WWDC20基調講演
Appleの開発者会議「WWDC20」が始まった。今年は新型コロナウイルスの影響でリモート開催となったので、基調講演もビデオとなった。通常の登壇形式と異なり、凝ったカメラアングルとCGにより、2時間観ていても飽きない内容だった。
内容は例年同様にOSのアップデートの紹介で、新製品の紹介はなかった。新型コロナウイルス以降で、Appleが製品を口頭で発表したことはなく、全てサイレントローンチだ。なにか理由があるのだろうか。
OSの紹介から見えてくるiPhoneなどの次期モデルを考えてみます。
- WWDC20基調講演
- 次期iPhoneのディスプレイは大型化?
- 次期Apple Watchは急速充電機能対応?
- Macとの融合を目指すiPad。iPhoneもApple Pencilに対応?
- 最初のAppleシリコンMacはMacBookとMac mini?
- まとめ
次期iPhoneのディスプレイは大型化?
次期OS「iOS 14」の目玉機能は「ウィジェット」だ。iPhoneで初めてウィジェットがホーム画面に置けるようになる。週間天気予報を見るためだけにアプリを開かなくても済むようになるのだ。
ずっと要望があった機能で、Androidには2009年(!)に実装されている。今までウィジェットをホーム画面に置かせなかったのは、狭いディスプレイを占有し、アイコンが並ぶ整然とした画面を乱すからだと思われていた。
では、なぜ今になってウィジェットのホーム画面設置が許可されたのだろう。
ひとつの理由は、もう一つの新機能「Appleライブラリ」の存在があるからに違いない。
Appleライブラリはインストールしたアプリをフォルダに自動分類してくれる。アプリはアルファベッド順に選べ、使用状況に応じてSiriがおすすめアプリを表示してくれる。
この機能により、複数のホーム画面のアイコンをタップしてアプリを起動する形式に、おすすめアプリやアルファベッド順から選ぶ形式が加わり、ホーム画面にアイコンを並べる重要性が相対的に下がった。
ウィジェットをただ導入するのではなく、狭くなるホーム画面をカバーするためにAppleライブラリを発明したようだ。この辺りがいかにもAppleらしい。
もう一つウィジェットをホーム画面に置く許可を行なった背景には、次期iPhoneはディスプレイの大型化が進むと考えられる。
噂によると5.4インチ、6.1インチ、6.7インチの3サイズがあると言われている。現行モデルはiPhone 11が6.1インチ、iPhone 11 Proが5.8インチ、iPhone 11 Pro Maxが6.5インチなので、噂どおりならProシリーズは0.2インチから0.3インチが大型化することになる。ウィジェットがホーム画面を埋めることに対応したと考えられる。
次期Apple Watchは急速充電機能対応?
新型OS「watchOS 7」の目玉は健康機能だ。ワークアウトに「ダンス」や「筋力トレーニング」、新たに睡眠トラッキング機能が追加される。睡眠時間を管理し、寝る時間になるとApple Watchがスリープモードになる。
サードパーティ製では定番の機能だが、説明を聞いた限りでは「睡眠の質」までは管理していないようだ。iOS 14でも同じように睡眠を管理できる。Apple Watchでは触角アラームで目覚めることも可能。
今まで噂になっていた睡眠管理機能が導入されてこなかったのは、Apple Watchのバッテリーに課題があったからだと言われてきた。Apple Watchのバッテリー持続時間は18時間なので、丸一日連続使用することは難しい。寝ているときもApple Watchをつけたままだだとバッテリーがなくなってしまう。
だから、今回も睡眠時間の管理はするが、バッテリーを消耗する寝返りの記録などは取らない仕様になっている(現状では)。
それでも、一日中装着するわけにはいかないので、一日のどこかで充電しなければいけない。例えばシャワーを浴びている時間で充電できるなら、不便はない。
次期Apple Watchは今よりも急速充電できる機能が付与されるかもしれない。
またバッテリー機能が大幅に強化され、次期Apple Watchのみに「睡眠の質」を管理できる機能が追加される可能性もある。
Macとの融合を目指すiPad。iPhoneもApple Pencilに対応?
