSのバージョンアップはiPhone自体で行うのが一般的になったが、以前はiTunes経由でしかOSをインストールできなかった。初代iPhoneのメイン機能は電話、インターネットとミュージックだった。
iPodから派生したiPhoneは、音楽再生と楽曲の管理が非常に重要な機能だったので、楽曲を転送するためにiTunesをiPhoneの管理ソフトウェアとするのは自然の流れだった。
もうひとつ、これは憶測だけど、Windows版の存在が大きかったと思う。iTunesが登場した当時、WindowsにインストールできるAppleのソフトウェアはiTunesだけだった(細かいソフトウェアはいくつかあったが)。iPod、iPhoneの浸透により、多くのWIndowsにiTunesがインストールされるようになった。
当初のWindows版はお世辞にも出来は良くなく、AppleのWindowsソフトウェア開発能力が低かったことが窺われる。Appleは苦労しながらWindows版の改良を進めた。
iTunesに多くの機能が付与された理由に、AppleがiTunesの他のWindowsソフトウェアを開発する余裕がなかったのもあるのではないだろうか。
こうして、iTunesは複数の機能をもつキメラ的ソフトウェアとなった。
iTunesの解体
膨張を続けてきたiTunesは解体の方向に動き出している。すでにiPhoneでは音楽再生管理ソフトは「ミュージック」と名を変え、iTunesは「iTunes Store」として音楽映画の購入ソフトに名を残すだけになっている。
そのiTunes Storeの映画購入レンタル機能も、今年登場した「TV」アプリでも可能になった。
定額音楽配信サービス「Apple Music」の登場で音楽を買う機会も減ってきている。今後定額ストリーミングサービスである「Apple TV+」が登場すると、iTunes Storeを使う機会はさらに減るだろう。
次期macOSではiTunesが「ミュージック」と「Podcast」アプリに分離するという噂もある。iOSとmacOSの統合を視野にいれているAppleとしては、iPhoneとMacのアプリのラインナップを揃えたいはずだ。
今後、iTunesは緩やかに解体され、iTunesの名前は消えてなくなるかもしれない。それでも、iTunesがAppleの成長を支えた実績は変わらない。