第四のMNO楽天モバイル
Rakuten Miniの1円購入キャンペーンで注目を浴びている楽天モバイル。NTTドコモ、au、ソフトバンクに続く第四のMNOとして全国に通信網を敷設している。
「日本の携帯電話料金を安くする」と鳴り物入りでスタートした楽天モバイルだが、現在どのような状況なのだろう。
各社の対策を含めて見てみます。
計画通りではない契約者数
4月8日、一般向けに正式スタートした楽天モバイルだが契約者数の推移は芳しくなさそうだ。
300万人を上限に一年間通信料金無料キャンペーンと併用できる形で、今回Rakuten Mini1円購入キャンペーンを始めた。Rakuten Miniは先月まで2万円で販売していた。通信料金無料で300万人が埋まるなら、新たなキャンペーンを行う必要はないので、楽天が想定したようには契約者が伸びていないと想像できる。
以前に楽天モバイルは「700万人が損益分岐点」と言っているので、無料キャンペーンの300万人を達成してもまだ赤字だ。
300万人という数はMVNOのUQ Mobileが5年間で達成した数字なので、かなり難しい数字ではある。
しかも、今の楽天モバイルの契約者は無料キャンペーン適用者なので、楽天の売上にならない。一年後も使用してもらうためには、既存キャリアからMNPしてもらわないといけない。楽天モバイルは明らかにしていないが、無料キャンペーンの多くがMNPせずに新規契約者だと思われる。特にRakuten Miniの1円無料キャンペーン者は大部分がMNPだろう。超小型のスマホであるRakuten Miniをメイン端末にするにはかなり厳しいからだ。
無料キャンペーンで契約者を増やしても、一年後に解約者が増えては意味がない。
楽天モバイルの回線とサービスを一度試してもらえれば、便利さを実感して契約を継続してもらえると楽天モバイルは主張している。
だが、楽天モバイルへの流出を防ぐために既存MNOキャリアは対抗策を実施していている。
既存キャリアの対抗策
楽天モバイルの出現により、3大キャリアはどれぐらいの影響を受けているのか。楽天モバイルが注目を浴びている中でも、昨年の解約率は1%前後で3大キャリアの解約率は上昇していない。MVNOへの関心が高まった2017年度は1.5%ほどの解約率があったのに、楽天モバイルは今のところNVNOほどのインパクトも残せていない。
ドコモは2019年12月からAmazonと連携し、ドコモでギガプランを契約するとAmazonプライムが一年ついてくるキャンペーンを実施している。Amazonプライムの年間料金4900円分の実質値引きとなる。ドコモもdビデオなどの競合するサービスを提供しているにもかかわらず、Amazonと連携した背景には楽天モバイルの脅威があったと考えられる。
auはUQ Mobileを吸収しサブブランド扱いとした。そのUQ Mobileは新しいプランを発表した。新しいプランは、データ容量10GBで月額料金2,980円、節約モード時で最大1Mbpsの通信速度を無制限に利用できる。
楽天モバイルの有料料金と比較すると、
- 楽天モバイル:2,980円(楽天回線:無制限/au回線:5GB。超過時1Mbps)
- UQ Mobile:2,980円(au回線:10GB。超過時1Mbps)
似たようなプランになっているのがわかる。au回線だけの比較ならUQ Mobileが2倍の10GB使うことができる。楽天モバイルは楽天回線なら無制限だが、現在のところ三大都市しかほとんど利用できず、地下鉄などには電波が届いていない。
楽天モバイルのプランはシンプルでわかりやすいが、UQ Mobileにはあまったデータ容量を翌月に繰越したり、家族回線には500円の割引などの特典がある。
楽天モバイルは自社アプリRakuten Linkを使えば通話料金は無料なので、通話が多い人にはアドバンテージがあるが、通信料金を節約するだけなら、UQ Mobileや他のMVNOも選択肢に入ってくる。
このままでは携帯電話料金の価格破壊は起きない
楽天モバイルの1サービス1プライスはインパクトはあったが、今のところ契約者数の推移に大きな変化はない。3大キャリアは、Amazonとの提携、UQ Mobileの新プラン実施と対抗策はうっているが、基本メニューの大幅値下げには踏み出していない。当初の予想よりも楽天モバイルの影響が小さいと見ているのだろう。
このままでは、菅官房長官が言っていた「携帯電話料金の大幅値下げ」は実現されない。Rakuten Mini1円購入キャンペーンは魅力的だが、キャンペーンで集めた契約者を無料期間を過ぎた一年後も継続してもらうためには、楽天自社回線エリアを広げて、楽天回線の良さをユーザーに実感してもらうことが重要だ。