バッテリーの歴史
モバイルデバイスにはバッテリーがつきものだ。現代のデバイスの多くがリチウムイオンバッテリーを搭載している。1990年にソニーが商品化したリチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、軽量で高電圧という特徴を持つ。メモリー効果が発生しないので放充電を繰り返しても長寿命なリチウムイオン電池はモバイルデバイスに最適だった。
今から30年近く前に開発されたリチウムイオン電池はその後改良が進み、エネルギー密度がより高くなったが、基本的な仕様は変わっていない。
バッテリーだらけ
スマートフォンの分解写真を見てみると、現代のスマートフォンがいかにバッテリーで敷き詰められているかわかる。
iPhone Xの分解写真。液晶の下にある黒い部分がバッテリー。
引用:IFIX
iPhone Xのバッテリー容量は10.35Wh。バッテリーの正確な重量はわからなかったので、リチウムイオン電池の重量エネルギー密度を201Wh/kgで計算すると、iPhone Xのバッテリー重量は51g。iPhone Xの本体総重量は174gなので、iPhone Xの約30%がバッテリーの重さということになる。僕らがiPhone Xを持ち歩く時、51gのバッテリーをぶらさげていることになる。
分解写真を見てわかるとおり、重さだけではなく、バッテリーが本体の体積をいかに圧迫しているかわかる。
これ以上の改善も難しい
デバイスをより軽量小型化するためにはバッテリーの進化が不可欠なのがよくわかる。各バッテリー製造会社は改良に取り組んでいて、電気自動車のテスラが用いているパナソニック製のバッテリーは300Wh/kgに達すると言われている。
今後改良が進めば、500Wh/kgぐらいまで到達できるかもしれないが、今度は熱量の問題が出てくる。自動車なら多少熱を発しても拡散できるが、手に持って使うモバイルデバイスでは大問題になる。昨年回収騒ぎを起こしたGalaxy Note 7も異常な発熱による発火が原因だった。
よほどのブレイクスルーがないと、スマートフォンのバッテリー密度をこれ以上あげるのは難しいかもしれない。
消費電力を減らすのも大変
バッテリー効率を上げるのが難しいなら、本体を軽くするためには、消費電力を改善して搭載するバッテリー容量を減らすしかない。
スマートフォンで最もバッテリーを消費している装置は液晶画面だ。大画面化が進んだことで、消費電力はさらに増大している。各メーカーは液晶から消費電力がより小さいOLEDにシフトをしている。
だが、液晶からOLEDに変わって稼働時間が増えたかというと微妙だ。iPhoneシリーズとして初めてOLEDを搭載したiPhone Xの稼働時間は最大15時間で、液晶画面搭載のiPhone 8 Plusと変わらない。
iPhone XにはFace ID用に内蔵したセンサーが電力を消費するのと、OLEDで電源効率を高めるノウハウをAppleがまだもっていないのが理由といわれている。
最大15時間保てば一日中使えるので、これ以上のバッテリー改良は不要とAppleが考えている節もある。
どうやら僕らは当分バッテリーをぶら下げて暮らさなければならないようだ。