5月2日から、富士通のPC事業はLenovoグループの一員として新たなスタートを切った。
呉越同舟? 隔世の感?
富士通のPCといえば、NECと共に日本のPCを黎明期から支える老舗メーカーだ。富士通はFM-7、FM TOWNSなど、トップシェアを持つNECとは違う、少しエッジがきいた製品を開発してきた。DOS/Vの時代になり、FMVシリーズで国内2位のシェアを維持していたが、Lenovo、Dell、HPなどの外資系企業に押されて、シェアを落とし続けてきた。
今回の資本提携でNECと富士通の国内2大メーカーが同じグループに入るのは、今さながら衝撃な出来事だ。ゲーム業界で言うと、エニックスとスクエアが合併したときみたいな。
国内だけではやっていけないPC市場
NECがレノボ傘下になった時と状況は似ている。PC市場が成熟化し、PCがコモディティ化(PCの文房具化)する中で、PCは薄利多売のビジネスになった。
PCビジネスはIntelなどのパーツベンダーから購入したパーツを組み上げて販売するビジネスだ。一度に多く仕入れるベンダーのほうが安価でパーツを購入できる。コモディティ化した市場では、低価格こそが絶対の武器になる。
そうなると主に国内市場でPCを販売していた富士通は、海外ベンダーに歯が立たず、ビジネスが成り立たなくなる。
Lenovoの権謀術策
今回の合弁会社設立で思うのは、日本市場の特殊性とLenovoの割り切りの良さだ。本来ならIBMのPCを部門買収したときのように富士通のPC部門を完全に吸収したいはずなのに、NECと同様に富士通という名前を今回も残した。IT外資系企業はシンプルな事業体を好む。同じ業態ならひとつの企業にまとめて管理するのが普通だ。
ただ、日本市場を考えると、Lenovoのやり方は理にかなっている。国産メーカーのシェアが落ちているといっても、富士通は国内シェア2位だ。Lenovoとの合併前NECはシェア1位だった。多くの国では、Lenovo、Dell、HPが上位を独占しているにもかかわらずだ。
日本人の国内ブランドへの信仰もあるが、日本独自の商慣習の影響も大きい。メーカーから直接購入するよりも販社やSIer(システムインテグレーター)経由で他のシステムと一緒にPCを購入する企業・組織が今でも多い。
最近では、外資系企業を担ぐ業者も増えたが、官公庁を中心に国産メーカーに比重を置く組織もいまだに多い。昔からNECのPCを使っている組織に中国メーカーのイメージが強いLenovoの名前でPCを売り込むと拒否反応がでるし、サポートの面で心配がつきまとう。
そういった日本の事情を熟知しているLenovoはNECも富士通もあえてブランドネームを残すことにした。海外でNECと富士通の名を冠したPCを売るわけではないので、Lenovoブランドは痛まない。Lenovoは名より実を取ったのだ。
こういった判断をLenovoが取れるのは、もともと中国企業でアジアの事情が理解できるからも知れない。