初代を購入してから一年半の間、ほぼ毎日Apple Watchを身に着けている。去年の秋にはApple Watch Nike+を購入した。
Series 2になっていくつかの機能は向上し、Appleの戦略も大幅に変更された。初代ではラグジュアリーを志向していたApple Watchが、二代目ではスポーツ情報端末として生まれ変わった。
この一年半でApple Watchの戦略が大きく変更されたのだ。
Appleはウェアラブルコンピュータの開発を計画する際、高級腕時計業界に目をつけた。この世界に残る数少ないハイマージンを享受している高級腕時計に変わる高機能な時計をブランド力が高い自分らが送り出せば大きなシェアを獲得できると考えた。Appleから見たら時刻しか表示できない旧来の腕時計など化石にしか見えたのだろう。
ラグジュアリーなこの業界を攻めるために、オプション製品を極力作らず在庫を持たないようにしていた従来の戦略を変え、Apple Watchには数多くのベルトとモデルを開発した。発表会にファッション雑誌の記者を呼び、HERMESとコラボレーションしたモデルを販売、18金で100万円を超えるモデルまで用意した。
当初AppleがApple Watchを他社のウェアラブルコンピュータではなく高級腕時計をターゲットにしたためにとられた施策だ。
ところが、この試みはうまくいかなかった。ひとつの原因はIT技術の進歩である。言うまでもなくITの世界では技術革新が頻繁に起きる。最新の技術を詰め込んだ製品も翌年には陳腐化してしまう。陳腐化したものを身につけるのは”ださく”、ファッショナブルではない。すぐにださくなるものに100万円をかけられる人は少なかった。
もうひとつの理由は、Apple Watchが使いづらかったことだ。初代はスペックが低く、どのアプリを起動しても動作が遅く、使い物にならなかった。画面が小さいApple Watchを操作するよりもiPhoneを取り出したほうがはるかに効率が良かった。
ただ、わるいことだけではなかった。初代Apple Watchを販売して、Appleはいくつかのポジティブな要素も発見した。ひとつはバンドのコレクション性だ。Appleの予想よりもユーザーは複数のバンドを購入した。普通の腕時計よりもバンドが付け替えしやすいApple Watchの工夫が功を奏した。
もうひとつは、スポーツアクティビティの重要性だ。心拍数と歩数を計測できるApple Watchはジョギングなどのエクササイズする人に受け入れられた。この分野では従来ガーミンが強かったが、Apple WatchにはiPhoneと連動しメールの着信などを通知できる付加価値があった。
高級腕時計を席巻することは諦め、Series 2ではスポーツ路線に大きく舵を切った。ジョギング用にGPSを追加し、スイミングのため防水仕様になった。HERMESだけではなく、スポーツブランドのNikeとコラボ。”Sports”と名前がつきサブ扱いだったアルミニウムモデルが標準モデルに変更された。
ラグジュアリーからスポーツへ。Apple Watchはマーケティング戦略を大幅に変更して、まだどこもなし得ていないウェアラブルコンピュータの成功を勝ち取ろうとしている。
それ以外の機能も強化された。Apple Watch Series2はCPUの強化とOSの改善により初代とくらべて高速化された。二代目はほぼ待たされることなくアプリが起動するが、それでも積極的に使う気になれない。
画面が小さく見づらいのと、操作するのに両腕を使わないといけない腕時計型の宿命的な欠点があるからだ。iPhoneを取り出すのは面倒だが、片手で操作できる。Apple Watchは何をするにも必ず両手を使わなければならない。歩きながらの操作は難しく、立ち止まれるならiPhoneを取り出して使った方が効率的だ。
それ以外の初代からある機能「通知」「正確な時計」機能は重宝する。メッセージや電話の着信を見逃すことはなくなるし、海外へ行くときに時差調整が不要な時計は便利だ。Apple Payも他の機器に比べてアドバンテージになる(特に日本ではSuica対応は大きい)。
以上のように、初代と二代目Apple Watchは別物だ。初代はスタディーモデルと言ってもいい。ただ二代目も万人に勧められるものではなく、スポーツする人でiPhoneを活用している人は買っても後悔しないだろう。
スポーツをしない人は、通知やApple Payなどの機能だけで費用対効果があるか吟味して購入するべきだろう。
Apple Watch Series 2 38mm スペースグレイアルミニウムケースとブラックスポーツバンド MP0E2J/A
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