集中と分散
コンピューターの歴史は「集中と分散」を繰り返しているという言説がある。オフコンによる集中管理からクライアント=サーバー型による分散、インターネットによりさらに分散が進み、クラウドによって再びデータとリソースの集中が行われたという説だ。
今まさにエッジコンピューターによる分散がはじまろうとしていて、「集中と分散」説が改めて証明されたといわれる。
コンピューターにおける「集中と分散」は、演算パワー、ストレージの価格、ネットワーク速度のバランスで決まる。オフコン時代はすべてが非力だったため、端末にデータを保管し、計算させることは不可能だった。
演算パワーとHDDを搭載したPCの登場で、クライアント端末でもデータを格納できるようになり、ネットワーク技術の進歩の結果であるインターネットは世界中のサーバーとストレージへのデータ・リソースの分散をもたらした。
2010年代に入ると、増えすぎたサーバーとストレージの管理の負担が増大し、クラウドが登場した。クラウドが実現したのはネットワーク速度の向上とストレージの価格が下落したためだ。
クラウドの時代ではクライアント側に強大な演算パワーは不要になり、小型のスマホでもPCと同等の作業ができるようになった。
再び始まった分散化
ここ数年はAIやディープラーニングに注目が集まり、より強大な演算パワーが必要になってきた。ネットワーク越しで処理するには時間がかかり過ぎるところに、GPUを用いて強化されたクライアントの演算パワーにより、エッジコンピューターの概念が生まれた。
P2Pを拡張したブロックチェーン技術も発明され、中央管理者のいないシステムが構築されはじめている。
エッジコンピューターとブロックチェーンにより、またコンピューターの分散化がはじまったというわけだ。
カギを握る5Gとブロックチェーン
長くなったが、以上が今までのコンピューターの歴史だ。「集中と分散」は、その時の技術とコストによって決まっていたわけで、技術動向によって今後も変わっていくだろう。たとえば高速モバイルネットワークである5Gが普及すれば、ネットワーク遅延も低減し、クラウド上でのサービス提供が標準となるに違いない。
クライアント製品を売りたい企業の思惑を別にすれば、集中管理したほうがコストは抑えられるわけで、リソースとサービスの寡占化が今後は進むと予想する。
懸念はセキュリティだ。集中管理したシステムに情報漏えいが起きれば被害が大規模になる。一企業に管理が集中すれば、企業内部のガバナンスも課題になる。
管理の透明化のためにブロックチェーン技術が注目されているのも必然だ。今後もリソースの集中化は進むが、管理の透明性・民主化を図るための分散技術がより重要視されるのではないだろうか。