売れなくなったiPhone X
今年になってiPhone Xの売上がおちているそうだ。BCNの調査では、顧客の興味が「X」から「8」に移っている結果が出ている。
日本だけではなく、世界的に需要低迷していて、OLEDパネルの供給元であるSamsungが減産せざるを得ない状況のようだ。
Q4(2017年10月から12月まで)のAppleの決算では、iPhone Xは期待以上売れていて、製品単価も上昇した報告となっていたが、今年に入って風向きが変わったのか。
やはり高かった?
iPhone Xの一番の課題は、価格だ。iPhone XとiPhone 8の差額は34,000円。
iPhone X (64GB) ¥112,800
iPhone 8 (64GB) ¥78,800
値段が高くても、製品の価値を認めれば消費者は購入するが、アーリーアダプター層以外では34,000円の価値がないと判断した人が多いのだろう。
iPhone の特徴のひとつであるフルスクリーンは見た目は別にして実質的なメリットは大画面だが、大画面が好きな人はPlusシリーズを買ってしまっているだろう。
OLED、Face IDもホームボタンの廃止もフルスクリーンを実現するために必要だった技術なわけで、消費者への訴求は弱い。
Appleの構造的な問題
もうひとつあげたいのはソフトウェアの品質の低さだ。
いまだに実現していないAirPlay 2だけではなく、iOS 11はバグも多く、ユーザーフレンドリーではない点も多い。
たとえば、iPhone Xを使用するためには、Face IDでロック解除後に上スワイプが必要なのだが、スワイプが面倒だと感じる人は多いだろう。画面注視で「通知」を表示させたいからだと思うが、設定で「スワイプあり・なし」を選択させてほしい。
動作中のアプリを停止する方法もユーザーの不満の一つだ。上スワイプのあとしばらく停止で、複数アプリを選択する画面に移行した後、長くタップしてアプリ停止の画面になる。ホームボタン付きiPhoneと同様に、複数アプリ選択画面から上スワイプでアプリ停止でよいように思う。Appleとしてはアプリは自動で停止するので、手動でアプリを停止させる必要がないと言いたいのかもしれないが。
Appleのソフト開発能力は大丈夫か?
Appleの思想に反する変更が行われないのは昔からだが、近年ではユーザーの要望が活かすことができていないように見受けられる。セキュリティやバグのために、この一ヶ月で小規模なバージョンアップが2回行われていたのも異例だ。
Macintoshの爆弾マークの頃より、Appleはソフトウェアに強い会社ではなかった。Macはマニアックな製品だったのでそれでも許容されたが、全世界で数億台が稼働する製品ではそうはいかない。世界中の環境に合わせて、iPhone以外にもiPadでも稼働するOSをメンテナンスする力がAppleにはないように見受けられる。
事態の解決を図るクックCEO
ティム・クックも問題を認識しているようで、6月に発表されるiOS 12では新機能よりも既存OSの成熟を優先すると報道されている。
最初はシンプルなOSだったiOSも、バージョンを重ねることで巨大になっていった。デバッグも機能修正も容易ではないのは理解できるが、ハードウェアが成熟化した昨今ではOSによる差別化の重要性はさらに高まっている。
6月にWWDCで発表されるであろうiOS 12に注目したい。