宝島社より 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」 が発売になりました。私にとっては初の商業出版になります。
自分の小説が本屋に並ぶという中学生からの夢がようやく実現します! 興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

MENU

ニコ動とAbema TVの連携の背景は?この道はいつか来た道かも

ニコ動とAbemaが連携

「ニコニコ動画」(以下、ニコ動)のドワンゴと、「AbemaTV」のサイバーエージェント子会社のAbemaTVが、パートナーシップを締結したことを発表した。

両サービスのコンテンツの連携を開始し、4月からAbemaTVの番組をニコニコで放送する。

国産の動画サイトでは、2大巨頭の両サービスの提携は何を意味しているのだろう。背景を考えます。

f:id:tkan1111:20190329090303p:plain


両サービスの違い

同じ動画サイトと言っても、両サービスは違う部分が多い。

まずビジネスモデルが異なる。ニコ動は会費制で、広告で収入を得ているAbema TVは原則無料だ。ニコ動は無料でもコンテンツを観ることができるが、有料会員だと優先的に高画質のコンテンツを鑑賞できる。Abema TVはリアルタイム鑑賞なら無料で、ビデオコンテンツを有料にしている。

コンテンツも異なる。ニコ動のコンテンツはユーザーからの投稿動画が主で、Abema TVは自社製作の番組と買い付けたアニメなどが主だ。ニコ動は元々日本版YouTubeからはじまり、Abema TVは地上波テレビのネット版を目指してきた。

課題が多い両サービス

だが、どちらのサービスも好調とは言い難い。ニコ動は会員数の減少が続いているし、Abema TVは年間200億円の赤字の予測だ。Abema TVは先行投資と言っているが、広告モデルの収入が伸びないために今はビデオ会員に力を入れるなど、試行錯誤を繰り返している。ドワンゴは経営者が変わり、Abema TVもコスト削減が行われている。

両サービスが不調な原因は、外資系サービスに押されているからだ。ニコ動のライバルはYouTube、TV放送を模したAbema TVに直接のライバルはいないが、動画配信サービスのNetflix、Amazon Prime Videoなどと「視聴時間」を取り合っている。

このままでは外資系サービスに駆逐されかねず、両サービスの強い危機感が、今回の連携の背景にある。

連携の効果は?

ひとつはコンテンツの相互補完だろう。両サービス独自のコンテンツを共有することで、コンテンツを充実させることができる。

もうひとつはコスト削減。両サービスとも、ニュースや将棋など中継しているコンテンツも多い。今後は一社が代表して中継することがでてくるかもしれない。

将棋でいうと、ドワンゴは「叡王戦」というタイトル戦を主催していて、Abema TVは非公式戦の「Abema将棋トーナメント」を運営している。今のところ何も兆しはないが、両棋戦が将来的に統合されることがあるかもしれない。

お互いの強みをいかせるメリットもある。動画内にコメントを流す手法はニコ動の大きな特徴だ。Abema TVの場合はコメント欄が画面横にあるが、ニコ動のようにコメントを流せるようになるかもしれない。

ただ、この連携により、両サービスの収益が改善するかは不透明だ。コンテンツを共有することでコストは削減できるが、売上収入が大幅に増加するとは考えづらい。

ニコ動に提供されるAbema TVのコンテンツは、元々は無料で配信されたものだ。過去のコンテンツは有料サービスであるAbemaビデオで提供されているので、ニコ動でも過去のコンテンツは有料会員にだけ提供されることになるだろう。元々無料のコンテンツにどこまで訴求効果があり、会費を払ってもらえるかは疑問だ。

さきほどはAbema TVの映像内にコメントが流れたら面白いといったが、Abema TVは広告モデルだ。広告中にCMを流すためにはスポンサーの許可が必要になる。

将来は?この道はいつか来た道

前述のとおり、両サービスの経営は芳しくない。サイバーエージェントの藤田社長は「Abema TVを続ける」と言っているが、収益源のスマホゲームが不調になれば赤字を補填できなくなる。

今の状態が長く続けば、両サービスの統合も視野に入ってくるかもしれない。今回の連携は、そうならないためにまずは国産連合に踏み入ったのだろう。半導体企業連合など、こういうふうに外資企業に対抗するパターンがうまくいったためしはないのが心配ではあるけれど、コンテンツはその国の独自の文化でもある。両サービスにはぜひ頑張って継続してほしい。