セルラー版Apple Watchの利点
毎日Apple Watch series 3セルラー版を身につけるようになって3ヶ月が経過した。series 3の大きな変化はセルラー機能が搭載されて、iPhoneがなくてもApple Watch単体で通信ができるようになったことだ。
「たった、それっぽち」
series 3が登場したときに、多くの人の意見は「iPhoneをもたないシチュエーションがない」だった。その意見は正しい。実際に筆者がセルラー機能を用いたのはランニングするときだけだ。
初代Apple Watchは、ラグジュアリーな高級時計のリプレースをターゲットにしていたが、高価なApple WatchがAppleの想定通りには受け入れられず、二代目からスポーツウォッチに軌道修正がされた。搭載されたGPSのおかげでiPhoneがなくてもランニング中に正確な歩数を計測できるようになったが、通信機能がなかったのでiPhoneなしでは連絡が取れない状態は変わらなかった。
ランナーにとってはセルラー版Apple Watchは「正常進化」なのだが、走らない人にとっては「iPhoneをもてばいいじゃん」で終わる話だ。
筆者が走るとき、今まではウェストポーチにiPhoneを入れて走っていたが、iPhoneをもたなくてすむようになったのでウェストポーチもつけなくなった。
「たった、それっぽち」のことなのだが、ひとつでもストレスを減らすことが重要なのだ。
ITの歴史は「たったそれっぽち」解消の積み重ね
iPhone 8 / Xから導入されたワイヤレス充電も同様だ。「ケーブルを挿せば」ワイヤレス充電は不要だし、充電速度もむしろ速い。機能的には不要なものだ。しかし、ワイヤレス充電を体感すると、ケーブルを挿す作業がいかにわずわらしいかよくわかる。
昔、Wi-Fiが出始めた頃「LANケーブルを挿せばすむのに、どうして高価な無線LANが必要なんだ」の議論があった。だがWi-Fiが標準的なネットワークとなり、Wi-Fiの普及はPCだけではなく、テレビやスマートスピーカーなど様々な製品をネットに接続することに繋がった。もしも「たった、それだけ」だからとWi-Fiの可能性を無視していれば、今のIoTも登場が遅れただろう。
Appleは床の段差にさえこだわる
Appleの新しい本社「Apple Park」では、社内を歩くエンジニアの思考が遮られないように少しの段差も排除して設計されたそうだ。「段差があるから注意しよう」と頭の隅で思うだけで思考が乱れ、引いては世界を変える製品の開発が遅れる。
「たった、それっぽち」の床の段差が結果に大きく影響する。
Apple Watchのセルラー搭載はiPhoneを持ち歩く「たった、それっぽち」の手間を減らす行為だが、ここを出発点として腕時計型端末が進化し、将来的にはスマートフォンを持ち歩くことがなくなるかもしれない。
時代の速度が早まり、人々の時間と頭脳労働の重要性が増した現在では、少しのストレスに注目し、減らす努力した製品が生き残れる時代になってきている。