2040年までに100%電動化
自動車メーカーのホンダは2040年までに販売する全自動車を100%電動化すると発表した。
この「電動化」にはハイブリッドは含まれておらず、EVとFCV(燃料電池)だけなので、つまり現在主流のガソリンエンジンをあと20年以内に全廃する事になる。
2040年に100%電動化ということは、新規開発の停止はもっと早い訳で、基礎開発を含めると、10年以内にガソリンエンジンの進化が止まることになる。
どうしてホンダはEVとFCVに軸足を置いたか考えてみます。
ホンダの危機感
ホンダが急速な電動化を進める背景は、いうまでもなく世界的な流れがある。二酸化炭素排出削減のために、全世界の自動車メーカーが電動化を進めている。GMは2035年までに100%の電動化を表明している。中国のメーカーも同じく2035年の電動化を目指している。
メーカーだけではなく各国政府も地球温暖化防止のためにガソリンエンジンを法規制する動きを強めている。
ホンダは、自家用車の86%を海外で販売している。この比率は日本の自動車メーカーでは最も高い。海外でのビジネス比率が高いホンダは世界の潮流に合わせないと生き残ることができない。
ホンダが電動化するのに課題はいくつもある。そのうちのひとつが軽自動車だ。ホンダが販売する国内自動車の50%以上が軽自動車だ。国内での電動化比率を高めるには軽自動車のEVを開発する必要がある。軽自動車は価格も安くボディも小さいので、現状ガソリンエンジンより高価でバッテリーが重い電動化は難しいと言われている。
ただ、今回ホンダは2024年に軽自動車のEVを販売すると表明している。ここからもホンダの本気が窺える。
対立するトヨタとホンダ
トヨタの豊田章男社長は、日本自動車工業会会長として、EV一辺倒の流れに懸念を表明している。豊田社長はEVを否定している訳ではないが、ガソリンエンジンの全廃には時間がかかるし、EVに電気を供給する発電所の拡充がなければ100%の電動化は難しいという主張だ。
もちろん、この背景には、EVオンリーになると、ハイブリッドが強いトヨタ(と日本の自動車メーカー)のアドンバンテージを失う懸念と系列の部品メーカーを守りたい意向がある。
EVはガソリンエンジンに比べて部品点数が少なく、過去の自動車づくりのノウハウが通用しない部分が多い。ガソリンエンジンとハイブリッドに強い日本の自動車メーカーを守るために、豊田社長の主張も理解はできる。
ただ、この主張を続けていては、日本の自動車メーカーが世界で孤立する危険性がある。世界の自動車メーカーにはハイブリッドに強い日本のメーカーと対抗するために、ハイブリッドを排除したい思惑がある。ここで日本だけハイブリッドの存続を主張しても世界では爪弾きになると思われる。
その恐れを”世界企業”であるホンダは肌に感じて、自工会の方針とは相反する電動化の方針を打ち出したわけだ。
トヨタは本気か?
トヨタは世界最大の自動車メーカーだ。そういったトヨタに対抗するために、欧米中の自動車メーカーは政府と連動して、トヨタが強いハイブリッドを排除し100%電動化を進めている。
いくらトヨタでも全世界を敵に回して、電動化への時計の針を遅くすることはできない。
それでもトヨタは水素自動車とハイブリッドを推進していくのだろうか(トヨタはEVを否定している訳ではなく、EVも開発している)。
推測だが、今のトヨタの主張は豊田社長の意向が強いと思われる。レースに造詣が深く、ガソリンエンジンと部品メーカーに思い入れがある豊田社長は、ガソリンエンジンと日本企業のアドバンテージを残そうと必死なのだろう。
トヨタもホンダに負けず劣らず「世界企業」だ。トヨタ社内では世界の潮流を察して、トヨタも電動化するべきだと考えている人もいるに違いない。。
ただ、創業者一族である豊田社長の意向に逆らえる社員がトヨタ社内にいるとは思えない。創業者がいれば迅速な決断を実行できるが、他者の意見は通りづらくなる。世界最大企業になったトヨタがいつまで創業者を冠にしておくべきなのか、このEV論争を契機に改めて考える時期なのかとも思う。
EVにしろFCVにしろ開発には10年単位の期間が必要だ。そう考えると、2035年は案外早い。
電動化を様子見している時期は過ぎ、100%電動化するのか、別の道に進むのか決断する時期だと思う。