iPadOS 14の目玉はApple Pencil。手書き機能が強化されて、手書きの文字をテキストに、矢印など手書きの線をグラフィカルに変換してくれる。
折角強化したApple Pencilなので、iPadだけではなく大型化するiPhoneにも対応するかもしれない。
iPadOSのもう一つ大きな変更点は、「Mac寄せ」だ。
多くの標準アプリがサイドバーにメニューが並び、検索機能であるSpotlightは画面を覆うのではなく、透過表示に変わった。macOSに似せてきている変更だ。
フルスクリーンがiOSの特徴だったが、iOSからiPadOSが分かれて、iPadOSは従来のPCのOSのようにマルチウィンドウへの道を進んでいる。その道の先にはmacOSがある。
後述のmacOSはiPadOSの要素を多く採用しているので、iPadOSとmacOSの双方の側から近づいてきている。
iPadOSは正常進化という感じで、従来路線であるiPadのパーソナルコンピュータ化の道を進んでいる。
最初のAppleシリコンMacはMacBookとMac mini?
今回のWWDC最大の発表は「Appleシリコン」Macの開発だ。
Macに搭載されてきたIntel製チップを自社開発の「Appleシリコン」にリプレースするとAppleは発表した。チップが変わるとアプリの互換性はなくなるが、提供される「Universal 2」でIntelとAppleシリコン双方のMacで動作するアプリを開発できる。Appleの説明では既存のMacアプリも「Rosetta 2」(懐かしい名称ですね)を用いることでAppleシリコンMacでも動作するという。
さらに、AppleシリコンMacでは同じARMチップベースのiPadOS・iOSベースのアプリも「ほぼそのまま」動作するという。
移行期間は2年で、その間もIntel製Macも併売されるらしい。逆にいうと2年後はすべてのMacがAppleシリコン内蔵に切り替わるということになる。
MacとiPadの融合は、ここ数年Appleのテーマだったが、当面はmacOSをやめるのではなく、
同じハードウェアプラットフォームで2つのOSが別々に開発され稼働することになる。
両方のOSともお互いの良い点を吸収しているので、将来的にはOSの融合も考えられる。すべてのMacがARMチップベースになれば、macOS専用アプリを作るメリットが減るので、自然にmacOSの需要は減っていくだろう。
Appleの説明では年内にAppleシリコン製のMacを発売するという。最初のAppleシリコンMacはなんだろう? 無印MacbookとMac miniと予想する。
自社開発チップであるAppleシリコン搭載のMacは、現行のIntel搭載Macよりも安くなると予想される(少なくても原価は下がるだろう。原価が上がるようならリプレースする意義が薄れるので)。パフォーマンスは登場してみないと分からないが、ベタープライスな製品ならMacbook ProよりMacbookの方が妥当だと思う。
Intelチップに置き換わる時も無印MacBookが登場した。歴史的なプロダクトなので、ここは伝統のMacbookという名称を冠したい。
Macbook Airは今年の3月にアップデートしたばかりなので、年内のフルモデルチェンジは早い気がする。
デスクトップは開発キットも提供されるMac Miniの可能性が高い。
まとめ
- 次期iPhone・・・ディスプレイの大型化、Apple Pencilに対応
- 次期Apple Watch・・・急速充電機能
- 次期Mac・・・年内にMacBook、Mac Mini
あくまでも予想だけど、WWDCからAppleの方針が見えてきた。
iPhoneでは要望が多かったホーム画面のウィジェット設置を実現し、ディスプレイを大型化する意味が増した。Apple Watchは睡眠トラッキング機能の導入で、従来から課題だったバッテリーと充電機能に手を入れる可能性が高い。
MacとiPadはお互いの良い点を導入しあい、プラットフォームの統合により、両OSの融合がさらに進みそうだ。
今回の発表は、新型コロナの影響が分からないほど積極的なアップデートになっている。
WWDCではオープンにならない次期iPhone・Apple Watchの隠された機能も楽しみだ。